獲物が逃げた!? あんたのせいよっ!!
岩肌の上を草でも探して居るのか。
頭を下げつつ、ノロノロと歩いていた、ドッペルホーンロッカー達。
連中は、素早く後ろ脚を曲げると凄い勢いで遠くへ逃げ出して行った。
「ああっ! 行ってしまっちゃった・・・」
「残念ですね・・・お姉さま・・・」
「また別の魔物を探すしか無いですね?」
此方の存在に勘づいて、突如逃げ出し遠ざかるドッペルホーンロッカー達。
彼等の背中と尻を見つめて、只唖然と立ち尽くすしかない、ミリカ、ニウ、ビョルン達。
「あ~~! やっぱり脚の速い奴だったか?」
「なっ! な~~にが! 脚の速い奴だったか?よぉ~~~~!!!!!?」
呟いて、取り逃がした獲物を見送る、ジョージ。
そんな彼に対して、怒り狂う鬼母神ミリカは怒鳴り声を上げる。
彼女は、蒼白いヴァンパイア顔を鬼のように真っ赤に変色させる。
そ、して、彼が着ている灰色鎧の胸ぐらを、グイッと物凄い力で掴んで引っ張る。
「どうするのよっ!? あんたのせいで獲物に逃げられてしまったじゃないっ!!」
「ぐうぅっ! だから、アイツ等は俺達には無理な獲物だったんだよ?」
胸ぐらを強引に引っ張るミリカは、脳内に響くような怒声を、ジョージの耳元でヒステリックに叫ぶ。
しかし、その暴力を気にせず、彼は冷静に落ち着いた声で彼女を説得する。
「ビョルン、お前は奴等の脚に魔法を当てられたか? ニウ、お前は奴等の正面に回り込めたか?」
「それは・・・」
「出来るかは・・・」
ジョージから突然名前を言われて質問された、ビョルンとニウ達。
二人は、焦って質問に上手く答える事が出来ない。
「まあ、俺もこの距離からじゃあ、ダークボールを当てられるワケが無いからな・・・」
「だからっ!! 何がどうしたって言うのよっ?」
ジョージは、横からミリカに体を激しく揺さぶられながらも語る。
そして、ドッペルホーンロッカーを何故諦めたのかを説明し始める。
「ミリカ、お前も奴等に、フレイムボールを当てられたか?」
「それは・・・」
ジョージに魔法を当てられたかと言われた、ミリカ。
彼女は、答えに困り固まってしまい、それを聞いた彼は更に説明する。
「良いか? 皆、ここは平地と違って山道に慣れた魔物や脚の素早い魔物が機先を制する場所だっ! だから作戦を練ってから挑まなきゃ直ぐに逃げられてしまう」
「リーダー? そこまで敵の事を考えていたんですねっ!」
「そこまで深く獲物達を観察していたとは!」
意外に深くわドッペルホーンロッカーを考察していた、ジョージ。
そんな彼を、深く考えていたのかと非常に感心して成る程と言う顔をする、ニウとビョルン達。
「成る程ね・・・でも、何であんたが、そんな事を思いつく訳?」
「それは・・・勿論、ファークライ4とか、ゾイドとかで山岳戦には馴れているからさっ?」
ジョージの説明にやっと納得したのか、胸ぐらを掴んでいた両手を放した、ミリカ。
彼女は、何故そこまで思いついたのかと聞いてみると。
想像通り、やっぱり根暗なオタクの回答が返って来た。
「はぁーー? やっぱりそうよね・・・」
予想通りの間抜けな答えに大きく吸い込んだ息を勢い良く吐き出し、疲れた表情でミリカは溜め息を吐く。
「まあ、今回は無駄な知識が役に立ったのかな・・・」
あきれ果て疲れた、ミリカはそう呟いて夜空を見上げる。
すると、そこには綺麗な満月がコイツらは馬鹿か。
と言う様な目で、此方を見下しているかの如く眩い月明かりを放っていた。
「ミリカ、ニウ、ビョルン、もう行くぞ」
「行きますか、リーダー・・・」
「リーダー、行きますよっ!」
(・・・行くのね・・・)
そう告げた、ジョージに皆ついて行き、ニウとビョルン達は返事を返して歩く。
ミリカは、また歩いて別の獲物を探すのかと思うとゲンナリするが、重たい足に力を入れて歩き出す。
「おっ? 今度はハリネズミがいたぞ」
ジョージが指を指した方向には、ハリネズミが凶暴化したかのような見た目の魔物。
ニードルランサーウルフがいた。
ウルフの名が示す通り、ネズミではなく、体中の体毛が鋭く鋭利な刺の様に尖った魔物だ。
コイツ等は複数匹の群れであり、この狂暴な魔物の体長は1、5メートル程だった。
「おっ! 彼奴なら此方に立ち向かって来そうだな?」
「えーー! 彼奴は余り美味しく無さそうだよーー?」
ニードルランサーウルフを今日の昼のご飯にと狙いを定めた、ジョージ。
そして、アイツは美味しく無さそうだと不満顔を見せながら文句を垂れる、ミリカ。
「文句を言うなよ? 確かに奴は棘だらけで余り旨そうじゃ無いし、食う前に棘を抜き取るような地味な作業をしなきゃ行けないが・・・」
「なら何故、アイツを獲物に選んだのですか?」
「リーダーの言う通り、仕留めた後も皮の剥ぎ取り作業や肉の解体作業が面倒なのに・・・」
ジョージの言葉に、何故彼奴を獲物と定め決定したのか、不思議そうな顔をする、ニウとビョルン達。
「何でなのよ、あんなの? の何処が良いのよ・・・」
「それはな・・・奴がそれなりに強そうだからだよ、弱い奴だと直ぐに逃げられるが、戦闘になったら彼奴は俺達と戦う方を選ぶ筈だ? まぁ~~肉の味とか、棘とかは確かに面倒くさそうだが・・・」
ミリカの質問に対して、ジョージは自分の考えを丁寧に説明する。
そして、対ニードルランサーウルフ用の作戦を立てようと仲間達に出す指示を考え始めた。
明日、寝坊しなければ6時に投稿するから。