生き残った捕虜を騙す・・・
生き残った商人のファレドとヴラウリオ達は、唖然と立ち尽くす。
「くっ! くそ~~~~!!」
ヴラウリオは、ブロードソードを構え剣士を目掛けて走って行く。
ヴラウリオが剣士に斬りかかる。
剣士は、それを長剣で受け止め。
左手で、ヴラウリオのブロードソードを持つ手を押さえる。
「くそっ! 放せっ! 放せぇーー」
ヴラウリオは反対の手で剣士の顔を殴る。
だが、剣士の顔はまるで骨の様に硬く。
殴っても殴っても全然痛くは無いようだった。
剣士に掴まれたヴラウリオのブロードソードを握った手が、彼にねじ曲げられ。
どんどん彼の喉元に、ブロードソードの切っ先が迫る。
「くそっ! 何で・・・嫌だっ!」
そして剣士は顔をヴラウリオに近づけて、彼の目を覗き込む。
すると・・・。
「ひいぃっ!?ばっ化け物っ?」
ヴラウリオは悲鳴を上げる。
(・・・いかんっ! このままでは彼は・・・)
『カチッ・・・バンッ』
ファレドは勇気を振り絞り、恐怖で動かない体に力を入れる。
剣士に、フリントロックピストルを向け引き金を引き一発の銃弾を発射する。
バンッと大きな音と発射炎を、銃口から勢い良く噴射して飛び出た銃弾。
それは、剣士の顎を正確に当たり撃ち抜いた。
「あっ! ああああ~~~~」
『ザシュッ』
剣士はそれを気にする事もなく、ヴラウリオの喉を彼のブロードソードで切り裂いた。
すると剣士は、今度はファレドを標的に定め、ゆっくりと向かって来る。
(・・・なんだ!? こいつら・・ただの盗賊じゃないな・・・)
ファレドは、焦りながらそう思った。
(・・・今生き残ったのは・・・俺一人だけだ・・・)
ファレドの額から冷や汗が流れる。
夜空が晴れて来たのか月明かりが、剣士の姿を鮮明に晒す。
「あっ!? 奴らはアンデッドだったのか、道理で敵わない訳だ、だが負けるわけにはいかっ!!」
『ゴンッ』
ファレドの頭の後ろで鈍い音がした。
「うっ・・・」
ファレドは、後ろから殴られて気を失った。
「こいつは後で、情報を得る為に生かしておきましょうか」
シャリルは倒れている、ファレドを見下しながらそう言った。
「はっ! ここは・・・?」
ガバッとベッドから身を起こして、辺りを確認するファレド。
「大丈夫ですか?」
「あっ! 貴女は?」
大丈夫ですかと声を掛けたシスターに彼は驚く。
「私は旅のシスターでシャリルと申します・・・旅の途中でこの交易所から悲鳴が聞こえたので私達のパーティが駆けつけたところ、アンデッドが暴れていたので全て倒しました」
「そう・・・ですか私の仲間達は? シャリルさん、他に生き残った者は居りますか」
シスターは名をシャリルと名乗り、交易所に来た経緯を話す。
ファレドは、シャリルに他の生存者の事を心配して聞いたが。
「残念ながら他の方々は・・・」
「そうですか・・・」
目を瞑り、無念の表情を浮かべて静かに話す、シャリル。
彼女の顔を見たファレド。
仲間が既に亡くなっている事を察した彼はそうですかと短く答えた。
「どうか、気を落とさないで下さい」
シャリルは、ファレドの手を両手で握り優しく語りかけ、彼の瞳をそっと見つめる。
「貴方と私が出会ったのも、何かの縁・・・これからは私達のパーティと共に行動を共にしましょう」
ファレドの瞳を見つめながら、優しく微笑み、パーティに誘うシャリル。
「シャリルさん・・・気を使ってくれて有り難う御座います」
彼は、そう恥ずかしそうに答えた。
「くそっ! あの野郎、もう我慢できねぇ」
「駄目っ! あんたは骸骨なんだから今出て行ったら、うちらの正体がバレるってっ!?」
小屋の外から、アレリオとニウ達が隠れて扉の隙間から中を覗いて言い合っていた。
「知るかっ! 叩っ切ってやるっ!」
「ちょっと、アレリオ待ちなさいっ!」
アレリオは、扉を開けて中に飛び込もうとして、ニウに体を押さえられる。
「黙れ、ニウッ!」
アレリオは、ニウを振りほどき中に突入しようとするが。
「何か聞こえましたね?」
「えっ! シャリルさん、聞こえましたか?」
中に居るシャリルは、不審な物音に反応した。
ファレドは物音に気がつかない。
彼女は扉に歩いていくと、扉を開きアレリオに話し掛ける。
「アレリオ、黙っていて今情報を聞き出すから」
シャリルはそう言うと、また小屋の扉を閉めて、ファレドの所に戻って行った。
「シャル、君がそう言うなら・・・」
「やっと怒りが収まったのね、はあ~~」
アレリオは言われた通り、待つことにした。
ニウは彼を押さえるのに疲れ果て、一言だけ呟いて、溜め息を吐いた。