新し~~い捕虜を連れてっ♥
「んしっ! 石積みは終わったな」
最後の石を置いて、ジョージは内側から横穴の出入り口を塞ぐ。
これで、外から人間が来ても分からない様に擬装隠蔽した。
「リーダー、これで我々は人間に見つからないですね」
「私達は戻って荷物の積み降ろしを手伝いましょう」
アレリオ、リュージン達も漸く石積みが終わり、安堵に包まれた雰囲気で話す。
「だな、それも終わったら飯にしよう、戦利品の中に何か美味い食い物はあったかな?」
アンデッドらしく、思考が食欲に染まっているジョージ。
彼は、二人を連れて石橋へと向かって行った。
一方、ワゴン馬車の中では・・・。
ミリカ率いる女性アンデッド陣が、強引に捕虜を連れ出そうとしていた。
『ガタッ!』
開かれた扉の中に乗り込んできた、五人の美しき女アンデッド達。
彼女等は、目の前の五人の捕虜に邪悪な微笑みを向ける。
「てめぇ~~アタシ等をどうしようってんだっ! このやろうっ!!」
「僕達を今すぐ解放しろ、出ないと後で・・・」
縄を後ろ手に縛られたファビアンとマルセル達。
二人は、解放しろと言って身体を揺らして騒ぐ。
「五月蝿いわね、二人は私達が何なのか分かっているの?」
ミリカは目を細め、ファビアンに近づき。
微笑を浮かべたまま、彼女の黒玉色の瞳を覗き込む様にして語り掛ける。
「はんっ! どうせ人拐いか奴隷商人だろう」
「僕達を、労働奴隷や変態に売ろうって考えだろう」
真っ直ぐミリカを睨み、ファビアンは威勢の良い態度と言葉を吐く。
すると、隣に居たマルセルも怒鳴る。
「二人とも、お姉さまに何て口をっ!」
「あんまり悪い事言うと、めっだよっ!」
ミリカに逆らう反抗的な、二人の態度。
それに、キレたシャリルは怒って前に踏み出そうとし、キャロルも自身のショートスタッフを向ける。
「それ以上、黒い肌の獣である貴女が無礼な態度を取るなら、私達は容赦しませんよ」
「むぅ~~! 色が黒い癖に、ミリカお姉ちゃんの悪口を言うんだったら、もっと痛め付けるよっ」
ファビアンに敵意剥き出しで、近寄って行く、シャリルとキャロル達。
二人は、侮蔑的で情け容赦ない罵声を彼女に浴びせる。
(・・・コイツ等はアタシに拷問をしようって気になったのね? なら何時までも耐えて見せるまでよ・・・)
眼前に迫る二人の女達に、ファビアンは暴力を警戒する。
そのために、全身に力を入れて歯を食い縛るが。
「こらこら二人共ぉーー!? 駄目よ、この娘は私のデザート何だからさーーーー♥」
(・・・は? はぁ・・・)
だが、そんなファビアンの心配を余所に。
当のミリカは彼女の態度に全く怒っておらず。
寧ろ、敵意剥き出しの方が面白いとすら思っていた。
「ふぇ? デザート」
「どゆことっ!?」
困惑する、シャリルとキャロル達。
そんな二人に、母親が子供に優しく諭す様にミリカは語り掛ける。
「二人が人種差別をするとは思わなかったわ、この娘を捕まえたのは私が欲しいと思ったからなのに・・・」
悲しそうな表情で、ミリカは残念だと下を向いて、静かに話を二人へと話を始めた。




