執拗な追撃を脱する事は出来るか?
ゴリラ・ゴーレム達の密集する穴の中心で、爆発の勢いにより舞い上がった爆煙。
この灰黒い煙りに、ゴリラ・ゴーレム達の姿は包まれてしまった。
「やったか・・・」
トーマスは後ろを見届ける事なく、馬の走る速度を落とす事はせず、真剣な顔のままだ。
そして、只ひたすらに真っ直ぐ前だけを見て、子の場から逃げ切ろうと必死に馬の手綱を握っていた。
『ガゴ・・・』
「あれは何だっ?」
「また新手か・・・」
前方の突如隆起した地面を見つめる、フレッドとハインス達。
彼等は、隆起した地面下から現れるので有ろう、新たなゴリラ・ゴーレム達を警戒する。
それ故、地面を眺めながら不意に口から言葉を出す。
『バゴーーーーンッ!?』
隆起した地面は内側から炸裂し爆弾の爆発よりも凄い、威力の岩石の破片と風圧を周囲に撒き散らした。
「何だっ!?」
「グアアアァァァ~~~~~~!!」
飛び散った土煙と岩の破片の山の中から現れたのは、巨大な魔物。
一軒家程もある体長を誇る、ゴリラ・ゴーレム達の群れを率いる長老シルバーバックであった。
体毛の代わりに、白銀色の岩塊である肉体を持ち、堂々たる巨駆を王者の如く誇示する、ボス。
ゴリラ・ゴーレム・シルバーバック。
「ウガァーーーーー」
「うわぁっーー」
シルバーバックは己の周囲に散らばる岩石の中から、二メートル大の巨石を一掴みすると。
槍投げの要領で馬を駆る、トーマス等三人を目掛けて、素早く真っ直ぐに投石してきた。
「あっ危ないっ!」
「早く行くぞっ!」
飛来する岩石を避けようと。
馬の手綱を強く引き、右側面の岩山の麓へと馬を走らせる、フレッドとハインス達。
「駄目だっ! 早す・・・」
「避け切れなっ! ・・・」
しかし、彼等は不運にも飛んできた岩石の塊により、一瞬にして馬ごと吹き飛ばされた。
その上、地面に身体を叩き付けられて即死してしまった。
「フレッド、ハインス!!」
一人、直進していたトーマスだけはシルバーバックから狙われず運良く、岩石から難を逃れる事が出来た。
「次は此方か?」
「グアァ・・・」
岩の塊である太い右腕を再び後ろに構え、投石体勢を取るシルバーバックを睨む、トーマス。
彼は、直進の勢いを減速させず真っ直ぐに、シルバーバックの方へと向かっていく。
「俺には、お前を越えて何としても拠点に戻り、報告しなければならいんだぁっ!!」
「グアアァーーーーーーーーーー」
対峙するトーマスとシルバーバック。
馬の速度を、一歩走る度に上昇させて、猛烈な勢いで一直線に進む、トーマス。
一方、シルバーバックも右手に掴んだ巨大な岩石を投石する。
この攻撃で、奴はトーマスの身体を完全に潰してしまおうと狙いを定める。
(・・・此方には策が有るんだ・・・只で殺られる訳には行かないっ! ・・・)
トーマスは、右手に懐から取り出した火打ち魔石を、左手に黒い玉を持つ。
これらで、導火線に火を着けると、何度も何度も前方に投げ飛ばした。
『ドカンッ!?』
『ドカンッ!!』
彼が投げたのは爆弾であり、地面へと落ちた途端に次々と爆発を繰り返す。
弾ける爆弾は、激しい爆発音と共に夜空へと土煙を巻き上げた。
「グァッ!!」
吹き荒れた土煙に紛れて姿を眩ました、トーマスを見失った、シルバーバック。
奴は、土煙の何処から彼が現れるのか分からないので一端、投げ掛けた投石を止めたのだが。
「今だあっ!」
もうもうと宙を舞う、土煙の中から馬に跨がるトーマスが姿を現すと。
再び彼に向かって、シルバーバックは投石するのだが。
『ドガンッ!』
「よっしっ!」
急に投げたせいで投石した岩石は外れてしまい、トーマスは無事に距離を積める事が出来た。




