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山の上のテントの商人と仲間達


 山の上のテントには、四人の人間と物資が満載に積まれた馬車が一台止められていた。



「カマルゥ~~飯はまだかいぃ~あたしゃぁもう腹ペコダよぉ~~」


 火縄銃を手に持つ、黒い肌の女性。

 彼女は、後ろのテントの前で薪をして、魔物の肉を焼き上げる青年に声を掛ける。



「後は焼き上がるのを待つだけだから少しは黙って居てくれ」


 カマルと呼ばれた青年。

 彼は、火縄銃を手に持って山の崖っぷちの前に立ち女性。

 見張りに就いている彼女に対して、まだ待ってくれと言い返す。



「君は他の二人と違って、よく文句を言うね、ファビアン」


 カマルは、ファビアンと呼ばれた黒い肌の女性に対し。

 そう言うと、再び串に指した魔物の肉を焼く。



「だってよぉ、カマルゥーー腹が減ったら見張りは出来ないだろ~~」


 ファビアンは、カマルにそう言って右手に銃を持ち。

 左手で腹を擦り、如何にも腹が減ったと見せ付ける。



「ファビアン、これ上げるから今は我慢してくれ」


 カマルは、懐から取り出した牛の燻製肉を二枚、ファビアンに投げて寄越す。



「ありがとっ! カマルゥ~~♥」


 ファビアンはそれを左手で受け取り早速、口の中に入れて噛む。

 すると、口中に薫製肉の味が広がる。



「あむあむ・・・あむ・・・くぅーー? 美味いっ♥」


「君は食べ物さえ有れば幸せなんだね・・・ファビアン」


 燻製肉を物凄く美味しそうに食べるファビアンに対し。

 カマルは、飽きれながら言ったのだった。


 そして、カマルは思い出す。

 彼が街道筋を通る道の途中で魔物に襲われていた時の事を。



(・・・あれは確か・・・)


 カマルは町から町へと物資を運んでいた時。

 三匹の暴れ森林猿が突如現れ、カマルの馬車を襲う。


 その時、森の林の中から不意に奇襲を掛けられたカマルは驚き動揺してしまう。


 その隙に、二匹の暴れ森林猿たちはカマルの馬車から物資を盗む。

 更に、一匹の他の暴れ森林猿より体格の良い、暴れ森林猿が現れ。

 奴は、カマルに飛び掛かって襲い掛かる。



「うわああぁーーーーーー」


『バンッ・・・』


 カマルは大声で悲鳴を叫ぶと、何処か遠くから銃声が一発鳴り響き。

 弾丸が森林の中を掠める。



「キッ・・・」


 カマルに襲い掛かろうとしていた暴れ森林猿は一言発し。

 そのまま、前のめりに倒れ崩れる。



「うおぉ~~~~」


 叫びながら一人の肌の黒い女性が剣を構え走って来る。

 女性はそのままの勢いで、暴れ森林猿を切り捨てる。



「ギャーーーー」


「二匹やった、後は一匹だけっ!!」


 肌の黒い女性はそう言うと。

 残り一匹の暴れ森林猿の首を剣で跳ね飛ばしてしまった。



「あっ有り難う・・・僕はカマル、行商人を営んでいるんだ、それで君の名前は?」


「私はファビアン、ご覧の通りの傭兵さ、旅の途中で悲鳴が聞こえてきたんで駆け付けて見たら、あんたが魔物に襲われてたから助けたって訳さ・・・」


 カマルは助けてくれた謎の黒人女性に名を名乗り。

 女性は、ファビアンと名を名乗った。



「あの・・・ファビアンさん、助けてくれた御礼に町まで馬車に乗っては下さいませんか」


「礼なら私を雇いな、私の銃と剣の腕は今見ただろう・・・私を雇えば魔物や盗賊に襲われた時に護衛として役に立つよ、ねっ! どうなんだい?」


 カマルは、町まで馬車に乗せるつもりだったが。

 急に、ファビアンに雇えと言われたので困惑する。



「私は猟師としても役に立つよ、獲物を捕って来るのも得意だし、獲物を仕留めたら、その皮をあんたが買い取ってくれれば良いし、肉はあんたも食って良いし・・・」


「はあ~~まあ助けて貰ったのも事実だし腕の方もかなり立つようだし・・・分かった雇おうっ! 給料もちゃんと払おう、正し、ファビアンも僕の事をちゃんと守ってくれよ」


 突然雇えと言い出したファビアン。

 彼女に対して、カマルは腕が立つ様だし。

 良いかなと思い、傭兵として雇う事に決めた。



「やったぁ、これで馬車に乗れて歩かずに済むわぁ~~」


 ファビアンは雇って貰えると聞いて笑みを浮かべ喜んだ。

 それを見た、カマルはクスッと笑った。



(・・・あれから二年か・・・此処に着てからは三ヶ月・・・)


 焚き火の前に座るカマルは、過去を回想するのを一旦止め。

 目の前の肉を焼く作業に集中する。



 カマルは、様々な国が旺盛を極めるインディ地域のマリワール地方から来た行商人だ。

 一攫千金による一族の繁栄を夢見て、この夢の島にやって来たのだ。


 彼は若く。

 頭髪は、かなりの癖毛の黒髪で七三に分けられ。

 茶色い瞳の茶黒い肌の持ち主であった。


 服装は、クルタシャルワニと呼ばれる上下白色の民族衣装を来ていた。

 白い服は豪華な装飾が施されており、装飾の部分は黄味がかった色をしていた。

 右肩からは、橙色の長い布を斜めに下げていた。



 ファビアンは、ダークネス大陸の西側地域で奴隷貿易と戦争経済で栄える国。

 ダホメイ王国から来た。

 彼の国では、彼女はゲブドと呼ばれる女戦士である。


 ダホメイの女戦士は、戦時には女兵士として活躍して、平時には猟師として活動する。


 彼女は、王国から傭兵として世界中に情報収集の為、派遣されたゲブドの一員なのだ。

 現在は、カマルに護衛として雇われている。


 ファビアンの姿はチリッとした黒い髪を、男性の様に無造作パーマウルフショートにしており。


 大きな目に潤んだ黒い瞳を浮かべ。

 耳に丸い金のピアスを填め、顔は丸い頬に大きな唇をした黒人の女性だ。

 体付きは、筋肉質で肌の色は色黒だった。


 彼女は、ボンバと呼ばれる民族衣装を着ていた。


 ボンバの見た目は。

 縦に水色と白色の線が入ったランニングシャツのようであり。

 肩の袖の部分のない、割烹着の様な服を着ている。


 その服の胸元の部分に、金のネックレスを下げ、腕には金の腕輪を付けていた。


 下は白い布に縦に赤と水色の線が互い違いに並び、赤は上から水色は下から伸びる。

 そして、互いに反対側に届く一歩手前で線が止まっていた。


 足は通常は裸足だが、この島には小石や岩が多いので、黒いサンダルを履いていた。


 ファビアンの装備は、手にスナップハンスロック式銃を持ち。


 腰に巻いたベルトには、左右に二つの予備の弾帯と。

 カタツムリ型の剣と火縄銃の掃除用具を差していた。



「・・・」


 幌馬車上の謎の人物は、何かの気配を察知して即座に動き出した。

 その人物は宙を舞い。



『シュタッ』


 灰色のフード付きのマントを羽織った女性。

 彼女が、テント側の馬車上から、飛び降りて着地し。



「二人共、誰か来る・・・」


 と、一言。

 焼き上がった串刺し肉を食べようとする、カマルとファビアン達に警告を告げた。

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