表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/60

夢の中の再会

 気がつくと、大きな、赤い建物の中にユールルはいた。


 平屋であるが、太い柱がいくつも建ち並び、白い小石が敷き詰められた庭の真ん中には大きな池があり、水面が青い空を映している。

 その池の前に、ユールルは立っていた。


 見たこともないその場所を、ユールルは不思議に思って見回す。


 と、


 ――ユールル。


 自分の名前を呼ばれて、その声の主を探すと、先ほどまでは誰もいなかった池の丁度対岸に人が立っているのに気がついた。


 ユールルは、その人物を見て、思わず叫びそうになる。


 姉様!


 しかし、声は出ず、ただ口をぱくぱくと動かしただけだった。

 フィムは、美しい着物を着ており、頭には細かい装飾の金色の飾りをつけている。


 祈りの巫女の姿だ、とユールルは思った。


 薄く化粧をしたフィムは、タタの森にいたときよりも一層綺麗で、幻想的に見える。

 ユールルは半年ぶりに見る姉の姿が懐かしく、話したいと思うが、対する姉はひどく切羽詰まったような表情をしている。


 ――ユールル、お願いがあるの。


 フィムは言う。

 その目は真剣だった。


 ――私は、もう、二度と外には出れない。だから、これを預かって欲しい。


 そして、彼女は両手をユールルの方に差し出す。

 すると彼女の手から、光る丸い球体が現れた。いつか見た砂漠の星のようだとユールルは思う。

 光の玉は、フィムの手を離れると、ゆっくりと池を越えて、ユールルの前に来ると、その体の心臓があるあたりに入ってきた。


 驚いて姉を見ると、彼女は悲し気に泣いていた。そして、その姿は、水面のように揺らめき出す。


 ――ユールル、その時が来るまで。どうか、お願いね。


 最後に彼女はそう言って、その姿は景色と供に消えてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ