餓えと渇きには逆らえない・・・
ビョルンの目の前で、水筒の蓋をくるくると回し。
蓋を開けて、ブラッドカクテルの血の匂いを嗅がせるニウ。
「うふふっ? 良い匂いでしょ~~ビョルンっ♥」
血の匂いを嗅がされた、ビョルンは。
「ぐっ!?」
(・・・良いっ!? ・・・匂いだっ! ・・・甘く! 濃密な香りが? ・・・頭をっ! ・・・変にっ!? してくっ! ・・・れ・・・そうだ? ・・・)
ビョルンの思考はブラッドカクテルの甘い香りに負けてしまい。
麻薬を吸い込んだように段々と霞んで行く。
「ビョ~~ル~~ン、美味しい血の匂いを嗅がされた気分はど~~おぉ~~?」
「あっ! あ、ああ・・・ニっ!? ニウ・・・きっ! 気分がっ! と・・・ても? 良いんだ?」
ビョルンはニウに気分はと聞かれたが思考は霞み。
麻薬中毒患者のように、口から涎を垂らし、途切れ途切れに質問に答える。
「ふぅ~~ん、じゃあこれは欲しいのよね?」
「やっ!? ややめろ、嫌だっ! それを飲めば人間っ! じゃなくなる」
ニウの欲しいかとの問いに、ビョルンは必死に嫌がるが。
(・・・僕はっ!? 本当はっ? 欲しい・・・欲しイ・・・欲シイ・・ホシイ!? ・・・)
「そうっ? ・・・そんなに嫌がるならあ・・・あ~~げないっ♥」
「ぐっ! ニウ、ま、待ってく・・・れ・・・」
ブラッドカクテルをあげないと言ったニウ。
彼女は、悪戯っ子ぽい笑顔をビョルンに向けると。
彼は、待ってくれと言い出した。
ビョルンの脳と精神は、既に麻薬に犯されてしまったかの如く。
ジョージとミリカ達の血液に感染しきっており。
血の匂いを嗅いだ事により。
最早人間の血液を飲みたいという欲求には逆らえなく成っていた。
「んんっ? 何かなぁ~~?」
「ニウッ! ・・・頼・・・む・・・そのブラッドカクテルを飲ませてくれ・・・」
ビョルンは、ニウに対して、ブラッドカクテルを飲ませてくれと頼んだ。
遂に、彼の精神も体も魂までもが、アンデッドの甘く危険な誘惑に屈してしまった。
「頼むっ! ・・・ニウ? 餓え・・・と喉の渇きが酷いんだ・・・まるで・・・喉が焼ける・・・ように渇くんだ・・・」
「ええっ? ~~でも、さっきさぁ~~嫌だって言ってたわよね? アタシにはそう聞こえたんだけどぉ?」
ブラッドカクテルを飲ませて欲しいと頼むビョルン。
彼を、ニウは意地悪にからかう。
「そっ! そんな・・・くれっ!? くれよっ!! 頼むっ! ニウ・・・とっても辛いんだ・・・」
目に涙を浮かべて懇願するビョルンに対して、ニウは。
「ビョルン・・・そんなに欲しいのね・・・なら上げるわ、はいこれを・・・」
「ニウ、くれるのかい」
ニウは、ビョルンに対して、ブラッドカクテルを飲ませようとし。
右手に持つ、水筒の口を彼の目と鼻の先に近づけ、左手で扇ぎ匂いを嗅がせる。
「良い匂いが、頭の中に入って来るでしょう~~」
「ああっニウ・・・良い匂いだぁ・・・早く飲ませてくれ・・・」
ニウは、ビョルンに水筒の中のブラッドカクテルの匂いを嗅がせるが。
ブラッドカクテルを飲ませようとする振りをして、彼から水筒を放してしまう。
「ああっ! あ・・・ニウ、何で飲ませてくれないんだっ! 人間なんて、やめるから、お願いだっ! ニウッ!」
「焦らないでっ! 誰も上げない何て言ってないでしょ、ほらっ! こうしてね・・・」
ニウは、ビョルンの唇に人指し指を当てて落ち着かせ。
自分の胸元に、ブラッドカクテルを垂らし始めた。
胸元に垂れ流れる赤黒いブラッドカクテルは、胸の谷間からお腹のヘソに流れ落ちる。
「ふふんっ♥」
その流れ落ちるブラッドカクテルをニウは体中に塗りたくる。
腕から首筋に、赤黒いドロリとしたブラッドカクテルが流れ。
それを塗りながら、彼女はビョルンに話しかける。
「ビョルン、さあ召し上がれっ♥」
ニウが、そう言うと。
「本当に良いんだね・・・」
ビョルンは、ニウに飛び掛かり押し倒す。
「キャッ、ビョルンッ♥」
そしてニウに抱きついて、彼女の頭を撫で、背中を擦り腕や首筋に舌を這わせる。
「ニウ、とっても美味しいよっ! 美味しくて病み付きに成ってしまうよ♥」
ビョルンは完全に狂い。
ニウの体に、かかっている血と酒の混ざったブラッドカクテルを舐め回す。
「キャッ、ちょっと、ビョルンッ! くすぐったいっ!?」
その光景はまるで、小柄な女性を黒い悪魔が犯す様であった。
「ビョルンッ! アタシの事を思う存分舐めて良いのよ・・・」
ビョルンに抱きつかれているニウも、彼に抱きつき。
彼の銀髪と肩を撫で、耳元で優しく囁く。
その後。
ビョルンは、ニウの体を濡らすブラッドカクテルが無くなるまで抱きついていた。