誰かが来る・・・
「二人ともっ! 誰か来る」
フード付きのマントを羽織った謎の女性らしき人物は、そう告げた。
「分かったよ、ザリーン君はそのまま見張りを続けてくれ」
カマルは謎の女性をザリーンと呼ぶ。
彼は体に隠し持つ、武器をいつでも使えるように白いズボンのポケットに手を当てる。
その中に有るのは、チャクラムと呼ばれる戦輪だ。
「ザリーン、ダンはどこ?」
「ダンは隠れて山道を登る二人組を監視してる・・・」
カマルは、ザリーンに対して、仲間であるダンはどこにいるかと聞いた。
それに対して、彼女は隠れて監視をしてると答える。
ザリーンは、カマルがペルシヤ王国に商売の為。
ファビアンと向かった時に、護衛として雇った女性だ。
山賊や魔物との戦いでは、凄まじい戦闘能力を発揮した。
(・・・その戦い方は凄かった・・・常に戦闘では活躍し・・・シャンビーヤナイフを敵の喉や目を斬り裂き・・・駆け出しながら小型のスローイングナイフを次々と迫りな来る敵に連続で投げつけ殺しまくる・・・その様は・・・まるで一方的な虐殺の様であった・・・)
姿は宗教上の理由の為に、あまり表に表す事はめったに無いが。
数回だけ、見たがある。
雇う時に顔を見せてくれと頼んだがフードを取り顔をチラリと見せたが・・・。
その下は、またヒジャーブを被り、素顔は見えなかったが。
戦闘で、フードとヒジャーブが強い強風で飛ばされた時、素顔が露に成った・・・。
その顔は、漆黒の黒髪をショートヘアにしていた。
前髪は、揉み上げのみ顔の左右から首元まで伸ばし、金の髪飾りを着けていた。
顔つきは、白みがかったベージュ色の肌。
目は、黒い真珠と緑のエメラルドの中間の様な瞳をしていた。
その瞳は、鷲を思わせる猛禽類の如く強い視線を敵へとに向けていた。
カマルは回想する。
(・・・ダンはどこをどう通って来たのか分からないが? 遠く離れた場所にある北インディアナ大陸から来たらしい・・・)
彼は長い黒髪を両肩から垂らす、赤茶色の肌の体格の良い大柄な男だ。
顔立ちは、黒い瞳に、痩せこけた精進な顔つきだ。
頭に、黒いバンダナを巻き、そのバンダナの左耳の部分に鷲の羽を二本差していた。
服装は、袖に赤い紐を沢山付け、赤い水玉模様の入った白い服を着ていた。
下には、水色のズボンを履き。
靴は、毛皮で出来た、モカシンと呼ばれる靴を履いていた。
武器は、トマホークを片手に持つ。
戦闘では常に前に立ち、カマルとファビアンを守る楯の役目を果たしていた。
そのダンが、走って戻って来るのが見えた。
「来るぞ」
ダンは、カマル達の所に戻って来てそう言った。
「ダン君は隠れて待機していてくれ、もし戦闘が始まったら直ぐに駆けつけてくれよ」
「分かった、何か異変を感じたら直具に駆けつける・・・」
カマルは、ダンにそう頼むと、彼は分かったと言ってテントの中に隠れる。
「さて・・・君は僕と一緒にいてくれよ・・・ファビアン」
「はいはい、こちらに来る連中が敵だったら私が銃をぶっぱなして頭を吹き飛ばしてやるさ」
カマルは、ファビアンに護衛を頼む。
それを聞いた、彼女はこちらへ来る者が敵ならば殺すと意気込む。
そして、二人が肉を焼いている焚き火の場所に何者かが近づいてくる。
「あの・・・こちらのテントには商人は居ますか? 我々は旅の者で薬を探しておりまして・・・」
「魔力が底を付いてしまいましての魔力補充薬が欲しいのですが・・・どなたかお持ちで御座いましたら、売ってはくれませぬか」
カマル達のテントに近づいて来たシャリルとリュージン達。
彼等は立ち止まると、そう言ってカマル達を安心させようとする。
「僕は商人だ・・・魔力補充薬なら幾つか在庫がある、幾ら欲しいんだ?値段は瓶一つで25コインだ」
カマルがそう言うと、シャリルとリュージン達は。
「有り難い、25コインなら四本買いましょう」
「他には回復薬や包帯等は有りますかな?」
シャリルは、魔力補充薬の購入を決意し。
リュージンは、他のアイテムを購入したいとカマルに聞いた。
「待ってくれ・・・最近この付近の中規模のキャンプ地がアンデッドに襲われてそのアンデッド達の中には女性僧侶と黒い格好の若い男が居たと噂で聞いている」
カマルはそう語る。
「君達の特徴はかなり噂と一致している・・・これはどういう事かな」
カマルは、ズボンのポケットからチャクラムをいつでも投げつけられる準備をする。
ファビアンもスナップハンスロック式銃をいつでも、撃てるように両手を構える。
シャリルとリュージン達を標的にしてだ。
そこに。
『スタッ』
「カマル、ファビアン・・・コイツらから血の匂いがする」
ザリーンも馬車から降りてきて、こちらを睨む。
「ふふ・・・バレてしまいましたね」
「どうやら、その様ですな」
シャリルはメイスを構え、リュージンは偃月刀を構える。
そして、リュージンは・・・。