ゴリラ・ゴーレムは発見ならず
「居ないっ? 何も無いっ!」
「広い空洞が広がるだけ?」
遺跡の内部に侵入した傭兵隊と魔法使い達の見た光景は、何も居ない円形の広い空洞だった。
石を組み合わせた、内壁の奥を調べて見ても、狭い隠し通路が見つかりはしたが。
その最奥に行っても、全く何も見あたら無かったのだ。
「これ以上は無駄だ、帰るぞ」
ランタン、光魔法、松明。
これ等を頼りに、内部を探索していた、傭兵隊は宝箱や更なる魔物の発見を期待していた。
だが、幾ら遺跡の内部を探索しても、彼等は何も発見出来なかった。
これでは、仕方がないので諦めて仲間達の待つ外を目指した。
「鉱石や魔石すら見つからないとはな、向こうは諦めた様だし、そろそろ我々も外に出よう?」
「そうですね、せめて薬草の根ぐらいは有るかと思いましたが、期待外れですね」
魔法使い達も、これ以上は無駄足だと判断し、遺跡の外を目指して踵を返す。
「何か珍しい物は有ったのかい?」
「やはり、見つからんかったか?」
やがて、明るい夕焼けの光射す外に出た彼等を、入口の両脇に控えていた仲間が出迎えた。
長くて白い杖を手に持った、衛星救護員の女性僧侶&剣と楯を装備した傭兵剣士たち。
二人は、早速外に出てきたばかりの仲間に質問するが。
「いや、勿論見つからなかったよ」
「何の変哲も無い魔物の巣だった」
遠目に見える、山脈の裏から射す、眩しい夕焼けの光。
それに目を細めながら、分隊長たる傭兵と魔法使い達は答えた。
「そうか、仕方無いわね」
「やっぱり無かったんだ」
女性僧侶と傭兵剣士は落胆するが。
そんな彼等の元から離れた場所で、机に広げた地図を読む、二人の人物を目指して遺跡探索部隊は歩く。
そこに居たのは、一団を纏める傭兵隊長と、彼の補佐役の賢者だ。
この二人は、遺跡探索部隊を移動させるべく次に向かうべき場所を相談していた。
「お? その様子だと遺跡は空か」
「収穫は無しと言う事ですか?」
傭兵隊長と賢者たちは、自分達の元へと報告しに来た探索部隊員の顔を見ると。
目当てのゴリラ・ゴーレムは発見出来なかったのだろうと判断した。
「はい、凶悪な魔物等は勿論の事、遺跡の内部には宝箱すら有りませんでした」
「隠し扉の奥にすら宝物庫は見つからず、薬草や茸すら生えておりませんでした」
二人に声を掛けられた傭兵と魔物使い達は、内部探索の結果を残念そうに報告した。
「そうか・・・あんな図体のデカイ奴が居るなら、ゴリラ・ゴーレム並みの魔物が居るやも知れぬと思ったんだが」
「期待は見事に外れましたね、では我々は次に東南の谷間を目指しましょうか」
ゴリラ・ゴーレムを発見出来なかった傭兵隊長は、首を傾げて次は何処を探すかと地図を眺める。
その隣では賢者が、かなりいい加減に描かれた地図を凝視して、東南方面の谷間を指差した。
「そこに行くかぁーー? よし出発だっ!」
傭兵隊長が指示を出すと、周辺を観察していた一団は、それぞれの馬車に乗って出発の準備を整えた。
「荷物を纏めて有るな、次の移動先は谷間を通る」
「日が暮れて来ましたし、今夜は何処で夜営しますか?」
傭兵隊長が大きな声で下した命令に、賢者は何処で一団を夜営させるかと質問した。
「谷間を抜けた先の広大な荒れ地だ、そこなら挟撃もされないからな」
そう言うと、傭兵隊長と賢者も馬車に素早く乗り込み、一団を山から東南の谷間へと出発させる。
馬車の一団は現在の山間部の狭く小さな谷間から、先程通った坂の左隣に続く稜線を通った。
稜線の二百メートル先には、坂を下って東南の方へと向かう、道が続いていた。




