息のつまる病室
<2日後>
目が覚めると、体が軽くなっていた。
兄貴に言われて体温をはかると、37,1まで下がっていた。兄貴が、
「安静にしてくれると、お兄ちゃん助かるんだけどね…」って言いながら部屋を出ようとした兄貴を、僕は呼び止めた。
「昴先生!」
「正くん?」いきなり昴先生って言われて、ちょっとびっくりしているみたいだ。
兄も知っているけど、僕が昴先生って呼ぶ時は、何かお願いするときだ。
「今日ベッドでじっとしてたら、退院の許可くれる?」兄貴は困った顔をしていた。
「絶対じゃないけど、考えとく」
「えー」
「でも、もしベッドから動いたら、絶対退院許可あげないよ」
「はいはい」
「ってことで、青ちゃん正くんのことお願いな」
「うん!分かった」
「何かあったら、お兄ちゃんに連絡しろな」
「「はーい」」
「青ちゃ~ん」
「なに?」
「お兄ちゃんちょっと売店行って来る」
「だめだってお兄ちゃんに言われたでしょ?」まー当然の反応か…
「分かった。青ちゃん一緒に行くか」
「えーいいのかな?」
「兄貴に聞いてみたらいいじゃん」僕がそう言うと、青ちゃんは、素直に兄貴に聞いたらしく、
「いいけど、車イスでだって」って言った。車イスか…
「お兄ちゃん座って!」青ちゃんは、なぜかわくわくしているみたいだ。
「はいはい」座ると、やっぱり本調子ではないらしく、息が上がってきた。
「お兄ちゃん大丈夫?行くのやめよーか」青ちゃんが心配そうに僕を覗き込んできた。
「大丈夫だから行こ?」
僕は、この息のつまる病室から早く出たかった。
「分かった」
そう言って青ちゃんは、車イスを押して売店に連れて行ってくれた。