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彼から話を聞いたら


「んっ! 君達、誰かを連れて来たのって? 貴方は確か伝令のトーマス・・・」


「そうです・・・科学調査隊、伝令役のトーマスです」


 負傷者である、トーマスは見張りに立っていた、ファビアンとケビン達に運ばれた。

 そうして、地下に掘られた、松明と蝋燭の明かりに照らされた遺跡の内部まで連れて来られたのだ。


 そこには、シートが敷かれており、その上にはカマルが胡座を組んで座っていた。


 カマルは、満身創痍とまでは行かないが。

 身体中の掠り傷に加え、肌に汗や血でベットリと着いた土埃で、ボロボロ状態のトーマスの姿を見た。  


 その様子に、カマルはいったい彼に何が合ったのかと質問しようかと考えた。



「取り合えず手当てを、ファビアン、済まないがリリーさんを呼んできてくれ、ケビンは薬草と包帯とかを頼む」


 だが、先ずは応急処置を施すのが先だとカマルは判断し、二人に適切な指示を出した。



「それで、いったい何があったんだい?」


「はい・・・私達伝令が傭兵達が向かったキャンプに行くと、そこに有ったのは無惨な傭兵の死体と、破壊された馬車でした」


 自らの体を支えてくれる、カマル。


 彼に対して、トーマスは語る。

 傭兵達が、キャンプを設置しているので有ろうと思っていた、西側地点で見た凄惨な光景を。



「更に、そこには多数のゴリラ・ゴーレムの群れと、ゴリラ・ゴーレムの群れの長であるシルバーバックが潜んでおり・・・」


「傭兵達は全滅・・・ゴリラ・ゴーレムの奇襲か?」


 奇襲を受けた傭兵達の事を、疲れきった表情で淡々と語る、トーマス。

 彼の話に、凶暴な岩石の魔物であるゴリラ・ゴーレムの姿を想像する、カマル。


 さらに、カマルは屈強な傭兵達が為す統べなく次々と殺られていった事を考える。

 眉間に皺を寄せる彼は、次に殺られるのは自分達の番かも知れないと気を引き締める。



「はい、恐らくは彼等傭兵もゴリラ・ゴーレムの餌食に・・・」


「では、トーマスさん達も?」


 厳しい表情を顔に浮かべる、トーマスへ非常に申し訳無さそうに問い掛ける、カマル。



「・・・そうです、私を含む伝令と護衛は奇襲を受け、そこで仲間は二人は倒れ、私だけを残し・・・」


「ここまで何とか逃げて来たのですね?」


 ゴリラ・ゴーレムから受けた奇襲攻撃と、仲間達二人の事を思いだし言葉を詰まらせる、トーマス。


 その様子を察した、カマルは気落ちする、トーマスの代わりに続きの言葉を喋った。



「その通りです・・・カマルさん、申し訳有りませんが、私の代わりに誰か科学調査隊のキャンプまで、伝令を頼めますか」


「その怪我では無理は出来ませんからね、分かりました、では伝令役を誰かに頼みましょう」


 こうして、トーマスから伝令の代役を誰かに引き受けて貰う事に成った。

 それを誰にして貰おうかと、カマルは悩み始めた。



「では、トーマスさんはリリーが来たら治療を受けて休んでいて下さい、私は仲間の所に伝令役を頼みに行くので」


「はい」


 カマルは、シートから立ち上がり、遺跡の外を目指して階段を昇って行った。


 その後ろ姿を、トーマスはじっと眺めていた。



(・・・誰にやらせるかな? 一番強そうなのは・・・ザリーンだし? 彼女に伝令に向かって貰うかな・・・)


 伝令役を決めたカマルは早速彼女を探して周囲を見渡す。

 そうしていると、不意に彼の背後から首筋に、ナイフが突き付けられた。



「誰だっ!?」


「私・・・」


 かに思えた、カマルだったが。

 それは勘違いであり、背後に居たのが探しているザリーンだと分かると、彼は肩を落として安堵した。

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