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正side
兄貴は、全然退院許可をくれなくなった。でも、病院を抜け出す体力はなくて、ベッドから起き上がると、咳き込んでしまうしまつだった。
(やっぱりあと1年何だよな…僕の命…)
それでも、兄貴の手料理が食べたくて…
退院の許可をもらえるように頑張った。
「ねぇ、退院させてよ」
「ごめんな。検査の結果が悪かったからさ…」
「そんなの関係ないよ!僕元気なんだし…ゴホゴホハァハァ…」
「正くん?」
「うるさい…僕はただ、すー君の手料理が食べたいだけなのに…ハァハァ」
言ってしまった。
「正くん?そんな事思ってたのか?」
「うん…」
「手料理なら、ここでも作ってあげるよ?」
「嫌…家がいいの」僕は感情が高ぶって、泣いてしまった。
「正くん。泣かないの。もう少しで退院させてあげるから…」
「本当?」
「うん!だから、正くん安静にしててね」
「はーい」
その言葉通り、兄は、その日の夜、退院させてくれた。
やっぱりこんな無理やりなのが通じるのは、僕の命が残り短いからなのかな?
僕は少し怖くなった。
でも、それに気づいたのか、兄は優しく僕を包み込んでくれた。




