夢の中の再会
気がつくと、大きな、赤い建物の中にユールルはいた。
平屋であるが、太い柱がいくつも建ち並び、白い小石が敷き詰められた庭の真ん中には大きな池があり、水面が青い空を映している。
その池の前に、ユールルは立っていた。
見たこともないその場所を、ユールルは不思議に思って見回す。
と、
――ユールル。
自分の名前を呼ばれて、その声の主を探すと、先ほどまでは誰もいなかった池の丁度対岸に人が立っているのに気がついた。
ユールルは、その人物を見て、思わず叫びそうになる。
姉様!
しかし、声は出ず、ただ口をぱくぱくと動かしただけだった。
フィムは、美しい着物を着ており、頭には細かい装飾の金色の飾りをつけている。
祈りの巫女の姿だ、とユールルは思った。
薄く化粧をしたフィムは、タタの森にいたときよりも一層綺麗で、幻想的に見える。
ユールルは半年ぶりに見る姉の姿が懐かしく、話したいと思うが、対する姉はひどく切羽詰まったような表情をしている。
――ユールル、お願いがあるの。
フィムは言う。
その目は真剣だった。
――私は、もう、二度と外には出れない。だから、これを預かって欲しい。
そして、彼女は両手をユールルの方に差し出す。
すると彼女の手から、光る丸い球体が現れた。いつか見た砂漠の星のようだとユールルは思う。
光の玉は、フィムの手を離れると、ゆっくりと池を越えて、ユールルの前に来ると、その体の心臓があるあたりに入ってきた。
驚いて姉を見ると、彼女は悲し気に泣いていた。そして、その姿は、水面のように揺らめき出す。
――ユールル、その時が来るまで。どうか、お願いね。
最後に彼女はそう言って、その姿は景色と供に消えてしまった。