休もうか
辺り一面暗く染まり、夕焼けは夜空に変わる時間帯、荒野で夜営を行う一団は篝火を焚いていた。
暖かいオレンジ色に包まれながら敵である、ゴリラ・ゴーレムを待ち構えている、一団。
東西南北と、四方を篝火で囲んだ一団の円陣。
その彼方此方にも、小さなランタンや松明の灯りが灯っていた。
灯りは魔物を引き寄せてしまう危険性もあるが、逆に炎が苦手な魔物を遠ざける効果もあった。
他所のキャラバン馬車後部に、ぶら下げられた、ランタンの灯り。
その側を歩く、カマル、ダン、チュリーナ、リリー達。
彼等は手に持ったトレイの皿に、肉と野草と魚等の、様々な食材を載せて持ち運んでいた。
「皆、腹を空かせてるだろうから早く行こう」
「だろうな?」
今日、仕留めたブラウン・ドラゴンのロースト肉と、野菜代わりの薄紫色の蝶々花の蕾を運ぶ、カマル。
干された、キラーカッターフィッシュと、デザートである甘薬草の葉と、桃色葡萄の実を運ぶ、ダン。
「ああ、もうっお腹が空いたぁ~~」
「御嬢様、文句を言わないで下さい」
チュリーナは、様々な食材を載せた料理を運ぶ。
野菜代わりの苦味薬草、辛茸、人切花の茎を盛りつけ、マヨネーズを掛けたサラダ。
そして、オレンジジュースの瓶などだ。
リリーは、沢山のリンゴジュースとエールの瓶と、摘まみのクワルクチーズを運ぶ。
豪華な魔物の肉や、珍しい植物の葉や茎を運ぶ彼等だが。
それから、馬車の間を通り、作業中の行商人とすれ違いつつ仲間の元を目指した。
『スウゥ』
冷たい風が微かに吹く中、一団の円陣の中心から外側にある自分達の馬車と塹壕の元へ行く、カマル達。
その前には仲間達と馬車が見えてきた。
「おーーい? 飯はまだか」
「腹が減ったぜ」
ケビンとザロモン達は、塹壕の内側に盛られた小山に背を凭れさせて、仲間達を呼んだ。
「やっと夕食かぁゎー?」
「腹が減ったわねーー」
塹壕に配置した傭兵の幻影と共に、塹壕内で見張りに立つマルセル。
その右隣で、スナップハンスロック式銃を両手に抱えた、ファビアン。
「はぁ~~お腹が空いたから先に、コレを皆に配って食べようかと思ってたところよ」
「私も、甘いコレを皆様に配ろうかと」
懐から小さなチョコレートの詰まった袋を取り出すドロレスと、飴玉をしゃぶるレア達。
「皆、お腹が空いてるのは分かってるから・・・?」
「はいはい、皆お待ちかねの夕食も届いた事だし、さっさと食べようよっ!」
皆に、ご飯を配ろうとした、カマル。
その背後から急に、ルチアーノが現れたので、カマルは凄く驚いた。
「なっ!? 何だよ、ルチアーノじゃないか? 驚かせないでくれよ」
「驚かせて悪かったよ、悪気は無かったんだ、それより飯にしようぜ、レディ達は全員お腹ペコペコだっ!」
突然背後からの奇襲による声かけに驚かされた、カマル。
カマルが、ルチアーノに抗議するが。
当の彼は、悪びれもせずにレディ達のためにと、夕食を催促する。
「分かったよ、ザリーン、君もいるよね?」
悪気があった訳では無いとルチアーノの言葉に呆れつつ、カマルはザリーンに夕食はと言葉を掛ける。
「・・・?」
その言葉に、無言でコクりと頷いて答える、ザリーン。
彼女は、幌の上で胡座をかいて居たが、スッと立ち上がると同時に、地面へと飛び降りてきた。
「よし、皆で夕食を召し上がろうっ!」
カマルは、全員の前で夕食時間だと告げ、この後は楽しい夕食時間と成った。




