酔っぱらいを連れたまま町から離れて
エルクの背中に、リュージンとファレド達が眠るトリーネを乗せた後。
「トリーネ、トリーネッ! 起きてっば・・・」
「むにゃムニャ・・・なぁ~~にぃ?」
オラフィアは、白雪姫ならぬ泥酔したOLのように眠るトリーネを起こす。
「もう、寝かせて・・・グゥ~~~~」
「全く、もぉーーーー!」
「あっ! 私に良い案がありますよ」
起きたかと思ったトリーネは、またも寝てしまったので、オラフィアは怒る。
そんな二人を眺めていたシャリルは、拳をポンッと叩いて笑みを浮かべた。
「あのう? トリーネさん、私達と一緒に来れば酒が腹一杯に飲めますよっ!」
「本当かいっ! じゃあ行くよっ!」
シャリルが囁くと、エルクの背中で寝ていた、トリーネは目を覚ました。
「あんたら、酒を飲ましてくれるんだろうっ!」
「はい、そうですっ! じゃあ、我々のパーティーの所へ」
「それでは行きましょう」
トリーネは、エルクの背中で言うと、シャリルとヴィカ達が答える。
「やれやれ・・・行きましょう」
「ささ、此方に御座います」
彼女を誘導するため、リュージンとファレド達が先に道を歩く。
こうして、彼等はアッサリと新たな捕虜を入手する事が出来た。
しかも、オマケにはエルク付きのだ。
彼等は、直ぐに町の外を目指して今来た道を引き返した。
「トリーネさん、あちらですよ」
「よっしゃっ! あそこに酒があるんだね? この国のアクアヴィットは美味いし、ウルの味もサイコーーだっ♥」
シャリルは、自分達の仲間が乗った馬車が停車する道端を指差した。
馬車の中に沢山詰まっているであろう酒に期待する、トリーネ。
「おっ? 戻って来たな、どうだった・・・早かったが任務失敗か?」
「て言うか・・・それ、ヘラジカ? 乗っているのは誰?」
ジョージとミリカ達は、直ぐに戻って来た仲間達が誰かを連れて来るのを目にする。
「潜入任務と情報収集は・・・それよりも重要な発見がありましたので・・・彼女は?」
「トリーネじゃないか? なんで今ここにお前が居るんだっ!?」
オラフィアは、二人に連れて来たばかりのトリーネを紹介しようとした。
マグヌスは酔っ払う知り合いを見て、なんで居るんだと叫んだ。
「あん? マグヌス、あんたこそ何だい、その格好は? まるでアンデッドじゃないか? 漁師になったって聞いていたけど、猟師の方になったんだっけ?」
今、マグヌスはベルセルクの姿だ。
オオヤマネコの毛皮を頭に被る、怪我だらけで不気味な顔。
トリーネから見れば、アンデッドに見えるだろう。
「それに、あんた等も酷い怪我だな・・・」
酒に酔っているらトリーネ。
周りに居るアンデッド達の顔を見ても、負傷したとしか彼女は思わなかった。
きっと、魔物と戦って帰って来たばかりだからだろう。
そう考えていた事と、酔っ払っていた事で相手をよく見なかったのだ。
「負傷したな・・・負傷な?」
「負傷したと思っているのね?」
自身の顔にできた、キズ痕が負傷したと思われた事を好都合だと、ジョージとミリカ達は考えた。
「負傷と思っている?」
「ええ、先の戦いで負傷したのです」
(・・・これで一気に奇襲を仕掛ける必要はなくなったわね・・・)
間抜けなトリーネの後ろで、シャリルは笑みを浮かべて立っていた。
「んで、酒は何処だ、酒は?」
「酒はここですよ・・・」
『プスッ!』
酒を探して、エルクの上から右手を額に当てて、赤らめた顔を左右に向ける、トリーネ。
獲物を狙う狩人として、静かに背後に回っていた、ヌルはコラプットを射った。
「うっ! 何を・・・ぐ?」
エルクの背上で、首筋に針を射たれた、トリーネは直ぐに寝てしまった。




