手土産無しで家【拠点】まで帰ろうか?
ジャイアント・プラントの黄色い花弁を、唖然と見つめる四人のアンデッド達。
その花弁からは、ダラダラと紫色の毒液が垂れる。
先程まで、地面に水溜まりを作っていたが今は染み込み初めている。
「毒液かよっ!?」
「これじゃあ傷薬は取れないですね?」
「そう言えば、戦っている最中に毒液を投げ掛けて来ましたもんね、コイツ?」
「多分、このジャイアント・プラントはこの島だけに生息する、花弁に毒液を持つ亜種だったんだろう?」
ジョージ、アレリオ、ビョルン、カブラル達は四人で死体を調べて話し合う。
そして、このままダラダラと話し合って居ても埒が開かないと、四人は考えた。
彼等は、まだ昼飯時までは時間が残されていると思い、先を急ぐと言う結論に至った。
「ここに居ても仕方ないから、皆で下に進むぞ?」
「食い物が無いと女子連中に文句言われますからね、ここはリーダーの言う通り下方に下りますか?」
ジョージとアレリオ達は、山の斜面の下方に目を配る。
そこには、灰色の丸みがかった大小様々な岩が地面に散らばっていた。
それを見た四人は、この大小様々な岩は、地震で山が崩れて頃がってきた岩石なのだろうと思った。
「あそこなら、小動物とかが居そうですね?」
「まあ、行って見たらネズミ位は居るだろうな?」
ビョルンとカブラル達も、眼下に転がる岩石を見た。
彼等は、小型の魔物が潜んで居ると思い、近付いて見ようとジョージに提案する。
「なら行ったら分かるな、行こうか皆?」
そう言いつつ歩き出した、ジョージの後を追って、他の三人も歩いて斜面を下る。
やがて、岩石の転がる場所にたどり着いた四人。
彼等は、敵が一匹も居ないことを確認すると、食料と成る魔物が見付けられなかったと思い落胆した。
「魔物が一匹も居ない・・・」
「敵が居ない=食料が無いですもんね」
「そんなぁ・・・これで手ぶらで返ったらニウから物凄くどやされるぞ?」
「そうなりたく無かったら、早く食えそうな茸や山菜を探せって、それが沢山生えてるっ!?」
敵の強い魔物が一匹も居ないことを確認した、ジョージとアレリオ達。
彼等に対して、ビョルンは項垂れる。
彼は、食料を持ち帰らないと顔を真っ赤にした、ニウから、こっぴどく叱られると怯えて震える。
そんな彼に対して、カブラルは茸と山菜を探せと言った。
その瞬間、岩石の陰に様々な茸が自生しているのを発見した。
「この茸は幻覚佐用が? こっちの茸は毒性が、これは食えるな?」
カブラルは、岩石の陰のあちこちの湿った場所に生えた茸を手掴みで取る。
そして、食べられる物だけを摘み取っていく。
「カブラル、食える奴だけでなく毒性のある茸も取って行こうぜ、敵との戦いで役に立つかも知れないからな?」
「幻覚作用の有るも取って行けば、人間達と戦う時に錯乱させるのに使えるし、取って行こうか?」
「それより二人共、早く取って帰らないとニウだけじゃなく、ミリカとシャリルも帰るのが遅いって、きっとぶちギレるぞ?」
赤。
黄。
青。
緑。
茶。
白。
ーーと、次々に手掴みで皮袋の中に色とりどりの茸を、カブラルは取る。
小さい笠が並んだ物、笠が丸い形の物、笠が網状の物。
彼は、変わった形状の沢山の茸を袋入れていく。
毒性や幻覚作用を含んだ茸も役に立つかも知れないので採集しておこう。
そう、アレリオとビョルン達は提案した。
だが、ジョージはそんな暇が有るなら早く取って帰ろうと言った。
何故なら、彼の頭の中ではある思いが浮かぶ。
それは、女子アンデッド陣が鬼の形相でぶちギレる
その上、腹を空かして怒り狂っている姿が脳内に見えたからである。
(・・・ジョージ? 遅いわよっ! まったく、何時まで人《吸血鬼》を待たせるのよぉ~~~~・・・)
(・・・アレリオッ! 貴方も遅いですわよっ! いったい、こんな時間まで何処をほっつき歩いて居たのっ・・・)
(・・・ビョルン? あんたは、いったい何時までアタシを待たせたら良いか分かってるのっ・・・)
(・・・カブラル、遅すぎるわっ! お姉さまも皆も? 今か今かとお腹を空かせて待って居たのにぃっ・・・)
ジョージ、アレリオ、ビョルン、カブラル達の頭の中。
そこには、まるで国民的人気アニメ。
ちびまるこちゃんに登場する母のすみれ&姉の咲子、まるこを叱る様子。
それ+磯野家のサザエと波平親子がカツオを怒鳴る姿のように女性アンデッド陣。
ミリカ、シャリル、ニウ、シニッカ達、女性アンデッド陣が怒り狂って居る姿が浮かんだ。
「これは茸の幻覚作用じゃないよな?」
ジョージは一人呟く。
それから、急いで帰る仕度を整え、沢山の茸を詰め込んだ袋を肩に担いで帰路に着いた。
「皆行こうっ! ミリカ達を怒らしたら大変だっ!!」
「はいっ! リーダー」
「リーダー! 行きましょうっ!」
「帰りましょう? リーダー!」
ジョージ、アレリオ、ビョルン、カブラル達は、こうして洞窟内に構えた拠点へと戻って行った。
「・・・・・・」
彼等の後を着ける謎の蠅の様な虫に四人は気が付かなかった。
そしてら蠅の様な数引きの虫達は気付かれぬ様に、そっと彼等四人に近付いて行った。