置き手紙を届けて・・・
「はぁ~~見つからなければ? あっ!?」
『ガチャ』
「オラフィア、オラフィアじゃないかっ!?」
家の側にある、ポストに置き手紙を投函しようとした、オラフィア。
だが、丁度その時、ガルボルグさんが玄関から現れた。
「今まで、どうしていたんだ、心配したんだぞっ!」
「心配を掛けて、ご免なさい・・・実は・・・海で遭難した所を、今まで旅の行商人に救われて・・・」
髭を生やした老紳士である、ガルボルグさんは彼女の姿を見て驚く。
オラフィアは、彼に対して申し訳ないと頭を下げる。
「そうか、無事だったんだな? ならいいが・・・それにしても、綺麗な格好だな? 前から可愛かったが、前より綺麗だ?」
「あはは・・・実は助けて頂いた方々と仲良くなって、衣服を貸して頂いたの? 後はマグヌスの腕を買ってくれて、彼を護衛に雇いたいって・・・」
安心したのか下を向いてため息を吐く、ガルボルグ。
そして、彼は気付く。
正面に立つ、オラフィアが劇団女優の如く美しい姿と成っている事に。
その事を、オラフィアは上手く誤魔化す。
それから彼女は、恩人にマグヌスが護衛に雇われたと嘘を話した。
「あのヤクザもの・・・はぁ~~まあ、良い・・・それで君も彼と一緒に旅に出るのか? 何だか怪しいけど大丈夫なのか?」
「大丈夫よ、彼等は大きな一団で私の魚釣りの腕も買ってくれてるし」
マグヌスが過去に傭兵として働いていた事を知っている、ガルボルグ。
だが、彼は傭兵だったから悪いと言っているのではない。
彼は、二人の父親や叔父みたいな存在である。
故に、彼は二人の事を心配するのだ。
そんな彼の心配そうな表情を見て、オラフィアは直ぐに笑顔で答える。
「なら良いんだが、普通は夜に来ないし、直ぐに旅に出るのも何だか変だ・・・」
「それは・・・」
勘の鋭い、ガルボルグ。
彼の前では思わず言葉に詰まってしまう、オラフィア。
夜に現れて、いきなり旅に出ると言うのは彼でなくても変に思うだろう。
なので、オラフィアは不味いと思い焦る。
「どうしたのですか? オラフィアさん」
「オラフィアさん、遅い~~?」
「お姉ちゃん、遅いよ」
「あっ! シャリルさん、キャロルちゃん、ヴーク君・・・」
シスターの格好で現れた、シャリル。
人間の少女に見えるように変身して、多少薄く透けた体をくっきりとさせた、キャロル。
犬耳を髪の中に隠した、ヴーク。
三人が現れた事で、オラフィアはビックリしてしまう。
「何だ? シスターに、子供・・・」
急にやって来た、シスターと子供達を怪しむガルボルグ。
「はい、私は旅の行商人の一団に属する尼僧です、この子供達は行商人の子供達で・・・二人はオラフィアさんを心配して、どうしても着いていきたいと言うので連れて来ました」
「ううむ、どうやら人拐いでは無さそうだが・・・」
シャリルは自分達の事を、ガルボルグに伝える。
見た所、丁寧な言葉使いと物腰柔らかな振る舞い、それに幼い子供達を連れている。
「何故、貴方達は夜に行動するのですか?」
「急ぎのようが有るからです、何故ならば私達は薬屋ですから、病気の人がでたら急ぎ現場に向かわねば成りません・・・私も彼等と共に苦痛に悶える人々の元へと急ぐので、昼夜を問わず旅をするのですっ!」
まだ少し、もしかしたら悪い人達ではと言う気持ちは、ガルボルグにあった。
だが、彼を騙すべく、シャリルは真剣な表情で嘘を語る。
確かに人間だった頃は、その言葉通り苦しむ人々を助けに、アレリオと共に旅をしていた。
「そうですか? まあ、彼女を宜しく頼みます・・・オラフィア、達者でな・・・」
「はい、勿論彼女は大切な仲間ですので大事にします」
「分かっているわ、ガルボルグさん」
ガルボルグは、シャリルの真剣な表情と言葉にすっかり騙されていた。
嘘を信じた彼は、オラフィアを頼みますと言って頭を下げる。
彼を前にして、シャリルも頭を下げて答える。
オラフィアは、彼と抱き合って別れを悲しんだ。




