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たまごやき

 子供のころはひときれの卵焼きがごちそうだった。


 母いうところ、彼女が子供の時の卵は高級品であり、砂糖もまたそうだったらしい。砂糖をちょびちょび舐めるのが楽しかったという。


 小さな卵焼きは卵ふたつ。

 こんこんと割って醤油をたらす。

 漆のお椀の中でさっとといて卵やき機にジュー。


 焦げを作らないよう、やぶらないよう丁寧に菜箸や普通の箸であっちっち。

 俺を含めた子供三人はピーチクパーチク。ひときれ食べ終わった後も兄弟のそれを欲しそうに眺めていたりする。


 我が家の卵焼きは醤油味。

 ちょっと色が黒いが弟は焦がさず焼くのが得意だった。

 ほかほかの暖かさは醤油と混じりあって鼻に旨みのこもった香りを届けてくれる。

 歯で噛み切ってあっちっち。舌でつかんであっちっち。

 冷めて弁当になったのを鹿にやったら喜んだ。

 調子に乗って鹿に蹴られたのはご愛嬌。


 卵を買うのは安いの多いの元気な子。

 卵を買って壊したら残念無念卵焼き。

 転んで跳ねて膝剥いて。泣いて笑って卵焼き。


 卵のかけらもなみだもポイしちゃえ。

 ジュージュージュー。

 きらきら瞳で卵焼き。

 綺麗に巻けたら拍手喝采。いただきます。


 薄く引いた油を洗剤で。

 さっと洗ってピッカピカ。

 子供が食べ終わった後の台所。


 ちょっと冷えた卵焼き。

 ひときれ余分に食べた卵焼き。


 そっと一口悪戯で。

 お母さんのがなくなった卵焼き。



 今じゃ一人で卵焼き。

 卵三つで卵焼き。


 じゅっとフライパンをかわしてみても、あの日の味にはなりはしない。

 フライパン洗って卵焼き。


 今日も明日も卵焼き。

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