馬車は完成したけど・・・
「出来たぞっ! 一台、バギータイプだっ!」
カブラルは、ジョージ達に自らが制作して、出来上がった馬車を自慢する。
それは、一台の一人乗り小型二輪馬車だ。
「これは・・・俺専用のか?」
「そうですよリーダー、こいつと後一台、二人乗りの戦車を作れば街まで行く事が出来ますね・・・では俺は作業に戻りますよっ!」
小型二輪馬車を見つめたジョージは自分専用なのかと聞き。
カブラルは笑顔で答えて、再び改造作業に戻る。
「もう一台か・・・出来れば街まで行ける・・・」
「って言うか、馬具が無いから一台じゃあ足りないわよっ!」
一人呟くジョージに対し、ミリカは重要な事に気づく。
それは、馬具が一つも無いので、誰も馬に乗れないと言う情況であった。
「これは? カブラルにもう何台か作って貰わなきゃ駄目だな・・・」
「カブラルっ・・・申し訳無いけど私達にも馬車を作って頂~~戴ねっ!」
ジョージが呟くと。
その隣に立つミリカは、カブラルに笑顔で両手を合わせて頼み込んだ。
「ミリカ様、それは良いのですが・・・他の仲間の分も作るとなると時間が掛かりますよ、それは宜しいので?」
「良いわよ、時間が掛かるのは仕方無いわ・・・出来るまでは、じっくりと待つわよ・・・」
カブラルは困った様に言い出すと。
ミリカは仕方無いわと言って、馬車が出来上がるまで待つと告げた。
「申し訳有りません、ミリカ様・・今暫くの御辛抱を・・・」
「分かったわ、それなら運良く手に入った食材や調理器具で御飯を作って居るから、カブラル貴方は頑張って作業を続けてねっ!」
カブラルが言葉通りの申し訳なさそうな表情をしながらそう言うと。
ミリカは、思い付いた。
馬車の残骸の荷台の中から手に入れた食材と調理器具で飯を作る事をだ。
「はいっ! ミリカ様、最高の馬車を作りますっ!」
カブラルはそう言うと、また黙々と馬車の作製作業を再開し始めた。
彼は仲間の為にもと、一人で作業を頑張る。
「じゃあ~~シャリルちゃん、ニウちゃん、キャロルちゃんっ、私達は仲良く御飯を作りましょう」
ミリカは女性アンデッドチームに指示を出す。
そして、名前を呼ばれた彼女等は喜んで指示に従う。
「はいっ! お姉さま、私達も御手伝いしますよっ♥」
「アタシも喜んで調理を手伝いますっ♥」
「ミリカお姉ちゃん私も御手伝いする~~♥」
シャリル、ニウ、キャロル達。
三人は、ミリカと共に馬車の残骸の荷台から沢山の食材と鍋を探す。
「なら俺達は? 穴でも掘るか? 時間が朝まで掛かったら俺達アンデッドだから、困るしな・・・それに馬車を入れるスペースまで掘らなきゃ行けないしな」
馬車の完成までは時間が沢山有るなと思ったジョージ。
彼は、自分達アンデッドが太陽の光から身を隠す穴を掘ろうと考え。
また一人、ボソリと呟いた。
「つーー事でっ! アレリオ、リュージンッ! 二人には俺と穴堀をしてもらうぞ」
「あらぁ~~ジョージ、そんな趣味が有ったの? 素敵な御趣味ねぇ~~♥」
ジョージの言葉をわざと、そう言う意味で捉えたミリカ。
彼女は冗談好きなのである。
「アホッ!? そう言う意味で言ったんじゃあ無いっての」
「あははっ? 冗談よ、何時もの冗談っ♥」
真っ青なゾンビ顔を赤らめさせて反論するジョージに対し。
ミリカは、膝を叩いて笑ながら冗談だと答えた。
「じゃあ私は食材と調理器具探しに戻るからねぇ~~」
ジョージの前から、ミリカは手を振りながら後ろ姿を見せて馬車へと歩いて行った。
「はあぁ~~たくっ? 疲れる女だぜぇ~~」
上体をだらんと垂らし深く溜め息を吐いたジョージ。
そこに、アレリオとリュージン達がやって来た。
「リーダー、俺はさっき馬車の中から大きなスコップを見つけたんで持って来ますよ」
「ワシは風魔法で土を吹き飛ばしましょう」
アレリオは、馬車までスコップを取りに行き。
リュージンは、風魔法で地面に穴を開ける準備を始めた。
「二人とも、頼むぜ・・・」
ジョージも暗黒魔法を地面に向けて放ち、穴堀作業を始める。
穴を開ける為だけならジョージの暗黒魔法で地面に穴を開けたり。
リュージンの風魔法で地面の土を強風で吹き飛ばせば良いのだが。
横穴を人数分掘ったりする等の細かい作業は、手堀で行わなければ為らなかった。
「穴堀作業に、馬車の改造作業、食材調理と全員忙しい情況だな・・・」
ジョージはそう呟きつつ作業を続ける。
その後も、リュージンと共に魔法で地面の土を吹き飛ばしていき。
大きな灰色のスコップを三つ運んできた、アレリオが戻って来ると。
その後も、三人で穴堀作業を続けた。