外に出たら・・・
「おしっ! 終わった」
「これで見つかる心配は無しだ」
「重かった」
「ふむ・・・一先ずは安心ですな」
平べったい岩石を山積みにして、土を被せて最後の一仕事を終えた男アンデッド達。
ジョージは馬に跨がり、アレリオ、ビョルン、リュージン達はそれぞれの馬車に乗る。
「それじゃあーー今度こそ出発だ」
「皆ぁーー行っくわよーーー!!」
そう告げた、ジョージとミリカ達。
二人の乗った馬の後ろを、大小八台の馬車と一頭の駱駝が続いて洞窟を去り始めた。
こうして、総勢十六名の魔王軍一個分隊と呼べる程に急成長した、アンデッド・パーティー達。
彼等は洞窟の外に出て優しげな月明かりを浴びる。
「今日は月明かりが綺麗だな」
「眩しい位だわ・・・」
月光が地面を照らす下、彼等は左側へと馬を向かわせ、停泊している船へと急ぐ。
「誰にも見つからないと良いけどな?」
「リーダー、でしたら山道を通るのはどうですか?」
「私もアレリオと同感です」
人間達から、馬車を中心とする隊列を発見される事を恐れたジョージは、一言不安げに呟くが。
アレリオは、右側の山の上方を指差すし、シャリルは頷きながら彼に提案してきた。
「どうして、山道なの?」
「魔物は強い個体が多いかも知れませんが、険しい山道を通る人間は少なく、また魔物自体の数も少ないでしょうし」
「この間見たブラック・アントの巣穴の連なる場所や人間達の行き交う平原よりは安全かと思われます」
ミリカはそんな二人に何故か山道を通るのか問うと、アレリオは真剣に、シャリルは丁寧に理由を語る。
「そうね・・・二人の意見通り、ここは山道を通る事にしましょう」
「そう言う事に決定だな」
ミリカは、二人の提案をすんなりと受け入れ、ジョージも別に反対せずに真っ直ぐ山道を進む。
そのまま、山道を走るアンデッドのパーティーだったが、
やがて、緩やかな坂から山の上方を目指した、一行は速度を上げる事なく馬を走らせる。
上方を見る彼等は目には、月明かりを遮る程のビルにように立ちはだかる山の頂きが目に入り。
反対側に見える斜面の下。
そこには、月明かりに照らされた山の麓にある、なだらかな丘と何処までも続く平原ばかりが見えた。
「はぁ~~カマル達は何をしているだろうかねーー?」
「ファビアンお姉ちゃん、寂しいの?」
ワゴン馬車の上で歩哨に立ち額に手をかざしたファビアンが呟くと、
それを右側に、キャリッジ馬車の後部座席から見ていた、キャロルは声を掛けた。
「うーーん、どうだろう? 新しい仲間に出会えたし、素晴らしい肉体も貰えたから、それはそれで嬉しいんだけど・・・」
「嬉しいんだけど?」
一人ぶつぶつ喋るファビアンの空を向いた横顔を見ながらキャロルは呟くが。
「やっぱり、カマル達の事は気になるさ」
「カマルって肌の黒い男の人? だったら彼等も仲間に入れて上げればいいんじゃない」
「左様・・・彼等も此方側に来れば全て解決じゃ」
「そうすれば全部が解決しますかね」
ファビアンとキャロル達によるかつて所属していたパーティー仲間の話。
それに、リュージンも割り込み敵を仲間であるアンデッドに変えれば万事解決だと、弟子と師承は語る。
それを、不安げな顔をしながら前を向いて馬車を操る、マルセルは聞いていた。




