奇襲攻撃に対抗するにはシルカを? いや、ツングースカをっ! いや、パーンツィリをっ!?
「彼奴等には、シルカじゃなくて、ツングースカでもなくて、パーンツィリをっ!」
「だから何なのよっ! それはぁ~~~~!!」
戦闘中にも関わらず、ゴチャゴチャと、ソ連・ロシア製兵器の名前を語る馬鹿な、ジョージ。
そんな彼を振り返る事なく、左右から飛んでくる岩石に、火炎球を放ち応戦する、ミリカ。
「ロシア製の対空車だぜっ! あっ! あと、戦車支援戦闘車のBMPTもっ!」
「良いから反撃しろぉーー!! 馬鹿ゾンビィ~~!?」
直もウダウダと一人呟く、ジョージを怒りつつも必死で火炎魔法を放ち続ける、ミリカ。
彼女は彼方を向いては火炎魔法を一発、此方を向いては飛来する小さな岩石を身を屈めて交わす。
「分かってるさ、作戦はもう考えて有るっ! 全員続けぇっ!!」
「どんな作戦よっ?」
自信満々な表情で叫ぶ、ジョージに頭を掠める岩石を気にしつつ、彼へと振り返るミリカは問い質す。
「それは・・・」
「それはっ?」
すると、ジョージは勿体ぶって話そうとする。
そんな彼に対して、ミリカは更に問い質すと。
「にっげるんだよーーんっ!?」
「はああぁぁぁぁ~~~~~~」
一人、キャリッジ馬車をUターンさせて逃走を開始した、ジョージ。
それを見た、ミリカは驚きの余り、大きな声で叫んでしまう。
「あんた、本気で仲間を置いて一人だけ逃げる気なのっ!?」
「ああ、本気だっ! だから早く皆も後に続けっ!」
Uターンした、ジョージの後を追って、ミリカは急ぎ、ヴァンパイアホースを反転させる。
「今なら、まだ間に合うっ!」
「何が?」
Uターンした、ジョージの後ろから左側へと並んだ、ミリカは彼の一言に対して問い掛けるが。
「ほらっ? 見てみろ」
「アレはっ? ・・・」
ジョージが後ろに振り向いて、稜線へと続く緩やかな坂を指差すと。
ミリカは、彼の指先の指し示した坂へと視線を向ける。
「ガァ~~~~~~~~」
「グォォーーーー」
「ガオオォォォォーー」
「グアァァ~~~~!!」
そこには、土中から姿を現した、ゴリラ・ゴーレムが坂の上に陣取る。
連中は、そこからアンデッドのパーティーに岩石を投射しようとしていた。
「何か居る気がしたんだよ、シャヒコトやイア・ドランでは、こんな感じで奇襲受けたからな」
「はぁ~~また何か言ってるわね?」
「リーダーは、奇襲攻撃を受けた経験が有るんですねっ」
「戦闘経験を活かして、奇襲を予測するとは流石です、リーダー」
またもや、訳の分からない事を呟く馬鹿ゾンビのジョージ。
そして、偶然予想が的中しただけの彼に呆れる、ミリカ。
アレリオはカート馬車で後ろに続いて、ジョージの後を追いつつ、その博識振りを尊敬する。
ミリカの右斜め後ろを走る、スケルトンホースに跨がる、シャリルも同様に、ジョージを尊敬する。
「まあな、シャヒコトは、メダルオブオナーの神の山だか? 王家の谷だか言って、アルカイダからの攻撃は激しかったぜ・・・」
ジョージは語る。
メダルオブオナーにて登場する、アルカイダから行われた、RPGとAKの事を思いだしながら。
「イア・ドランはベトコンが猛攻を仕掛けて、物凄い数で押し寄せて来て、凄まじい戦闘だったな・・・」
AK47や五六式小銃を構えた、ベトコン達による死に物狂いの猛攻を思いだす、ジョージ。
彼は、敵が迫るのにも関わらず壮絶な戦いだったと感慨深げに語る。
そんな二人は、またもや。
「あんたそれ、全部ゲームか映画じゃないのっ!!!!」
「良いだろっ! 経験が役に立ったんだからよっ!」
一歩間違えれば頭部を岩石で潰されてしまい、二度目の人生が呆気なく終わりを告げる。
それほど、仮初めの命を落としかねない危険な戦闘中にも関わらず、痴話喧嘩を始めてしまう二人。
そんな、ジョージとミリカ達の会話を仲間達は岩石を避けつつ、またかと思って聞いていた。




