★ そして・・・
五日目。
今日は、ジョージとミリカ達が食堂に仲間を集めて、何やら話をしていた。
「だから、あの時にね?」
「あの時に・・・」
食事時間に食堂の席に着いた、ミリカは右隣に座る、ジョージに語り掛ける。
「彼女を、ワゴン馬車に入れてぇーー」
ミリカは、強敵ゴリラ・ゴーレムとの激しい戦闘時を思い出す
あの時、如何にして上手くファビアンを騙したかを彼女は回想する。
「くっ! 痛むなぁ」
「我慢して、もうすぐ私達の馬車に着くから」
「もう少しの辛抱です」
痛む身体に、ファビアンは顔に苦悶の表情を浮かべるが。
右側から支えるミリカ、左側から支えるシャリル達は励ましの言葉を掛ける。
「ああ、済まないな・・・」
左右から支えてくれる二人に対して、非常に申し訳無さそうな顔をする、ファビアンだが。
「クスッ♥️ ・・・気にしないで良いのよ」
「・・・そうです、それより先ずはワゴン馬車まで」
ファビアンが感謝の気持ちを言葉にすると。
彼女を支えながら、ミリカは気づかれぬように口角を吊り上げる。
同様に、シャリルも顔を下げながら本の一瞬だけニヤついた。
こうして、戦線を離れ後方のワゴン馬車にまで、無事にたどり着いた三人は扉を開く。
「さあ、こちらです」
「中に入って」
「分かったわ・・・あんた等のお陰で助かっ? 『ズバッ!』 うわぅぁっ!? なっなっに?」
シャリルが扉を開いて、ワゴン馬車の中に、ファビアンを手招きすると。
彼女を支えながら、ミリカは入り口にまで連れていく。
そして、ファビアンをそっと入り口に腰かけさせると。
後ろから、シャリルは縄で先ずは騒がれぬように口を塞ぎ、次いで手足を縛り上げた。
その後、ミリカは縛り上げられた、ファビアンを素早く両肩を掴んで後ろに引き倒す。
さらに、外から見えぬように急いで扉をサッと閉めてしまった。
「ふがもがっごっ! がぁっ! もごっもがっごっ!?」
(・・・こらっ! お前らっ! 何をするんだっ!? ・・・)
解放されると思っていた、ファビアンは突然背後から襲われたので、仰向けに成りながらも二人を睨む。
しかし、声を出そうにも口を塞がれていては、流石の彼女も喋る事は出来なかった。
「やったぁーー! 一匹、人間をゲット♥」
「こうすれば、もう貴女は何も出来ないでしょう」
自らを見下すように、悪魔の笑みを浮かべる、ミリカとシャリル達。
邪悪な本性を現した、二人をコイツ等は悪人だったのかと、ファビアンは悔しむが。
「もごっ! もっごっ!!」
「ミリカ様、シャリル殿、私も彼を縛り上げました」
良く見ると暗闇に包まれた車内の隅に、マルセルの手足を縛り上げて俯せに床に倒した、ファレドがいた。
「あら、ファレド、あんたも居たの?」
「居たのでしたら声を掛けて下さい」
「申し訳有りません、御二人を邪魔したら悪いと思いまして」
ミリカとシャリル達から文句を言われた、ファレドは頭を下げて入口の扉を開いた。
「さぁ、参りましょう、ジョージ様が援軍を待ってますよ」
「そうね、そしてあわよくば」
「また新たな獲物が・・・」
ファレドが、二人に援軍に向かいましょうと促すと。
眼を細めて、妖しい微笑みを浮かべる、ミリカとシャリル達は外に出る。
「ってな事があったのよ」
「んな事があったのか・・・」
と、ミリカはファビアンを手にいれるまでの経緯を、ジョージに語り掛けていた。
一方、先日からミミズに這い回されている、ファビアン。
彼女は、既に限界を超えたマッサージで焦らされることが苦痛の域に達していた。
「うはぁ♥ はんっ♥ はっ♥️ 早く解放してくれぇぇ~~~~♥」
赤黒いミミズが、一歩ずつ這い回る度にもどかしい思いに駆られる、ファビアン。
だが、そんな擽り彼女を助ける者は周囲には誰も居なかった。




