酔っ払いを連れて行こう
「リーダー、お姉さま・・・これで、奴も暴れる事はないでしょう」
「酒を飲ませながら、百合ユリしようかと思ってましたが・・・まあ良いでしょう」
「その前に、百合ユリは無理だよ? この人、凄く酒臭いんだもの・・・」
「そうね、この臭い・・・酒癖が明らかに悪いって分かりますものね・・・」
コラポットを下げた、ヌル。
グッタリとエルクの背上で寝てしまった、トリーネを、シャリルは眺めて呟く。
キャロルは、酒の臭いを嗅いでしかめっ面になる。
ヴィカも、漂う酒と鼻を突くゲロの刺激臭に顔をしかめっ面にさせる。
「まあ、良いじゃないっ! 新しい捕虜が向こうから来てくれたんだからっ♥」
「それより、女連中だけで話すなよ、このヘラジカを処分したら出発するぞ」
ミリカは喜び、ジョージはエルクを見る。
「どうやって、処分するの?」
「それは・・・私がやります」
『パンッ!』
キャロルが疑問に思った瞬間、ファレドはフリントロック式ピストルを撃った。
エルクは、首を右側から撃たれてしまい、地面に前のめりに倒れてしまう。
トリーネはその下敷きになるかと思われたが、運よく左側にずり落ちただけで済んだ。
「リーダー、後はアンデッド化を・・・」
「そうだな? スキル、死体変化」
ファレドが頼むと、ジョージはエルクをアンデッド化するべくをスキルを行使した。
緑色をした卵が、死んだばかりであるエルクの体を包み込む。
それが消えると、中から現れた、ゾンビ・エルクが顔を上げた。
「コイツ、どうしようかな?」
「連れて行きましょう、船の上に座らせて載せて見れば・・・」
エルクの扱いに困る、ジョージ。
太型ブレーク馬車に牽引された荷台上の船。
そこに、エルクを載せようと、ミリカは提案した。
「それしか無いか・・・じゃあ、そうしよう・・・みんな、コイツを載せたら出発だ、今夜はまだ先に進む」
ジョージが指示を出すと、アンデッド達は直ぐに動いた。
ヴィカとシャリル達は、ワゴン馬車の中に、トリーネを連れていく。
リュージンとファレド達は、太型ブレーク馬車の後ろに、エルクを連れていく。
「終わったな? じゃっ! 行こう」
「出発よーーーー!!」
こうして、新しい捕虜を手に入れて、アンデッド達は町を目指した。
町中を進む、アンデッド達の馬車隊はメインストリートを通過した。
その中には、先程の酒場も見えた。
町には、三角屋根に色とりどりの建物が立ち並ぶ。
オレンジ。
赤。
黄。
茶。
ベージュ。
それ等は皆、隙間なく立ち、大体三回から四階くらいの高さだ。
横に、三つか四つ。
縦に、四つか五つ。
三角屋根の下に、一つ。
オラフィアとマグヌス達以外のアンデッド達は、建物を眺めながら馬車を走らせる。
立ち並ぶ、三角屋根の建物が、家屋かアパートかは彼等には判別出来なかった。
「人目につかないようにしないとな」
「目立つと不味いからね・・・」
二台あるブレーク馬車の後ろで、馬を走らせる、ジョージとミリカ達。
二人は、夜闇に紛れて一気に町を走り抜けようとする。
その後、幸いな事に、アンデッド達は町を無事に通過する事が出来た。
今、彼等の眼前に広がるのは、閑散とした町郊外だ。
長く続いた町の景色だが、そこを出たとて、まだ安心は出来ない。
町外れにも、農家と猟師の家が点在しているからだ。
「うへぇ~~町を出ても、まだまだ家があるのかよ」
「仕方ないじゃない・・・あの橋を渡るまでの辛抱よ」
ジョージとミリカ達は、町を出た後、辺りの景色に目を向ける
左側には、なだらかな山と点在する家々。
右側には、潮風が微かに吹く、海の波しぶきが見える海岸。
右側の向こうには、長い橋が架かっている。
「あの橋を・・・」
「行くわよ」
ジョージとミリカ達は呟きながら、先頭を行くブレーク馬車の後に続いた。




