柩の中には?
祭壇の上の四角い灰色の柩。
それの中身を確かめようと、ジョージ達は柩を開けようとする。
「アレリオ、そっちを頼む? リュージンはそこを、ビョルンはあそこの角を」
「はいよっ! リーダー」
「リーダー殿、こちらも準備は出来てますじゃ」
「こっちも、いつでも持ち上げられますよ」
リーダーである、ジョージの下した指示。
それで、アレリオ、リュージン、ビョルン達は柩の蓋を持ち上げて中を確認する。
重たい蓋を四人は力を合わせ。
梃子の原理で退かして見ると、その中には何も入って居なかった。
「はあっ? 何も・・・無い・・・」
「有りませんね・・・」
「中身はどこへ・・・?」
「アンデッド化して歩き出したのかも」
ジョージとアレリオ達は、唖然とした表情で。
リュージンとビョルン達は、キョトンとした顔で言った。
「ねぇねぇ、この柩の中から何か風が吹いて来るよ」
「ミリカ、ほんとか?」
ジョージは、ミリカの言うことを試し、柩に手を入れる。
すると、柩の底から微かだが、確かに風が吹いて来ていた。
「本当だ、この柩は隠し階段の偽装だったのか?」
「でも、何でこんな所に隠し階段何て有るの?」
「皆さん、とにかく先に進みましょう」
「そうしないと、騎兵隊に先回り出来ないわよ」
ジョージとミリカ達が、不思議がっていると。
シャリルとニウ達は、先を急ごうと他の仲間達を急かした。
「ま、二人の言う通り行って見るか」
「そうね、行って見たら宝でも有るかもね」
ジョージとミリカ達は、そう言って柩の底を持ち上げた。
柩の底の偽装蓋は、二人で持ち上げられる程に軽く。
中には、下の階層へ続く階段が伸びていた。
「皆、行こう」
ジョージは、そう言って階段を下りて行き、皆も後に続く。
階段を下りると、そこは非常に巨大な洞窟の中であった。
ジョージとミリカ達がアンデッド化した迷宮と同様に。
ここの迷宮も所々に遺跡の建物や瓦礫が散乱し。
それに加え、地形の起伏は激しく。
大きな岩石や盛り上がった土の山と湧水の流れる溝。
これ等の様々な障害物が複雑に入り雑じった場所であった。
勿論、ここにも魔物は沢山生息している様だが。
どの魔物も、弱そうな魔物ばかりだった。
「ネズミ、アリ、コウモリ、モグラ」
「ウサギ、キリギリス、蛾って何か強そうな魔物はあんまり居ないね?」
ジョージとミリカ達はそう言って洞窟の中央の道を歩く。
巨大な洞窟は、どこまでも暗い闇に包まれ。
湧水と魔物の鳴き声以外は、静寂に包まれていた。
「リーダー殿、付け狙われておりますぞ」
リュージンはそう言って話しかけて来た。
彼は、平然と敵に気づかぬ表情をして道を歩く。
「敵か、敵は何だ・・・リュージン?」
「分かりませぬ、ただ・・・少し強そうな魔物で有ることは確かですな、数は十匹程・・・」
ジョージがそう聞き返すと。
リュージンは目を閉じて、此方の様子を伺う敵の魔物の足音に耳を傾ける。
「リーダー、どうしたのですか?」
「いったい何が?」
シャリルとアレリオ達は、ジョージに質問する。
背後に気を配り、様子を伺う彼に何か異変を感じたのかと。
「二人共、敵だ・・・静にしろよ気づいていない振りをして・・・」
「了解、リーダー」
「はい、リーダー」
ジョージが背後に気配を配る理由を伝えると。
訳を理解したシャリルとアレリオ達。
二人は、背後から後を着けて来る謎の何者か達を経過し。
その者等に気取られぬよう、小さな声で静に返事を返した。
「リュージン敵はどこから来るの?」
「ミリカ殿、奴等は二手に分かれ左右から我々を挟撃する様ですじゃ」
ミリカが敵の居場所を聞くと。
リュージンは、目を閉じたまま敵の隠れつつ進んで来る道を答えた。
「皆・・・俺が行くぞっ! って、指示を出したら奴等に攻撃するぞ、アレリオとシャリル、リュージンは右側面に、ミリカとニウ、ビョルンは左側面に攻撃しろ」
ジョージは指示を出した後。
顔を前方に向けたまま視線を左右の瓦礫や岩に配ると。
人間のような怪しい影が、自分達を追跡しているのが見えた。
「よしっ! 今だあっ! 行くぞーーーーダークボール」
ジョージは暗黒魔法を、右側の瓦礫に身を隠す、謎の敵影に向かって放った。
先手必勝の一撃は、真っ直ぐ飛んでいく。
「グワァッ」
謎の敵は、暗黒魔法の吹き飛ばした瓦礫の破片が頭に刺さり。
余りの痛みに、奇妙な声を上げた。
「フレイムボール、フレイムボール」
ミリカも、火炎魔法を放ち。
左側の岩影から此方の様子を伺い観察していた敵に当てる。
それを彼女は、凝視する。
「ギアッ!」
謎の人影の魔物は右腕が燃え上がり、その身を炎に照らされ晒す。
炎で明るく照らされた肌は、ゴツゴツとしている。
肌の色は胡瓜のように濃い緑色。
目はアーモンド型の形で、瞳は蛇の眼の如く縦に線が入る。
口は長く前に伸びていた。
その正体は、亜人種リザードマンであった。