窮地を救ってくれた二人の英雄って誰だ?
「狙うわよ・・・」
小さい声で、そう呟くと。
小柄な陰は、短弓を構えて敵を狙い的を絞る。
そして、矢を射ち放った。
「ぐぅっ! ・・・」
射ち放たれた矢。
それは、シャリルとビョルン達に迫るパヴィスを構えて前進を続ける三人の男達の内。
一人の脇腹に当たり。
男は体勢を崩して、暗く深い崖の底へと落下して行った。
「なっ!」
「敵の増援っ!?」
パヴィスを構えていた残りの男達。
連中は、突然の襲撃に混乱して大きな隙を作ってしまう。
連中は、新手の増援が来たのだと思い、慌てふためく事しか出来なかった。
「誰かが助けてくれたの? それよりは敵にっ! サンダーショット」
「いったい誰が? ・・・はっ! 大変だ反撃しなきゃっ」
『ドドドドドドドドドドドドドーー』
シャリルの雷撃魔法と、ビョルンの音波魔法。
二人に魔法で反撃された残りの七人は連携が乱れ。
体を魔法に貫かれてしまい、一方的に攻撃を受け続けてしまう。
「うわあぁぁっ!」
「ぎゃああぁーーーー」
「ぐっ! ・・・がはっ?」
彼等人間達は、それぞれが魔法に当たり。
血を流しつつ石橋の上に倒れたり。
叫び声を上げながら、崖の底へと落下して行き全滅する。
「誰か分からないけれど感謝しないと」
「でも・・・いったい誰が僕達を?」
二人はそう言うと、他の場所で苦戦する仲間達に目を向け。
仲間達を助けるために、援護しようと魔法攻撃を始める。
「さあ、ビョルンッ! 苦戦しているアレリオとニウを助けましょう、サンダーショット、サンダーショット」
「はいっ! シャリルさん」
『ドドドドドドドドドドドドーー』
二人は、アレリオとニウ達に戦いを挑む、騎兵隊員と傭兵達に向けて魔法を放った。
その援護を受けた、アレリオとニウ達は。
「ぐうぅぅ・・・もう駄目か・・・!?」
「殺? ら・・・れるっ!?」
二人は人間達の猛攻に劣勢に追い込まれ。
二度目の戦死を覚悟していた。
だが、彼等の窮地を遠くから飛んできた、雷撃魔法と音波魔法が救ってくれた。
「奴等が後ろからっ!?」
「隠れろっ殺らっ!・・」
アレリオに襲い掛かろうとしていたウォーハンマーを構えた重戦士。
彼が、そう言って身を隠そうと仲間に伝えるが。
ニウを射ち殺さんと。
クロスボウを構えた弩兵は、雷撃魔法が直撃して感電死してしまった。
「シャリルが助けてくれたのか? ならぁっ! 反撃だーー」
「アタシも負傷したって、反撃は出来るのよぉーーーー」
アレリオとニウ達はそう叫ぶと反撃に移る。
アレリオは逃走を図ろうとする重戦士を、背中からモンタンテで斬り捨てる。
ニウは目の前に立つ、ラッパ銃を装備した銃兵より先に動き。
奴が、腰のベルトに挿した拳銃を取り出そうとする前に、胯間に蹴りを入れる。
「ふあああーーーーーー」
叫びながら倒れた銃兵。
それに目もくれず、一目散に逃走を図った剣士。
彼も、横から来るビョルンの機関銃のように連射される音波魔法に射たれ。
呆気なく絶命してしまった。
「ふぅ~~こっちは片付いたな・・・」
「やっと、一段落ついたわね・・・」
アレリオは、遺跡の壁まで歩いて行くと壁へもたれ掛かり。
ニウは遺跡の陰で、ヘタり込んでしまった。
二人は後に、そこから敵の様子を伺って、再び此方に敵が来ないように階段を登り。
後退して遺跡の陰に身を隠して待機した。
一方・・・。
遺跡の物陰に身を隠して、敵の集中攻撃に耐えているリュージンはと言うと。
「くぅ~~敵の攻撃がしつこ過ぎるわい」
そう言って、物陰に身を隠しているリュージンを狙い。
騎兵隊員と傭兵達の火矢と魔法と銃弾が火を吹き。
仮染めの命を奪おうと、雨霰の如く放たれていた。
「救援だぁーーーー」
そんな中、野太い男の大きな声がトンネル内に雷の様に響き渡り。
リュージンも、騎兵隊の人間達も驚く。
『ドォーーン』
男の声を聞いた、リュージンと騎兵隊員達。
連中は、騎兵隊の方の味方が現れたと思ったが。
銃撃は、リュージンではなく。
遮蔽物に身を隠している、騎兵隊員と傭兵達の方へ大きな音を立てて飛んでいった。
飛んで来た銃撃の弾は、銃弾ではなく石を丸く削った玉であった。
それは、遮蔽物を貫き身を隠している騎兵隊員の一人に命中して撃ち殺す。
「人間の味方ではない・・・?」
リュージンが振り向くと。
こちらへと向かって来る、一人の大柄な男の姿が目に入った。
「ようっ! アンデッドさんよっ!」
大柄な男は、リュージンの身を隠している遺跡の物陰まで来るなり。
そう喋って、素早くリュージンの隣に座り身を隠す。
「おっ! お前さんはっ!? ・・・」
「俺もあんたらの仲間入りしたんだぜ」
驚いた表情を顔に浮かべるリュージンの前に現れた大柄な男の正体。
それは、何と死んだ筈の魔物猟師のカブラルであった。