坂を下る二人の逃避行
「こいつの死体はもう少し下った所に棄てるか?」
「待って・・・それなら私達の拠点の洞窟の側まで行けば、洞穴が有るから、そこに投げ込みましょう?」
坂を駆け下るカブラルとシニッカ達。
二人は、先程見つけた人間達の拠点と、自分達アンデッドの拠点の中間程の距離まで来ていた。
「止まれっ!!」
「あれは、何?」
坂を下る二人の前に、何人かの人間達が見えた。
人数は、四人程で一組のパーティーを組んでいる様であった。
「もぉーー!! マルセルったら? 遅いんだからぁっ!」
「仕方がないだろっ!!」
「御二人共、このまま歩いていると巷を騒がせる、アンデッドが出て来るやも知れませぬので先を急ぎましょう」
「そうですよ? マルセル様、チュリーナ様、アンデッドが群れで現れたら我々四人は人溜まりも有りませんよ」
四人のパーティーは、何やらワイワイガヤガヤと騒々しく騒ぎながら歩いて此方へと向かって来る。
それを確認した、シニッカとカブラル達。
彼等は、右側の坂道を素早く駆け抜けて行き、四人のパーティーから離れた位置で相手を観察する。
一人は若い男性で、女性のようなロングヘアーにした、レグホーンカラーの髪。
ボマルシェ・グリーンの瞳に、輪郭の細い端整な顔立ち。
体を、長いアルパインブルーの縁に金の刺繍の付いた長いローブに身を包む。
肩からは、斜めに茶色い鞄を下げ、下には白のシャツを着ている。
足には、カルメン・コーラルカラーのズボンを履く。
靴は、高級そうな焦げ茶色のブーツを履き、全体的には貴族の息子と言う雰囲気を纏っていた。
武器は短槍や長剣程の長さの、謎の大きな筆を肩に担ぐ。
左手には、絵の具を乗せたパレットを手に持っていた。
もう一人は、幼く小柄な少女の様で、丁度キャロルと同い年か、一つ歳上か年下位の年齢に見える。
腰まで伸びる、サラサラのロングヘアーで、かなり薄明るいレモンゴールドの髪。
白い肌に、幼く若干の丸みを帯びた細い顔立ちの持ち主であった。
袖から胸元に掛けては白く。
高級そうな、金の刺繍が胸元の中央から下のスカートの裾まで入った、ピンクの民族衣装を着ていた。
武器は持たず、少女の周りを囲む様に四体の人形が宙を飛んでいた。
人形達は、それぞれ違う兵種の人形である。
右側には。
剣と楯を装備した、剣士の人形。
鎧を着る槍を構えた、騎士の人形を宙に浮かべる。
左側には。
長い杖を持つローブを着た、魔法使いの女性の人形。
軍服を着て、銃を持った女銃兵の人形を宙に浮かべていた。
これ等、四体の人形達が少女の周囲を飛んでいる。
もちろん、魔物の襲撃から少女の身の安全を守るために護衛を行っていた。
更に、彼等二人の背後には、二人の人間が後方や側面を警戒して控えていた居た。
彼等は前列の二人より隙が無く、実力と経験を兼ね備えた歴戦の戦士の気配を放って居た。
その内の一人はオリーブ・ドラブ・グリーンと黒色のメイド服を着ていて、手には長い箒を持っており。
顔は、冷静な表情を常に崩さない落ち着いた雰囲気の女性であり、控え目な美人と言う感じだった。
サンセットカラーの髪を、お団子ヘアに束ね、ベイリーフの瞳を持つ知的な容姿の人物であった。
彼女は一見すると、只のメイドに見える。
だが、その落ち着いた様子から察するに要人警護の任務を兼ねた女中であり。
箒を装備しているが、あれは魔法武器であり、彼女に迂闊に近寄れぬ気を放つ。
表向きは、メイドの格好をしていても魔術と棒術の使い手であり。
かなりの実力者なのだろうと、カブラルとシニッカは判断する。
その隣に立つ男性は、知的な女性とは対照的に派手な格好をしており。
フリルの付いたダボダボの服を着ており、その服の色は右側が紅く左側は青色だ。
下のズボンも同様に右側が緑色であり。
左側は、グルグルと包帯が巻かれているような飾りが付いており色は緑と黄色い柄である。
ロングブーツも右側が赤と緑で、左側は青と黄色と言う凄まじく派手なストライプ柄の格好をしていた。
カブラルとシニッカ達は、この男が噂に聞く精強な傭兵ランツクネヒトだと判断した。
頭には大きな。
紅。
蒼。
碧。
黄。
~~等の色とりどりの羽飾りが付いた、赤いベレー帽。
これを、巨大ハンバーガーのように膨らませた帽子を被る男。
顔は、まるで酒に酔った様な赤みがかった肌に、エアウェイ・ブルーの瞳に持つ。
フォクシー・ブラウンのオールバックにした髪と。
揉み上げと繋がった髭を蓄えた齢三十歳位の男性に見えた。
武器は、杖として二股のミリタリーフォークを持つ。
背中には、長い二連式のホイール・ロック式銃を備え、腰のベルトには剣を下げていた。
「兎に角・・・今は拠点に戻ろう」
「ええ・・・帰りましょうか? 私達のお家に・・・」
その四人から見付からないようにと。
カブラルとシニッカ達は距離を取り、大きく迂回しながら自分達アンデッドの拠点まで帰って行った。