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地獄からの使者が迎えに来た


 ミリカ達四人の先を歩く、ファレド。


 彼は、洞窟を出ると、四人に人間の振りをして待って居るように頼む。



「では、皆様・・・私はキャリッジ馬車で姉弟と仲間を迎えに行って参りますので、それまでに人間に変装しておいて下さい」


「ええ、分かったわっ! ファレド、私達の為に上手く騙して連れて来てねっ!!」


 四人に告げた、ファレドは駐車スペースの方へと向かう。

 そして、キャリッジ馬車を目指して走って行った。


 ミリカは、彼が新たな搾血用の犠牲者となる人間たちを連れて来る事に期待して声を掛けた。



「リーダー、アレリオさん、皆様、お早く変装をっ!」


「分かってるよ、包帯で体を巻いておくから心配するな」


「俺もそうするから早く行って来いよ?」


 ファレドは、遺跡の側に立って居た、ジョージとアレリオ達に声を掛ける。

 二人には、変装しておくように言って馬車を目指す。


 声を掛けられた、二人は包帯を巻いておくからと答え、物資が保管されている木箱を探しに行く。



(・・・この馬車で迎えに・・・)


「ちょっと待ってよっ!」


 馬車の運転席に飛び乗り手綱を掴んで座る、ファレドは直ぐに出発しようとする。

 しかし、突然そこに横から、ニウが声を掛けてきた。



「ニウさん、何故貴女も?」


「何かがあった時の為と、あんた一人で行くより、アタシもついて行って、相手方に仲間がちゃんと居るんだって、分からせて騙した方が良いってお姉さまが言ったのよ?」


 何故貴女も来たのかと不思議がる、ファレドに対して、ニウはもし戦闘が始まったりした場合。

 もしくは他の人間が拠点にはちゃんと生活している事を見せる為にと。

 ミリカから、支援に行けと言われた事を告げる。


 勿論彼女の体には、包帯がぐるぐると巻かれ、刺青が見えない様に上手く隠されていた。



「そうですか? では、共に行きましょう」


「ええ・・・私も、その姉弟の姿を早く見てみたいしっ!」


 馬車の上から話す、ファレドの横に飛び乗る、ニウ。

 彼等二人は、キャリッジ馬車を走らせ、洞窟内の石橋を通過して外へと向かう。



「あの二人、大丈夫かなぁ~~?」


「大丈夫だろ? 余計な心配するなって」


 螺旋状の岩柱のくり貫かれた穴で見張りを続けていた、ビョルンとカブラル達。

 二人は、石橋を通過する馬車を見つめていた。



 やがて、馬車はこの拠点が存在する洞窟から、広くて大きい洞窟へと出て行く。

 人間達と仲間達を迎えに外へ行ってしまった。



 一方その頃、ナスターゼ姉弟を騙して人間の振りをするリュージンとキャロル達。

 彼等は、まだか、まだなのかと待つ。

 自分達同様に死の奴隷へと目の前の姉弟を変えてしまう地獄からの使者。

 その使者を乗せた、送迎馬車を只ひたすらに待ち続けて居た。



「貴方達二人は、師承と弟子の関係なのね」


「僕、てっきり恋人同士の関係だと思ってた」


 兄妹である、ヴィカとヴーク達。

 二人は、中の良いリュージンとキャロル達の関係を見て思う。

 まるで、夫婦、或いは恋人同士の関係だなと。


 実際は年齢八十の爺と孫位の歳の弟子の関係なのだが。

 アンデッド化したリュージンは外見が若い男性にしか見えない。

 また、進化により幼かった外見が二十位の女性へと変化したキャロル。

 二人を、ナスターゼ姉弟が男女の関係だと勘違いしても仕方が無いことだった。



「そう見えますかな?」


「そう見えるの?」


 リュージンは困った表情をして、キャロルは嬉しそうな顔をしながら、ナスターゼ姉弟にそう言った。



「ええっ・・・二人はそう見えますわ」


「あっ? 馬車が来たっ!」


 二人の間柄をそう見えると答えたヴィカ。

 それと遠くの方から馬車がやって来るのを発見するヴーク。

 この時、二人はこれから自分達が家畜同様に飼育されて血液を絞り取られる事。

 やがては、アンデッドと化す事をまだ知らなかった。



「やっと、迎えが来ましたな・・・」 


「あれっ? ニウお姉ちゃんも来たんだっ!?」


 遠方から此方に走って来る、キャリッジ馬車を見つめる、リュージンとキャロル達。


 その馬車が、人間の姉弟&アンデッドの二人の元へと来る。

 それから、手綱を握っている、ファレドの隣に座る、ニウは四人に声を掛ける。



「皆様、お待たせしました・・・さあ馬車に乗車して下さい」


「貴方達が、ファレドが見つけた姉弟ねっ? アタシはニウって言う名前よ、どうか宜しくねっ!」


 馬車の上から乗車する様に告げる、ファレド。

 宜しくと初対面のナスターゼ姉弟に愛想よく笑顔で挨拶をする、ニウ。

 二人に早く馬車に乗るように促された姉弟と、二人のアンデッド達は馬車の座席に座る。



「二人共、ちょっと窮屈かも知れないけど我慢してね?」


「大丈夫です、拠点に泊めて頂くだけでも有難い事ですから」


 本来は、四人乗りの馬車に、六人も乗車しているので席は少し窮屈な感じとなる。

 その席の一角に座る、キャロルは申し訳無さそうに、姉弟に狭い事を詫びる。


 ヴィカは優しい笑顔を向け、気にする事は無いと答える。

 その上、一泊拠点に泊めて貰えるのだからと答えた。



 その後、馬車は走り出し、勢い良く地獄への片道を疾走した。


 馬車に乗る、唯一の人間である姉弟。

 彼等は自分達を、アンデッドが仲間に引き摺り込もうと、狙って待ち構えているとは知らない。


 ヴィカとヴーク達は、呑気に疲れた体を馬車の座席で休めた。

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