獲物、獲物、獲物、獲物を取るぞ
急降下するソードバード。
奴の鋭い羽は、ミリカの喉元を狙う。
ジグザグに蛇行する奴の眼光が、白い柔肌に迫り・・・。
「えいっ!」
『ザッ!』
「キェェッ・・・」
ミリカが、レイピアを抜き取り様に一振りすると、ソードバードは地面に落ちた。
胸を切り裂かれたソードバードは、茶黒い土の上でガクガクと震える。
それから、口から血を流して間もなく事切れた。
「軌道を読めば、あんた何か楽勝よっ!」
ソードバードの首を掴みながら、ミリカは呟く。
ジグザグに飛翔しながら襲ってきた奴だったが、最後の通り過ぎる瞬間は無防備になる。
そこを狙えば、確かに向こうも一撃で破れるだろう。
しかも、彼女はアンデッドだ。
ジョージ同様に、彼女も恐怖心はない。
「首を斬られても、多少の傷なら平気だしね?」
「まあ、俺達はアンデッドだからな」
ミリカとジョージ達は話す。
確かに四人はアンデッド、少々の傷は気にしないし、痛みも感じない。
だから首を狙っても、意味はないのだ。
流石に頭は狙われたらヤバイが。
「コレ一匹じゃあ足りないから、他も探そう?」
「だな、もっと奥に行こう」
「奥なら、まだまだ魔物が居るでしょう」
「行って、沢山の魔物を狩りましょう」
ミリカ、ジョージ、アレリオ、シャリル達は呟く。
まあ、そんなこんなで四人はまだ奥へと林に入って行くのだった。
そこから、大分東に離れた場所。
草原を走るアンデッド達の馬車。
「ヴーー何処へ行くんだよーー?」
「ガウッ! ガウッ!!」
ヴーの後を追い掛けるヴークのカート馬車。
「あの様子は、何かに感づいたな?」
「同じ獣の匂いがするのね・・・」
ヴーとヴーク達の後ろを走る、キャリッジ馬車。
その後部座席に座る、カブラルとシニッカ達は呟く。
「やっぱ、同じ獣同士で分かるのでしょうね」
「だろうな~~それで早く獲物を見つけてくれるのなら? 御の字だけどさ」
「御の字か・・・おっ! 早速現れたぞ」
「あれは・・・ギガント・ラットッ!?」
御者役のニウが呟き、ビョルンも話す。
カブラルも呟き、シニッカは驚く。
「ガーーーー!!」
急に前方に現れた、熊のような茶色の毛並みと体躯を誇る、ギガント・ラット。
その大きさは体長三メートルはあるだろう。
「グルルッ!」
「ヴー、行けっ! 僕も援護するよっ!」
ヴーは怯む事なく、ギガント・ラットに立ち向かう。
カート馬車を止めた、ヴークは座席からスリングショットを射つ。
ヴーは、真っ正面からギガント・ラットの首を狙って飛び掛かる。
その後ろから飛んできた、小石が膝に当たるが奴はびくともしない。
「ガアァァーーーーーーーー!!」
「グルルルルルッ!!」
「コイツ、毛が長すぎて全然効いてないっ!?」
ギガント・ラットの長い体毛に阻まれて、ヴーが行った噛みつきも、ヴークによる射撃も効さなかった。
ライオンや熊と同様に、ギガント・ラットの大きな体は固い。
それは、体毛だけではなく、皮膚も分厚いので敵から受ける攻撃を容易に通さないからだ。
「ヴーク、ヴー、離れろっ!」
「射つわよっ!」
「援護してやるっ!」
「今行くわよっ!」
後ろのキャリッジ馬車から降りたカブラルは、ブランダーバスを構えて叫ぶ。
シニッカも即座に弓を構えて狙いを定める。
ビョルンも、ニッケルハルパを構えた。
ニウは右側から駆け出した。
「ガアァァァァーーーーーーーー!!」
四人の行動を気にせず、ギガント・ラットは咆哮を上げた。




