いよいよ目当ての獲物を仕留めたか・・・
シニッカの瞳には、幼い少女の姿が写った。
「ふ・・・」
シニッカは岩柱の陰から、静かに弓を構え。
魔法を放っているアンデッドに応戦する幼い魔法使いの少女に狙いを絞る。
暫くじっと彼女は動かなかったが、やがて、弓を強く静かに引いた。
「当たってね・・・」
シニッカの射った矢は一直線にキャロルまで飛んでいく。
そして、魔法を放って応戦している彼女の肩の肉を貫いた。
「うっ!? 痛あっ?」
キャロルは肩に刺さった矢を触り、傷みを我慢して矢が飛んで来た方向を確認する。
その方向には、トンネルの暗闇に紛れて何かが動いたのが一瞬だけ見えた。
「なにっ? 弓兵が居るの・・・?」
キャロルは更に遮蔽物の奥に隠れ。
謎の弓兵から、次なる攻撃の矢を当てられ無い様に姿を隠す。
キャロルを含め、騎兵隊員と傭兵達は数こそ多いが。
周りから、アンデッドに包囲攻撃されている。
その上、徐々に劣勢に追い込まれていた。
彼等は四方向から攻撃されていた。
頭上、岩柱、遺跡の物陰、トンネルの暗闇から。
「撤退ーーーー!!」
騎兵隊の体長格の男が叫ぶ。
彼の部下である騎兵隊員と傭兵達は一斉に走り出す。
彼等は、負傷者と馬車を置き去りにし。
この広い空間の出口のトンネルに、一目散に向かった。
「急げっ! 殺られるぞっ!?」
「行けーー逃げろぉーーーー」
急いで敗走する騎兵隊員と傭兵達。
連中は、背中からジョージ達アンデッドに魔法で攻撃される。
中には、振り返り銃や魔法等で反撃して来る者もいた。
だが、大半の者はシニッカの狙撃。
シャリルとビョルン達ペアの魔法。
そして、リュージンの正確な風魔法で仕留められた。
「あっ! 待って・・・」
キャロルも急いで走り出し、逃走する。
その隙を、頭上からジョージとミリカ達に狙われる彼女。
そして、彼女は頭上からの二人が放つ暗黒魔法が足下に当たってしまい。
つまづいて、倒れてしまった。
「あっ! 痛たたっ?」
「追撃するなあ~~~~」
転んでしまった、キャロルは前に聞いた事のある大声に反応する。
それは、アンデッドの声だった。
(・・・あの時・・・師匠を殺したアンデッドの一人・・・ゾンビの声だっ! ・・・)
キャロルはそう思い。
後ろに振り返ると、数体のアンデッドの姿が目に入った。
その姿を見た、彼女は身の危険を感じヤバイと思った。
岩柱の石橋からは、僧侶の様な見た目のアンデッド。
黒い軍服コートのアンデッド。
遺跡の物陰からは、大柄な黒い鎧のアンデッド。
黒色の服装のアンデッドが、こちらへと迫るのが見える。
(・・・あれは師匠!? はっ・・・)
その内の一体、黒色の服装のアンデッドが。
キャロルを遠くから見つけると、勢い良く走り出し近寄って来る。
「やっぱり、師匠ね・・・」
「キャロル・・・やっと見つけたわい」
キャロルとリュージンは見つめ合い。
そう呟くと、御互いに素早く武器を構え攻撃し合う。
キャロルは短い杖を構えてリュージンの頭に向け氷結魔法を放つ。
彼は、偃月刀の刃を魔法少女の胸目掛けて突き出す。
「師匠・・・何・・・で? アンデ・・・ッドに・・・」
「キャロル、全ては偉大なる主様達の為にっ・・・」
キャロルの放った氷結魔法は、リュージンが頭を右に反らして避けてしまう。
そして、彼が偃月刀を魔法少女の胸に突き刺し。
止めを刺した事によって、勝負はついた。
キャロルは口から血を流し。
かつての師匠であったリュージンを、涙目で睨んで呟いた。
だが、彼は魔法少女の胸に突き刺した偃月刀の刃を抜き取る。
「ぐっ・・・」
『ガク・・・』
キャロルは一言発すると。
ガクりと頭を右に垂らして、後ろに力無く倒れて動かなく成ってしまった。
「リュージンさん? 終わったの・・・」
ミリカがそう言って、リュージンに声を掛ける。
その声にリュージンが振り向くと、崖上から仲間が来るのが見えた。
ジョージ、ミリカ、アレリオ、ニウ達が階段から下りてきていたのだ。
「ミリカ殿、済まないがこやつに魔法を掛けてアンデッドに変えて頂きたいのですが・・・」
「他ならない、リュージンさんの頼みなら良いわよ・・・って言うかそれ目的でここまで来たんだしぃ~~」
リュージンに頼み込まれた、ミリカ。
彼女は、キャロルをアンデッドに変えることを快諾した。
彼女は早速スキルを使い、魔法少女を仲間に変えるべく魔法を掛ける。
「死体変化」
キャロルに魔法を掛けたミリカは満足そうに邪悪な笑みを浮かべる。
その様子は人間の魂を堕落させる女悪魔その物で有った。
「ふふっ・・・これでキャロルちゃんも私の妹分に♥」
「聞こえているぞ~~バカ女っ! いや・・・変態ロリコンレズって言ったほうが良いか?」
ミリカの一人事にジョージはそう言って呆れる。
そして、キャロルの死体には変化が訪れた。
キャロルの体からは青白い煙がボワッと吹き出し体全体を包み方込む。
その煙が晴れると、中から薄透明な儚げな印象を与える少女が出てきた。