形勢逆転
「追い詰められたな・・・」
「どうやら、そうらしいわね」
ジョージとミリカ達は崖際まで傭兵達に追い詰められてしまっていた。
二人は、崖下の戦いの事等気にしている暇は無かった。
目の前の敵である、三人の傭兵と。
後方に位置する弩兵と弓兵を何とか倒さなくては成らないが。
追い詰められてしまった二人にとって、それは非常に辛く不利な戦いであった。
ジョージは二人の敵兵。
大剣を構える傭兵と短槍を構えた槍兵に挟まれており。
一方、ミリカはモルゲンシュテルンを装備した戦士の攻撃により。
酷い重症を負っており。
吸血鬼ではなく、通常の人間なら、とっくに出欠多量で死亡している所であった。
「掛かれっ!」
傭兵達のリーダー格なのか分からないが。
大剣を構えた傭兵が、ジョージ達に攻撃しろと命令を下すと。
その掛け声を聞いた、他の傭兵達も攻撃に移る。
『ヒュッ』
『ヒュンッ』
「殺せっ! 相手はたった二人だ」
「今度は頭を潰してやる」
弩兵と弓兵はジョージとミリカ目掛けて矢を放ち。
槍兵と戦士はそう言って、傭兵と共に、三人でジョージとミリカに襲い掛かる。
「誰が、お前ら三下何かに殺られるかぁっ! アホッ!!」
「そうだっ! お前らがクタバレッ! 雑魚ぉ~~~~!?」
ジョージとミリカ達は、諦めずに敵と戦いつづける。
ショートソードと大剣。
レイピアとモルゲンステルンがぶつかり合い。
カンッと、金属音同士の五月蝿いハーモニーを奏でる。
そこに、新たに階段を走りながら登って来る、二人分の人間の足音が聞こえて来た。
恐らくは、傭兵達の更なる増援だろうと、ジョージとミリカ達は判断する。
「増援っ!? もう駄目か・・・」
「何言ってんのっ! 諦めたら、そこで終わりよっ!」
ジョージは敵の多さに諦めかけるが。
気丈なミリカは敵の傭兵達を睨み呟く。
その呟いた台詞に彼は。
「ミリカ・・・安西先生の真似か?」
「はっ! それはスラダンでしょ」
目の前の敵が、自らに襲い掛かっていると言うのに、二人はバカを言い合う。
そして、階段の方から声が聞こえて来た。
「援軍っ!? 下の奴等が勝ったのか?」
「なら、援軍と一緒に奴等二人を仕留めるぞっ!」
弩兵と弓兵は、ジョージとミリカ達を狙い射とうとするが。
丁度、その時に増援の者達が現れた。
「おーーい、救援だあっ!」
「だから死ねっ! 人間どもっ!」
彼等の背後からは、増援の傭兵達ではなく。
突如、スケルトンの剣士とアンデッドの格闘家が現れる。
「がっ!?」
「何っ! ・・・」
アレリオは、弩兵を背後からモンタンテで斬り倒し。
ニウは、振り向いた弓兵をダンで殴り殺した。
「リーダー、ミリカ様、助けに来ましたよっ!」
アレリオは斬り倒した、傭兵達の背中に右足を乗せると。
ジョージ達と敵対する傭兵達を睨む。
自らの主を傷付けた愚かな人間に、彼は慈悲を掛ける積もりは無かった。
「アタシ達の所まで敵が来たから、リーダーと、お姉さまの所にも来てると思ったら、やっぱりね?」
ニウはそう言うと。
負傷した体で、アレリオと共に傭兵達と対峙する。
その瞳には、傭兵達への憎しみと殺意が満ちていた。
アレリオとニウ達は階段の側で戦った後、休んで待機していたのだが。
ジョージとミリカ達の方にも、敵が襲撃しに回り込んでいると思い。
二人して、救援に駆けつけたのであった。
「クソッ! 囲まれたぞ」
「知るかっ!」
囲まれて動揺する槍兵と戦士はそう言って、ジョージとミリカ達。
アレリオとニウ達のペアを交互に睨む。
「お前ら、生き残りたければコイツらを倒せば良いんだよ」
リーダー格の大剣を構える傭兵が、ジョージに斬りかかって来た。
ジョージの首を跳ねようと、大剣を横から一気に振るう傭兵に対し。
ジョージは、暗黒魔法を放った。
「ダークボール」
暗黒球が胸当てにめり込み、後方に吹き飛ぶ傭兵。
ジョージは、この距離からなら暗黒魔法を放っても外れる事は無いだろう。
と思い、傭兵に魔法を放ち、見事予想は的中した。
「やっ!やっ!ヤバイ!?」
「逃げろ~~~~」
傭兵が吹き飛ぶ様を見た槍兵と戦士達。
二人は階段から逃げようとして、アレリオとニウ達に襲い掛かって来たが。
「逃がしはしないっ!」
「来んなっ! 変態っ!」
アレリオは戦士のモルゲンシュテルンを回避し。
奴の体を袈裟斬りにする。
ニウは、槍兵の突き出した槍の穂先を、すり抜けて避けると。
槍兵の顎目掛けて、重たく素早い蹴りを入れた。
「がっ!? ・・・」
「うげぇーーーー!」
アレリオに斬り倒された戦士は、一言発すると。
ドサリと体勢をを崩して、地面に倒れて絶命する。
「さっきのお返しよっ受け取りなさい」
「ギャッ!」
ニウに蹴られた戦士は、涎を吹き出しながら後ろに倒れ。
背中から、彼女にレイピアを突き刺されて一言叫び絶命した。
「これで・・・一先ずは危機を脱したな」
ジョージはそう言うと、戦況を確認する為に崖下を覗き。
眼下で繰り広げられる戦いを観察する。
崖下では相変わらず、シャリルとビョルンが岩柱に。
リュージンと、もう一人はここからでは良く見えないが。
誰かが物陰に隠れて、時折、騎兵隊に攻撃を加えているのが見えた。
「誰だ? あいつは・・・」
ジョージは謎の人物が誰何かは遠すぎて確認する事が出来ず。
そう呟くと、崖下の戦闘の観察を続けた。