出発するアンデッド達の冒険
偵察と狩りに出掛けるアンデッド達は、馬車の停車場を目指して歩いていた。
「あっ! 居た居た、マグヌスだっけ? ご飯だよっ!」
「・・・要らない」
キャロルは一番大きいワゴン馬車の裏で、一人佇んでいた、マグヌスに声を掛けた。
「ダーメッ! マグヌスはもう仲間なんだから私達のご飯を食べなきゃっ!!」
「・・・分かった」
幼女姿のキャロルに怒られてしまった、マグヌスは渋々彼女からトレーを受け取る。
そこで、彼はワゴン馬車の左側に凭れて立ったまま、首閉めワカメスープとオレンジジュースを飲んだ。
「喰ったぞ、ごちそうさまでした・・・」
「はいっ! じゃあ、行こうっ♥」
朝食を終えたマグヌスから、キャロルはトレーの上にお碗とコップを受け取る。
それから、彼女は笑顔で出発しようと告げる。
「何処にだ?」
「昨夜の海岸に船を置いてきたとか、それを回収しに行くのですじゃ」
向かう先の分からないマグヌスの言葉には、リュージンが説明して答えた。
「分かった・・・」
「じゃあ、こっちねーー」
そう短く答えた、マグヌス。
彼は、手招きをするキャロルが乗った、太型ブレーク馬車の運転席に座る。
それから、キャロルは太型ブレーク馬車の向かい合った後部座席にある前側に座る。
リュージンは後ろ側に座った。
こうして、三人が乗ったブレーク馬車が発進すると。
ヌルはドクター馬車に乗って、ファレドは駱駝に騎乗して走り出す。
シニッカとカブラル達は、チャリオットに乗る。
ファビアンとマルセル達は、細型ブレーク馬車に乗って走り出す。
彼等が乗った馬車は外を目指して、遺跡の曲がり角を左に曲がる。
次いで、右に曲がって洞窟の外へと向かった。
「なあ、アイツ大丈夫か?」
「大丈夫でしょう? 内らの呪い見たいな血液も入ってる事だしさっ!」
先頭を走る、ブレーク馬車を運転する、マグヌス。
彼の事を、カブラルはチャリオットを運転しながら心配する。
それを聞いた、シニッカは唸りながら目を瞑り、直ぐに呑気そうに答えた。
「ま・・・それもそうだな」
カブラルは一言だけ呟き。
その後は、洞窟を抜け出るまで黙って、チャリオットを運転した。
やがて、洞窟から出た出発組一行。
彼等は、チャリオットを降りたカブラルが岩を押して、洞窟を隠蔽すると。
それぞれに、別れようとした。
「俺とシニッカは昨日発見した街道を調べに行く」
「ワシ等は海岸のボートを回収に行くのでな」
「私達は獲物を探すわ」
「私とファレドも獲物探しに向かう」
チャリオットに飛び乗った、カブラルがそう言うと。
リュージンは海岸に、ファビアンとヌル達は狩りに向かうと答えた。
こうして、四組は別れつつ馬車を走らせ、森の中に消えて行ってしまった。
闇夜を走る四台の馬車。
それを上空から月明かりが照らすが。
今日の月明かりは、雲に紛れ、弱々しく光るだけである。
ゆえに、森中へと紛れる彼等の姿を晒すことはできなかった。
樹木の枝葉が光りを遮り、暗い影で馬車を覆い隠してくれている。
このお陰で、闇に紛れつつ安全にアンデッド達は進む事ができる。
「ねぇねぇーーマグヌス? 私達の事がまだ憎いっ?」
「いや、そう言う気持ちは・・・無いと言えば嘘になるな」
森の中を走る太型ブレーク馬車に乗った、キャロルとマグヌス達は話し合う。
「ふぅん、でも次期に無くなるよ? 私も最初は嫌だったけど、ミリカお姉ちゃんと、シャリルお姉ちゃんに可愛がって貰って仲良くなったもんっ♥」
湿った森の中を、ブレーク馬車が揺れながら走るが。
その後ろにある席から、キャロルは元気な声を出す。
「だから、貴方もオラフィアお姉ちゃんも直ぐに打ち解けるよっ!」
「だと言いな・・・」
キャロルが笑顔で喋った言葉を聞いて、マグヌスはため息混じりに呟くのだった。




