兄の優しさ
すー君が、チャーハンを作ってくれた。
全くと言っていいほど、食欲はなかったけど、すー君の手料理が食べたかったから、頑張ってたべた。
「正君。無理すんなよ」ってすー君は心配そうに僕を覗き込んで…
「うん。ごちそうさま」僕は3口食べただけで、箸を置いた。
「よく食べたな」
すー君はいつもそう言って僕の頭をなでてくれる。
しばらくすると、おいしかったのに…やっぱり吐き気が襲ってきた。
吐きたくなくて、トイレの前で我慢していると、すー君が
「我慢しなくていいよ」そう言って、僕の背中をさすってくれた。
だから、僕は安心して胃の中のものをすべて出してしまった。
「すー君ごめん…」僕は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。なのに、
「正君疲れただろ?もう寝な?」ってすー君は優しく声をかけてくれた。
ごめん。兄貴。
ごめん。すー君。
<昴side>
「あれ?お兄ちゃんは?」って青ちゃんが聞いてきた。
青ちゃんと僕とは親子くらい離れているけど、「お兄ちゃ~ん」って言ってくれる青ちゃんは、とっても可愛い。
「正くん疲れたらしくて…寝たよ」そう言うと、
「お兄ちゃん大丈夫?」って青ちゃんは心配そうに俯いて…
だから僕はわざと明るく、
「多分な…青ちゃんも寝るか?」そう言って笑った。
「うん!」
青ちゃんには、正くんの病気のことを、あんまり教えてない。だけど、やっぱりなんかを察知しているらしくて…正くんのことを心配している。
次の日になって、
「おはよーお兄ちゃん」って青ちゃんが起きてきた。
「おはよー青ちゃん。ごめんけど正くん起こしてきてくれる?」
「うん!分かった」青ちゃんは正くんの部屋にかけていった。
<正side>
朝になった。
僕は昨日の疲れが長引いているのか、ベッドから起き上がれなかった。
やっとの思いでベッドから起きあがった瞬間、
「お兄ちゃん入るよ。おはよー」そう言って青ちゃんが入ってきた。
辛くて返事が出来ないでいると、
「お兄ちゃん?」って言いながら、青ちゃんが僕のそばに寄ってきた。
「ゴホゴホハァハァ」
僕が苦しくて、咳き込んでしまったから、
「大丈夫?僕お兄ちゃん呼んでくる!」そう言って、青波は部屋を飛び出そうとした。
「青波!待て!」僕は青波の腕を掴んでいた。
青波は僕にいきなり「青波」って言われて、びっくりした様子で、
「お兄ちゃん?」って言った。
「青ちゃん大丈夫。ちょっとむせただけだから。先リビング行ってて。今から行くから」
「うん。分かった…」
「お兄ちゃんに言わなくていいからな」僕はそう付け足した。
<昴side>
青ちゃんがリビングに戻ってきたが、正くんの姿がない。
「あれ?正くんは?」
「お兄ちゃんもうちょっとで来るって」
「正くん大丈夫そうだった?」
「あっ…うん‥」絶対正くんに口止めされたな…
そのとき、『バタン』と嫌な音がした。
「正くん!!」そう言いながら正くんの部屋に行くと、正くんがベッドの横で、うずくまっていた。
「正くん!?頭打ってない?」
「大丈夫…」
そう言った正の顔は青ざめていて、胸をおもいっきり掴んでいた。
「病院連れて行くな。青ちゃん車開けて!」
「分かった!」
「いや…行かない」そう言っている正くんは苦しそうで、早く楽にしてあげたかった。
「駄目。行くな」僕はそう言いながら、正くんを抱いて、車に乗せた。
「今から正を病院に連れて行きます」そう病院に連絡しながら、車を進めた。
正くんは汗を半端ない量かいていて、本当にきつそうだった。