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夜だっ! この島の東端・・・


『ジョージ、ジョージ? 起きなさい』


『うるせっえっ! クソババアっ?』



「ん? ・・・何だ夢か」


 ジョージは目が覚めると、夢の内容を詳しく思い出し考える。

 それは、異世界とは違う本来の世界の夢の事であった。



(・・・向こうの世界の事を夢で思い出して見たのか? ・・・)


 じめじめとした静寂に包まれる穴の中。

 ジョージはそう考えると立ち上がり、穴の外を目指して歩く。

 ジョージは隣で寝ているミリカを起こさないように気を使い。

 そぉ~~と歩いて行き、穴を塞いでいる土を被った幕をどけて外に顔を出す。



「んんーー? 敵は居ないな? 昨日の二人はどうなったかな?」


 ジョージは歩き出し。

 カブラルとシニッカ達の入った、卵と玉の置かれている穴の奥まで歩いて行き。

 二人の様子を確かめる。



「まだ出て来ないか・・・」


 そう一人言を呟くと。

 ジョージはまた外に出て、月明かりに照らされた夜空を見上げる。


 月の回りの雲は光りで照らされ淡い青色に染まり。

 その外側の雲は紺色に染まり風で微かに移動して行く。

 ジョージは、それを眺めて飽きると辺りを見回す。


 月明かりに照らされた夜空とは、対照的に辺りの静寂に包まれた大地を支配するのは。



「毎度お馴染みの殺風景な灰色の死を象徴する世界の景色・・・」


 一人そう考えていると、誰かが後ろの穴からヒョッコリと顔を出す。



「ジョージ・・・」


 顔を出したのは、ミリカであった。



「ミリカ眠れないのか・・・?」


「ちゃんと蓋にしている幕を穴に被せて置かないから風が穴の奥まで吹いてきて眠れないのよ」


 顔を出したミリカは穴から這い出ると。

 穴の入り口に幕を張り、土と小石を被せて、蓋を閉め直すと、ジョージに向き直る。



「こんな夜更けに、一人で何をしているの? 一人で寂しいのなら、私が貴方の相手をして上げましょうか?」


 ミリカは何時ものようにジョージをからかい彼の腕に笑顔で抱き付く。

 それは、まるで親しい恋人の様であった。



「いや、今は良い・・・そんな気分じゃあないんだ・・・・・・」


「どうしたの? 顔色が悪いわよってゾンビだし、それはいつもの事ね・・・」


 ジョージとミリカ達は二人で並び。

 地面の岩に腰掛けて、座り込み話しをした。

 そして、二人は夢の事を話し合う。



「何? 何か悩みでも有るの?」


「いや、実はさ・・・夢が」


 ミリカの問いに、ジョージは語る。

 本の少し一瞬だが、向こうの世界を夢の中で見た事を。



「って事だ・・・」


「はあーーそれで向こうでの生活を少しだけ思い出して、ホームシックにかかったのね」


 ジョージに夢の内容を話された、ミリカは、彼の体を後ろからそっと優しく抱いた。

 そして、母親が頭を子供をあやす様に撫でる。



「よぉーーし、よし、ジョージ君は昔の事を思い出して悲しい気持ちになってしまったのよね」


「ミリカ、そう言う悪ふざけは止めろ」


 ジョージの後ろで眼を瞑り耳元で静かに囁く。

 ミリカに、彼は止めろと言ったが。



「ふざけて何か居ないわよ・・・それとも嫌?私の事嫌い? ・・・グスッ」


「それもふざけて・・・!?」


 泣き始めたミリカに、どうせ嘘泣きだろうと思うジョージであったが。

 彼女は本当に涙を流し泣いていた。



「ジョージは本当に私がふざけていると思って居るの?」


「ミリカ・・・済まなかった君が本当に俺の事を想って居てくれたのに気が付かなかった」


 泣いているミリカに、ジョージは困ってしまい。

 済まなかったと言って頭を下げて謝るが。



「じゃじゃーーん、涙を流したのは嘘でしたぁ~~」


「この、アマッ!?」


 ミリカとジョージ達はそう言って争うが。

 彼女の流した涙が、本物であった事は彼にも分かっていた。


 ミリカも、ジョージと同様に訳の分からない世界での連日連夜の激しさを増す戦い。

 それと険しい長旅に、精神が疲れはて。

 心の支えと自らを癒してくれる相手を欲していたのだ。



 その後、仲間達は全員起きてきて、並んで岩に座るジョージとミリカ達に挨拶をする。



「リーダー、ミリカ様、お早う御座います」


「リーダー、お姉さま、お早う御座います」


 アレリオとシャリル達は眠りから起きると、穴から這い出て来て二人に挨拶をした。


 他の仲間達も、ぞろぞろと穴から這い出て来るが。

 昨晩アンデッドに変える術を掛けた、カブラルとシニッカ達は起きて来なかった。



「あの二人はまだ起きないな・・・心配だな・・・」


「仕方ないわねぇ? 置いてきぼりにしましょう」


 ジョージとミリカ達は、起きて来ないカブラルとシニッカ達が、目を覚まし。

 穴から這い出て来る事を期待したが、二人は全く起きて来ない。



「あの二人は地面に隠しているし、太陽の光の心配もいらないから放って置いてめ無事よ」


「まぁそうだな・・・ラッパ銃と弓もあるし、起きたら狩りでもして暮らして行けるだろう」    


 ジョージとミリカ達は、武器で話し合い。

 カブラルとシニッカ達を、置いて行く事に決定する。



「んじゃ、みんな取り敢えず、東のトンネルまで一直線に突っ切るぞ」


 ジョージがそう言うと、先頭を歩き出して仲間達もそれに続く。

 先頭を歩く、彼の傍らには、ミリカが寄り添う様に歩いていた。



『ボゴッ!?』  


 そうして、ジョージ達アンデッド達は歩いて行ってしまい。

 暫く時間が立った後、谷間の地面から、か細い女性の腕が一本出てきた。

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