乱戦に突入
「まだか? まだ反撃しないのか?」
「エアーカッター・・・ケビン? ファルコネットは、さっきから応戦してる見たいだけど、他は準備に手間取っているわよ」
正面から矢継ぎ早に飛んでくる岩石。
それを、ケビンは大剣クレイモアの幅広の刃で叩き割りつつ、後ろを振り返る事なく愚痴る。
彼の後方では、風魔法の斬撃を連続で飛ばす、ドロレスが。
チラリと、小型の旋回式砲である、ファルコネット砲を見て答える。
「撃てぇっ!」
『ボンッ!』
ファルコネット砲から発射炎が吹き出ると、黒くて丸い砲弾が真っ直ぐ飛び出す。
それは、南側の遠く離れた位置にいる、ゴリラ・ゴーレムの群れの一匹に当たる。
胸の中心に、一発の砲撃を受けた、その一匹を木っ端微塵に吹き飛ばす。
「彼方さんも頑張っているようね」
「喋っている暇が有るっ!?」
視線を戻し、ドロレスは正面から岩石を投げつつ突撃を敢行する、ゴリラ・ゴーレムを睨む。
そして、ドロレスは再び風魔法を放とうとする。
『モコモコモコモコモコ』
そんな彼女を叱ろうとした、ケビンの目に飛び込んだのは。
数メートル先のモコモコと盛り上がる地面であった。
「複数の敵が彼方からもです!?」
「背後からの奇襲攻撃だっ!?」
リリーの声と、ザロモンの叫びが響く中。
ケビンは、彼等の言った背後の地面に目を向ける。
『ガバッ!』
『ガババッ』
数メートル手前と、背後の陣地から挟まれる人間達の集団。
彼等を蹂躙すべく、ゴリラ・ゴーレム達は容赦なく襲い掛かる。
「たっ助けてくれぇーーーー!」
「敵が中からもっ!?」
「外と内側から挟み撃ちかよ」
円陣の中心からは、行商人と傭兵達の悲鳴が木霊する。
それと、ドカドカと慌ただしく動く足音が聞こえてきた。
「ザリーン、ダン、中に行ってくれ」
「・・・」
「カマル、分かった」
カマルは、後ろから聞こえてきた、銃撃や魔法の発する戦闘音が気になった。
だが自分が場を離れる訳には行かぬので、急ぎ二人に中心に向かうように頼み込む。
ザリーンは黙ったままコクンと頷き、またダンも短く返事を返して走り出す。
ザリーンは疾風の如く駆け出し、時折馬車の上に飛び乗りながら進む。
そうしつつ、忍者のように素早い身のこなしで、彼女は中心へと消えて行った。
その後を追って、ダンも猛牛の疾走の如く、力強く馬車の合間を駆け抜ける。
「良し、行ったな・・これで後方は彼等に任せて僕らはっと」
カマルは、後ろを二人に任せた事により、目の前のゴリラ・ゴーレム達へと向き直る。
そのまま、腰から抜いた刀剣タルワールを両手で握り締めて構える。
「ちくしょうっ! 近付いて来やがったっ!」
『パンッ!』
「私の方に来ないで頂戴っ!! エアーカッター、エアーカッター」
ファビアン&ドロレス達は、自分達の身を守る塹壕を守ろうと。
ゴリラ・ゴーレムが、突破せぬように必死で応戦するのだが。
「あっ!?」
塹壕の後ろに盛られた小山の上。
そこで、風魔法を連続で放っていた、ドロレスの足下がぐらつき始めた。
「ガァ~~~~~~」
「ガァーーーーーー」
彼女の足下から、ザッと土砂噴き上げ、突如現れたのは、三匹のゴリラ・ゴーレムであった。
「なっ! 下から奇襲するなんて」
噴き上げられた土砂と共に地面に倒れた、ドロレスは、咄嗟に風魔法で反撃しようと右手を前に出す。
「ガァーーーー!」
しかし、彼女の伸ばした右手を蹴りで払い除けるゴリラ・ゴーレム。
奴は、両手を頭上で組み、一気に振り下ろそうと構える。
「危ないっ!」
それを、横から黙って見ている訳にいかない、ファビアン。
彼女は、直ぐ動き、スナップハンスロック式銃の銃床で、ゴリラ・ゴーレムに殴り掛かった。




