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地獄への入り口に飲み込まれた姉弟


 馬車が並んで入れそうな程の大きさである、洞窟の入り口前まで来た、馬車に乗る六人達。


 彼等の内、初めて洞窟の入り口に来た、ナスターゼ姉弟。

 二人は、夜の闇より暗く何が潜んでいるか分からない不気味な洞窟内を見る。


 そして、一瞬だけこの洞窟に入るのは嫌だなと思う。

 それでも、人が沢山住んでいるのだから杞憂だろうと考え、黙って案内される事に、二人は決めた。



「ここが我等の生活拠点です、さあ中へ御案内致しましょう」


「ふふっ♥️ 美味しそうな、ご飯が向こうから、やって来たわっ?」


 不気味な佇まいの洞窟内へと、手綱を引き馬車をゆっくり走らせる、ファレド。


 その隣で、何か不審な一言を呟く、ニウ。



「ニウさん、貴方は今何か変な事を言いませんでしたか?」


「うん? ご飯が向こうから、どうとか・・・」


 カタカタと揺れる馬車の上で、ニウの不審な一言を聞き逃さなかった、ヴィカとヴーク達。

 二人は、今何を言ったのかと、彼女を問いただすのだが。



「はいっ? ああ、それは拠点の方で仲間達がきっと貴方達の為に、ご馳走を用意している頃だろうと思って・・・」


 姉弟に呟いた一言を問いただされた、ニウ。

 彼女は、仲間達が客人である二人に対して、ご馳走の事だと言って、笑顔を向ける。

 それで、何とか、ナスターゼ姉弟を上手く誤魔化した。



「そうだったのですか? ご免なさい、私達の勘違いでしたわ」


「うん、ご免なさい・・・」


「謝る必要は有りませんよ、それより貴方達が来るのを、仲間が首を長くして楽しみにしているから」


 誤解したと謝罪する、ヴィカとヴーク姉弟に対して、謝る必要はないと言って笑う、ニウ。

 そうこうしている内に、馬車は拠点の存在する広い空間に入り石橋を渡る。



「さあ、私達の拠点に着きましたよ」


「よっと! ヴィカさん、ヴーク君、降りて降りてっ!」


 石橋を渡ると直ぐに馬車を止めた、ファレド。

 彼は、拠点に無事たどり着いたと、ナスターゼ姉弟に告げる。

 そして、馬車の上から飛び降りた、キャロル。

 彼女も、二人を待ち構える、アンデッドのパーティーの所へと誘う。



「はい、ヴーク行きましょう」


「うんっお姉ちゃんっ!」


 ヴィカとヴーク達は馬車から降りて、キャロルの後に続こうとする。

 二人の目には、左右の螺旋状の岩柱に立つ、顔を包帯で隠した男性達が見えた。



 片方の黒いコート型軍服を着た、銀髪の音楽家。

 彼は、岩壁に背中を凭れ掛けて、此方に愛想良く手を振ってきた。


 反対の岩柱に立つ、大柄なラッパ銃を構えた男性。

 彼は、此方と目が合うと、軽く頭を下げて挨拶をした。



 姉弟からは、二人の男性達は顔に包帯をしているので、素顔は見えない。

 だが、二人は愛想の良い人物で有るようだった。



「あの・・・ひとつ宜しいでしょうか?」


「はいっ? 何でしょう・・・」


 ヴィカは案内してくれた、ニウも含め、何故彼等は顔に包帯を巻いているのかと不思議に思う。


 それを、その場で、キャロルに質問するが。



「あっ! それですか? 実は~~この間、魔物との戦闘でニウお姉さまも皆も負傷して仕舞いまして・・・」


「そうでしたか? 質問ばかりして済みません」


 質問を問われた、キャロルは適当な理由をでっち上げて誤魔化すと、作り笑いを浮かべる。


 その事を気付かずに、再び謝罪する、ヴィカ。



「良いんです、良いんです、だって・・・御二人は大事な獲物何ですからねっ!!」


「えっ!? 今何をっ!」


「お姉ちゃんっ!」


 突如ヴィカの右腕を、グイッと力強く掴んだ、キャロル。

 その背後にいた、ヴークは驚いて大声で叫ぶが。



「お前らは動くなっ!!」


「一瞬でも動いてみろ、頭を吹き飛ばしてやるっ!!」


 ビョルンとカブラル達は、螺旋状の岩柱から眼下に居る、ナスターゼ姉弟に、それぞれの武器を向ける。


 シニッカも、カブラルの立つ岩柱の影から現れ、弓を姉弟に向ける。

 アレリオも、遺跡の中から大剣モンタンテを構えて駆け寄ってくる。



「くっ! やはり貴方達は、アンデッドだったのですね」


「お姉ちゃん・・・?」


 悔しがるヴィカと、不安そうな表情で両手を上げる、ヴーク。

 しかし、彼女は抵抗しようと、キャロルに十字架型のロングスタッフを向けて光魔法を放とうとする。



「ライトッ!!」


「させるかっ!」


 しかし、ヴィカの背後に控えていた、ニウが襲い掛かる。


 ニウは、十字架型のロングスタッフを持つ右手をダンで弾き飛ばす。

 その勢いのまま、今度はヴィカの顎に膝蹴りをヒットさせる。



「ぐっ!」


「お姉っ・・・!?」


「坊主、絶対に動くなよ?」


 顎に蹴りを受けた、ヴィカはよろけてしまい、キャロルに抱かれる。


 その様子を見て、叫ぼうとした、ヴーク。

 彼は背後から、リュージンにより首筋に偃月刀を当てられ黙らされてしまう。



「良いか? 動かない方が良いぞい、お主らの命なぞ、簡単に握り潰せるのじゃからな」


「リュージンさん、子供を怖がらせても仕方が有りませんよ?」


 ヴークの首に、偃月刀の刃を当てて冷酷な視線を向けて脅す、リュージン。


 その隣まで歩いて来た、フリントロックピストルを右手に構えた、ファレド。

 彼は、まだ子供である、ヴークを余り怖がらせ無いように頼む。



「これは? ワシとした事が・・・しかし、だからと言って坊主、お主は開放しないぞ」


「じゃあ、どうするの?」


 頭を軽薄な笑みを浮かべて、左手で撫でる、リュージン。


 彼に対して、ヴークはどうするのかと聞くが。



「貴方達をどうするのかは、この私が決めるのよ?」


 そこに、ミリカが岩柱の影から、ジョージとシャリル達を引き連れて現れた。

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