ログナンへの潜入
「ふぁ? ここ・・・どこ・・・ん?」
目覚めたばかりのトリーネは、辺りを見渡す。
見れば、周りは薄暗く細長い部屋のように思える場所だ
ーーと言うか、口の中が酒と胃液の悪臭が漂う。
お陰で、咳が出そうだと彼女は思った。
『ガチャガチャ』
「はっ? 体がっ!?」
顔だけしか動かせない違和感に気がついた、トリーネ。
手足を動かそうにも、何かに拘束されているらしく、四肢が動かせないのだ。
身動きの取れない彼女は、もがいて鍵穴を弄るような音を立てるしかない。
顔を左右に振れば、手足はX字型の拘束具にガッチリと固定されている。
しかも全裸でだ。
昨日来ていた服も見当たらない。
「何なのよ、これは?」
訳の分からない情況に困惑する、トリーネ。
『ガラガラ』
「あ~~? 起きたのね、トリーネ」
「トリーネさん、お早う御座います、と言っても今は夕方なんですけどね」
「ごきげんよう、私の眠り薬はどうだった?」
突然、開かれた右側の扉。
しかし、まだ外も暗くてトリーネの目には何も見えない。
暗闇で聞こえる声は知っている人物と知らない人物の物だ。
「貴女は・・・オラフィアッ!? それに昨日の・・・で、貴女は?」
「そう、オラフィアよっ?」
「シャリルと申します、トリーネさん♥」
「私はヌル、宜しくねっ! トリーネ♥」
薄暗い細長い部屋。
それが、暗闇に慣れてきて夜目になった、トリーネは馬車の中だと分かった。
右側から入ってきた三人の女。
右から・・・オラフィア、シャリル、ヌル達が前に並ぶ。
「オラフィア、その人達は誰? ここは何処なの?」
「人達・・・人達ね? ここは地中の中よ、そして私達はアンデ・・・」
「アンデッドよっ!」
「そう・・・怖い怖~~いっ! アンデッドの女達だわ♥」
トリーネの質問に答えようとした、オラフィア。
その返答を遮り代わりに、ミリカとニウ達が答えた。
「なっ! アンデッド・・・」
薄暗い影に包まれた馬車内に見える真っ赤な瞳と長い髪の毛。
トリーネは、目の前で微笑を浮かべる女を見て驚く。
確かに真っ赤な髪の毛は目立つ。
普通の人間とは違うのだろう。
それに、彼女が喋る時に口から犬歯が覗いているのだ。
「アンデッドね・・・アンデッドが私に何の用かしら? 私は今晩の献立でしょうかねっ?」
「いえ、貴女は仲間にさせて頂きます♥」
「そうよ、今日から毎晩仲間になるって言うまで毎日餌になって貰うのよ♥」
オラフィアは、アンデッド達を問いただす。
シャリルとミリカ達は笑いながら語る。
「嫌だね? 誰が仲間になるかっ!!」
「まっ? みんな、最初はそう言うのよ・・・」
「そう言いつつ抵抗するけど、最後は堕ちてしまうのよね?」
オラフィアは怒声を張り上げる。
その剣幕も空しく、ミリカとシャリル達を飽きれさせてしまうだけだった。




