追撃を交わすか戦うか・・・
いったい、何匹いるのか分からない、ロブスターコックローチ。
「キャロル、それに捕まっていろ、エアーストームッ!」
「えっ? きゃああっ!!」
リュージンが大風魔法を放ち、キャロルは必死で、三連魔導杖に捕まる。
急に吹いてきた突風に煽られた、ロブスターコックローチの群れは、若干だが走る速度を低下させた。
「これで、奴等は追うのを諦めるかな?」
「いや、どうやら奴等は諦める気にはならなかったようじゃな」
キャロルは速度の落ちた、ロブスターコックローチの群れの様子を眺める。
リュージンも同じく眺めたが、群れの走る勢いを見て呟く。
『バンッ!』
「やったよ、一匹仕留めたわっ! リュージンさん、キャロルッ! 絶対に近付けさせたらダメだぜっ!!」
「幻影達よっ! 群れを引き付けてくれっ!」
ファビアンが撃ち放った弾丸は、ロブスターコックローチの眉間を貫いて一匹倒す。
彼女は、隣で魔法を放つ二人に励ましの言葉を掛ける。
前側では、ワゴン馬車の御者席に座る、マルセルが魔法を唱え、ビッグブラシを振るう。
「分かっておる、そっちこそ近付けさせる事は無いようになっ!」
「うん、私達も頑張るからねっ!」
リュージンとキャロル達も返事を返す。
すると、ワゴン馬車を見ていた、二人の目にキラキラと光る不思議な物が映る。
光る、二匹の蝶々。
五十センチ程の大きさである、二匹はパタパタと光る燐粉を振り撒きながら飛ぶ。
ヒラヒラと宙を優雅に舞う二匹。
そのまま、目映く光輝く二匹は左右に別れ、遠くに行ってしまった。
それを追って、何匹居るのかと言うほど多いロブスターコックローチは、三手に別れた。
「数が減ったか? やったね、マルセル」
「ああ、だがまだ居るんだろ? 引き続き後ろを頼む」
屋根上から、スナップハンスロック式銃に弾を込めながら、ファビアンが話かける。
マルセルは、彼女に返事を返しつつ御者として、ワゴン馬車を走らせる。
「ヴ~~~~!!」
「ダメだよっ! ヴー!! 行ったら食べられちゃうよっ!」
「群れが減ったようですが・・・まだ居ますね? ここは悪霊たちよ」
カート馬車に座る、ヴーとヴーク達。
その後ろにある台に立つ、ヴィカはロングスタッフを振るう。
そうして、悪霊の群れを出現させた。
地面から涌き出た悪霊の群れ。
紫色の骸骨や薄紫色をした女亡霊。
地獄から来た沢山の悪霊は闇エネルギーで出来ている。
彼等は、我先にと宙を浮かび、ロブスターコックローチの群れ中心に向かった。
群れの中心に来た悪霊たち。
ロブスターコックローチ達に触れた彼等は、ボヤ~~とした黒紫色の光を発する。
発光した光は内側に収縮して、群れの中心辺りに集う敵を圧縮して完全消滅させた。
「お姉ちゃん、凄いっ!」
「でしょう、ヴーク、この調子で行くわよっ!」
ヴークは姉の活躍振りを喜び、ヴィカは得意気な顔で笑う。
アンデッド達の活躍により、ロブスターコックローチは確実に減っていた。
「お前ら、俺達も援護に来たぜっ!」
「今から援護するから宜しくねっ!」
後方で、敵の追撃を食い止める仲間達へと、ジョージとミリカ達が来た。




