作戦を立てたら準備に掛かれ・・・
「で、奴等はここを通るとして、遺跡と崖の上には俺とミリカが、騎兵隊の真正面からはアレリオとニウが、後方はリュージンが奴等の退路を塞ぎ、崖の柱からは、シャリルとビョルンが魔法で援護を」
ジョージは作戦内容を仲間の皆に説明し。
それぞれの配置場所を指を指して教えて行く。
「んで・・・今言った作戦内容に質問は有るか?」
「はいっ! リーダー商人から買い取った武器はどうしますか?」
ジョージの作戦説明に対し。
ニウは買い集めた武器の事が気になり質問をした。
それについての説明を、彼は始める。
「武器の火焔瓶と煙玉は俺とミリカのペアと、アレリオ・ニウ、お前達のペアで半分づつ分け合って使う・・・そして火焔瓶は四個づつに、煙玉は二つ、にしてそれぞれのペアが騎兵隊が来たら一斉に投げつけるんだ」
更に、ジョージは仲間達へと詳しい作戦の説明を続ける。
彼の指示により、仲間達には役割が与えられる。
「リュージンには前に使ったトラバサミを奴等が来た時に備えてアレリオ達の手前に仕掛けて置いて欲しい・・・簡易地雷は奴等が後方に撤退しようとしたら地面に投げつけて奴等の足元で派手な花火を咲かせてやってくれ、説明は以上だ・・・」
「リーダー、飲み終えた空の瓶も有りますが、それも上から投げつけて武器にしては如何ですか?」
ジョージが作戦内容を仲間に伝え終えると。
シャリルは頭に妙案が浮かんだので、それをリーダーである彼に提案してみた。
「あぁ・・・それは良いアイディアだな、よしっ! 数本、空の瓶が有るからそれを使おう」
良い提案だと思ったジョージは、シャリルの案を採用した。
こうして、作戦は決まり、後は騎兵隊を待ち構えるだけと成った。
「で? ・・・奴等はいつキャロルちゃんを連れて来てくれるの・・・」
「それは・・・分からん・・・来るまではいつまでも、いつまでーーも、待つしか無いな」
獲物に定めたキャロルが気に成って仕方が無いミリカの質問。
それに、ジョージはそう答えるしか無かった。
「では、時間までに移動を開始して、そこで敵が来るまで待機しますか?」
「それしかないな・・・」
ビョルンの提案に、ジョージは賛成した。
そして、彼等は各々の配置について食事をしながら待機する。
食事を終えた、ら遠くから声を掛け合いながら互いに交代で就寝と見張りを続けた。
その後・・・。
指示通り、ジョージとミリカ達は遺跡の階段を登り崖の上に陣取る。
リュージンも、二人の側で騎兵隊が来るのを待機して待つ。
アレリオとシャリル達は、遺跡の陰に隠れ。
階段に座って食事をしたり、地面の石畳の上で就寝しながら待つ。
シャリルとビョルン達は、くり貫かれた螺旋状の道がついた、岩の柱の穴に隠れ。
敵が来るのを監視して待機した。
一方、その頃・・・騎兵隊は・・・。
太陽の熱い日差しが照りつける真昼の海岸の崖沿い。
その道を騎兵隊は馬に跨がり疾走して行く。
騎兵隊は、途中で補給の為に寄った各地のキャンプ地や交易所、等。
そこで加わった商人達とその護衛の傭兵。
この島で採取された魔物の角や鉱石。
それと、大陸まで運ばれて行く負傷者を乗せた馬車が加わり。
大規模な一団と成って。
ジョージ達アンデッドの待ち構えるトンネルまで向かっていた。
騎兵は二十人。
馬車は四台。
その中には、重症を負った負傷者が十二人と、中で待機している傭兵達が十七人。
馬車の幌や、屋根の上で警戒に当たる傭兵が、一台の馬車につき二人。
それぞれの馬車の上にいる傭兵を合わせると、合計八人は居た。
そして、騎兵隊は全体で、戦闘を行える者を合計すると。
四十五人の戦闘員が居る事に成る。
その中には、馬車の上で警戒に当たる幼い子供の姿もあった。
(・・・奴等は必ずやって来る・・・私を殺しに・・・師匠を仲間に変えた様に私も奴等の仲間に・・・そんなのは絶対に嫌だ・・・)
キャロルはそう考えると。
恐怖と嫌悪と悪寒の感情が入り雑じり。
体がぶるぶると震え、両手で自らの体を抱き締める。
鳥肌の立つ腕に力を入れて、視線を海の方へ向ける。
「私は絶対に殺されない・・・奴等は私が逆に殺してやる・・・」
か細い腕の少女はふと気づくと、そう呟いていた。
騎兵隊が、ジョージ達の待ち構えるトンネルへ着くのは後少しの日数であった。
そして・・・その日の時刻は深夜、辺りは暗闇と静寂に包まれる中。
山岳地帯を歩く、謎の二人の人物達の陰があった。
「待って居て下さい・・・私達も永遠の死出の旅にお供させて頂きますよ・・・」
「未来永劫に渡って朽ちる事の無い新たなる肉体と人間を超えた力与えて下さり感謝します」
謎の小柄な人物。
大柄な人物。
二人はそう言って、夜の闇の中を歩き。
ジョージ達アンデッドの向かった、トンネルを目指して行く。