乱戦の最中
「退けってんだ、岩石野郎っ!」
銃床を使った、ゴリラ・ゴーレムの頭部を殴る、ファビアンの打撃。
それによって、腰を抜かしたままのドロレスに向けられた両手による殴打は逸れた。
軌道がずれた事により、両手による打撃だが。
その一撃は、ドロレスの頭を潰しこそ出来なかったが、彼女の右腕を強く叩き骨を折った。
「いった~~いっ!?」
痛みに悶える間も無く、ドロレスは一瞬だけ目を瞑り、叫び声を上げた。
だが、彼女は直ぐに左手をサッと、ベルトに添える。
「良くもっ! やってくれたわねっ!」
そこから、ドロレスはベルトに直接差した武器。
三連装ミュケレットロック式拳銃を、サッと素早く取り出し発砲しようとするが。
「ガァッ!」
再度、ドロレスはゴリラ・ゴーレムに左手を蹴られてしまう。
今の衝撃は強く、彼女は手から三連装ミュケレットロック式拳銃を手放してしまった。
「くっ! なら左手で、エアーカッター」
「アタシも剣でやってやるわよ」
左手で目の前に立つ、ゴリラ・ゴーレムに抵抗しようと、ドロレスは風魔法を放つ。
それを見た、ファビアンは即座に別のゴリラ・ゴーレムを標的に定める。
彼女は、カタツムリ型の剣を鞘から抜き取り様に振るう。
ドロレスの風魔法は、ゴリラ・ゴーレムの首を切り裂き絶命させ、残る身体を力なく倒れさせる。
剣を振るった、ファビアンの一撃は、ゴリラ・ゴーレムの右腕を切り離す。
「纏めて切り裂いてやるよっ! 掛かって来なっ!」
次いで、ファビアンは再度もう一体のゴリラ・ゴーレムを倒すべく、身体を反転させる。
右手に強い力を込めて、真後ろに引いた剣を振るう。
「どうだい、アタシのアダの威力はさ?」
二体目のゴリラ・ゴーレムは胸を切り裂かれたが。
大した傷には成っておらず、多少後ろによろめいただけだった。
二体のゴリラ・ゴーレム達を相手に、ドロレスを助ける為にと。
ファビアンは派手に戦い、己に注意を惹き付けようとする。
彼女に注目した、ゴリラ・ゴーレム達は二体同時に攻撃を仕掛けてきた。
「ちょ、二体同時にって」
左右から、一斉に飛び掛かって襲ってきた、二体のゴリラ・ゴーレム。
奴等は、体重を掛けてファビアンの身体を押し潰そうとする。
「させないわ、エアーカッター」
「退きなさい、アイスランス」
だが、飛び掛かった二体の内、右側の右腕を失った一体。
奴は、ドロレスの風魔法に左足を切られ、地面にドサリと落ちた。
もう一体の左側の胸に負傷を負った、ゴリラ・ゴーレムは横から現れた、リリーに弾かれる。
彼女は、箒の毛先を氷を凍らせて作った氷槍を突き出し、ゴリラ・ゴーレムの左脇腹を貫いたのだ。
「止めは、アタシが刺すわ」
ファビアンも直ぐに行動し、手足を斬られたゴリラ・ゴーレムの頭を狙う。
彼女は、カタツムリ型の剣アダで叩き潰し、残る一体も首を斬り跳ねる。
こうして、彼女達は無事ゴリラ・ゴーレムの奇襲攻撃を切り抜けた。
だが、未だ他の場所では激闘が続いていた。
そんな彼女達を戦いを止め、少し離れた位置から注視する影があった。
「・・・フフッ♥」
口角を吊り上げ舌嘗めずりをして、不気味な微笑みを浮かべる、吸血鬼女ミリカ。
彼女は、戦いに勝った彼女達を美味しそうだと思った。




