謎の集団の正体は
「貴方達、良く無事だったわね?」
集団の先頭に居る、オレンジ色の衣服に身を包んだ女性賢者が、二人に声をかけてきた。
「ええ、貴方のおかげで何とか」
「危ない所を・・・助かりました」
馬車をゆっくりと走らせて、集団に近付く、リュージンとビョルン達。
二人は、先頭の女性に礼を言って、自身の頭を下げる。
彼等は、集団の姿を確認するが。
先程の商人が乗っていた、四角いワゴン馬車の中心に、回転式のリボドゥカンを備えた物。
同じく、回転式の小型フランキ砲を備えた四角いワゴン馬車。
沢山の魔法使いと賢者に僧侶を乗せた、オムニバス馬車。
ヤークト馬車に乗る、長大なマスケット銃を手に持つ、アラビャ人と。
奇妙な笛のような幾つも穴の開いた鉄パイプを抱える、沁国人の銃兵達。
その後ろにも、大勢の騎兵や、様々な小型馬車に乗る傭兵達が続いていた。
「それにしても・・・凄い大人数ですな」
「結構、物々しい装備ですね?」
「あん? そりゃそうよ、だってさ」
集団の相当な人数と、重装備だと言える兵器。
それらに、リュージンとビョルン達は驚くが、オレンジ色の女性魔法使いは。
「アタシ等は、噂のアンデッドだか? 奴隷商人の一団だか? を探しているんだからな」
「噂のアンデッドの奴隷商人ですか?」
(・・・これは不味いな・・・)
オレンジ色の女性魔法使い。
彼女は、どうやら大勢の仲間達と共に、噂のアンデッドの奴隷商人を探している捜索隊の一員だった。
リュージンは、大規模な捜索隊の目的が自分達の討伐であり、己の首が危ないと思う。
「ああ、あんた等は何か知らないかい」
「そうですねぇ・・・あっ! そう言えば西側の山ではなく、広い荒野に昨日怪しい明かりを見ました」
「アレは確か、ここより西側の山から南側の広い荒野に、幾つもの光源が浮かんで移動してましたよ」
オレンジ色の魔法使いの問いかけ。
それに、リュージンは咄嗟に洞窟から離れた位置に明かりがと答える。
ビョルンも、それに合わせて上手く嘘を吐いた。
「そうかい、私達は西側の荒野に布陣するから、何か見つけたら知らせに来てね、じゃあこれでね」
「分かりました、我々も他に怪しい者を見つけたら、知らせに行きます」
「では私達は仲間が待って居りますので、これで失礼させて頂きます」
オレンジ色の女性魔法使いは、オムニバス馬車に飛び乗ると別れを告げる。
リュージン、ビョルンも彼女に別れを告げて、馬車を坂の方へと向かわせ、この場を後にした。
その後、二人は緩やかな坂から、ゴツゴツした山道を通り、何事も無く帰路に着く。
「はぁ、大変だ・・・奴等は我々を狙っている」
「一刻も早く、リーダー達に知らせないと!」
リュージンは、今後の予定は早く手に入れた捕虜の悪堕ちアンデッド化を済ませる。
そして、敵に発見される前に旅立たねばならないと思案した。
それは、ビョルンも同じで危険を察知したと、仲間の元に報せようと夜道を急いだ。




