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図書室と先輩  作者: アデル
20/22

その20 ほめ言葉

 どれほど経ったのか。だいぶ落ち着いたわたし。またひどい顔になっているのかな。でも、いいや。

 そのとき、ふとあることを思い立つ。あ、聞くなら今かも。


(あの、先輩たちって付き合っているんですか?)


 自ら地雷を踏むようなものだけど、ずっとずっと気になって仕方のなかったこと。わたしは、指を組んだ両手を前に押し出しながら、伏せていた目を上げる。

 小首を少しだけかしいで微笑んでいる美人。ちょっと怯んでしまう。

 うっ、ダメ、ここで負けちゃ。

 すぅ…。わたしはテンションを上げるため、ゆっくりと息を吸い込み始め……。と、そのときだ。わたしの口が開くより先に、入り口で先輩の声がした。


「おおーい。性悪魔女ふたりぃ、行くかぁ。もう、なんだっておごっちゃうよぉ!」


 あうっ!もう先輩ったら、どうしてこうタイミング悪いんですかぁ?

 でもよくよく考えれば、トロくさいわたしが一番悪い?はぁ、また持ち越しだあ。もう、わたしってどうしていつもこうなのかしら。でも、それも、なんか「らしくて」いいかも。にしたって先輩、魔女はひどいですよ。


「はーい。じゃ、行こうか」


 けれど小峰先輩はそのフレーズを完璧スルー。 

 あれ?なんか言い返すかと思ったんだけど。

 わたしの表情に気付いたのか、小峰先輩は意味ありげに微笑んで、耳打ちするかのような位置でわたしにささやいた。


「さっきの? うんとね「性悪魔女」ってのはね、ある意味イイ女ってことよ。だから、ほめ言葉だと受け取っておけばいいのよ」


 あらま。この人ってやっぱりスゴイ。そっかー、となるとわたしもイイ女の仲間入り?いえ、たぶんこれは調子乗りすぎの勘違いなんだけど。

 けれど今のわたしはなんだか楽しくなって、その勘違いを自分で黙認してしまう。そして「はい!」と自分でも呆れるくらいの明るい声を出して立ち上がった。

 いつのまにか、わたしもケーキをおごってもらう気になっている。遠慮したはずなのに、図々しいにも程があるってものなんだけど。

 ま、いっか。たぶん、二人もそのつもりだろう。こういうことは深く考えないで、流れに乗っちゃうのが一番ね。と、入り口ドアに体を向けたお調子者のわたし。

 けれど、浮かれるとロクなことがないのはいつものことで、思わず息をのんで立ちすくむ。

 なにしろ先輩の背後にいつのまにやらある人物が……。


「あらあ、何をおごってくれるのかしら?」


「げっ!センセ!」


 このときの先輩の顔ったらない。思い出すだけでも笑えそう。 

 でも「しまった」と思ったのはわたしも同じなんだけど。

 あー、怒られるー。

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