餌は餌だと気づかず・・・
「お姉ちゃんが無事って事は?」
「無事って、事は・・・解放するって事よっ♥」
(・・・貴方達じゃなく三人をっ! だけどねぇ~~? ・・・クククッ! ・・・)
ヴークの質問に、わざと希望を持たせようとミリカは嘘を答え、唇を悪魔の様に歪ませる。
「待てっ! ヴーク、奴等は何か企んでいる」
「企むも何も解放して上げるだけよ、先ずは彼女達からね、お次は貴方達の番よっ!」
マルセルの言葉で、ヴークは止められたが、ミリカは頭に?マークを浮かべて平然と嘘を並べる。
「何を企んでいるか知らんが、騙されはしないぞ、アンデッドの女っ!」
そんな甘い言葉を信じる訳の無い、マルセルは更に罵声を浴びせるのだが。
「五月蝿いわね、貴方、まぁ良いわ」
「そうです、口を慎みなさいっ!」
「全く、誰に口を聞いているか分かっているのっ!」
ミリカは罵声を気にしないのだが、取り巻きである、シャリルとニウ達は怒りを露にする。
「まぁまぁ、二人共落ち着いてってば、そんな事より三人を解放して上げましょっ」
「お姉様が許可したのよ、ほら? 行きなさい」
「あそこ、貴女の弟がいるわよ」
怒って、今にもマルセルに襲い掛かって行きそうな、シャリルとニウ達。
彼女達を、ミリカは両手を広げて制すと、三人の解放を命令する。
その言葉に、キャロルとシニッカ達は縄から捕虜であった、二人を解放した。
「うぁぁ・・・えあぃあう?」
「ぎっがかぃき、け? くき」
遂に解き放たれた、ヌルとヴィカ達。
二人は、のらりくらりと遅い足取りで、獲物に定めた、マルセルとヴーク達に確実に近寄る。
「ほーーら、貴女も行きなさいっ♥️」
「懐かしい仲間の元にねっ♥」
シャリルとニウ達も、ファビアンを放して、憐れな獲物である二人に差し向けた。
「様子が変だな・・・まさかっ!」
「まさか?」
身体を揺らして覚束無い足取りの妙な雰囲気の三人に、マルセルは三人がアンデッド化している事実に気づく。
その横で、不安気な顔をするヴークは、ただ姉であるヴィカの方を見るしかない。
「そうよ、そうっ! そのまさかよっ!」
ミリカは、どうだと言わんばかりに両手を腰に当てて威張る。
そうして、二人を馬鹿にしたように口端を吊り上げて犬歯を見せつける。
「もう彼女達は、私の・な・か・ま・って事なの」
「なっ! 僕らを彼女達の餌にしようって魂胆かっ!?」
「えぇっ!? お姉ちゃんがアンデッドの仲間に・・・」
背中を曲げて右手の人差し指を振りながら、ミリカは推理探偵のように目を瞑り答えるが。
彼女の目的を察したマルセルは、恐怖の計画に驚く。
ヴークは、実の姉が敵の化け物の仲間入りを果たした事に、ただ怯えて震えるしかなかった。




