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シナリオは着々と進んで、オレは幸成に見張られながらイベントをこなして行く。
図書室にせっせと通って本の話に花を咲かせて、水瀬しおりとの仲を深めた。
水瀬しおりは水瀬学園の理事長の娘だ。親に敷かれたレールの上を歩いている彼女の初めての反抗が洋人との恋。洋人に出会わなければ、彼女は親が決めた相手と愛の無い結婚をして、危険も無ければ楽しみも無い人生を生きる事になる。そんな水瀬しおりを、幸成は救いたいらしい。
「しおタンはね、笑うと可愛いんだ。でも今はロボットみたい。そんなの…悲しいよね。」
馬鹿な幸成は気付いていない。
自分がどんな顔して"しおタン"の話をしているのか。
どんな顔して、水瀬しおりを見ているのか。
ついでに馬鹿な幸成は、こうも不自然にシナリオが思い通りに進んでいる事に疑問を持っていないみたいだ。実際はいろんな部分が幸成の知ってるゲームとは違うのに、シナリオだけは全部、幸成の記憶の通りに進んでる。幸成は"ゲーム補正"だとか訳わかんない事言ってたけど、補正が掛かってるって言うならそれは、人間の手動だよ。
「水瀬せんぱぁい!お花の図鑑を借りに来ましたぁ!」
騒々しく図書室のドアを開けたのは新堂だ。水瀬はそれを無表情で見やって、口を開く。
「花梨さん。図書室はお静かに願います。」
「ごめんなのですぅ。」
「よぅ、ちんちくりん。相変わらず騒々しいな?」
「げぇ、また洋人なのですぅ。胡散臭い男は嫌いなのですぅ。」
「安心しろよ。オレもチビペタ女に興味ねぇから。好みは保健室の木田ちゃん。」
新堂をからかって遊んでたら、背後から頭を殴られた。容赦無いこの殴り方は振り向かなくてもわかる。
「ヤキモチ?月穂はチビでもペタでもねぇだろ?」
振り向いて腰を抱いたらまた頬を平手打ち。耐えてるのは反省した月穂が従順で可愛くなるからだ。じゃなきゃマゾでもないし、流石にキレる。
「オレの気持ちが何処にあるか、知ってるだろ?そんな怒るなって。」
「バカ!洋人のバカ!…このゲーム、まだ続くの?」
「あぁ、そろそろ締めっぽいぜ?なぁ、水瀬?」
視線を向けると無表情が常の水瀬の頬がほんのり染まる。幸成は今はいない。木田ちゃんが足止め中。
「月穂さん。恋人が他人とこんな演技してるの、嫌ですよね。ごめんなさい。」
「よく…はないし不快だけど、なんだかんだでこのバカを信じてるから……」
耐える。ぼそり呟かれた言葉がいじらしい。
オレは緩んだ顔で、月穂に手を伸ばす。
「うちで沢山可愛がってやるって。」
「バカ…」
今度は殴られないのは、月穂も望んでるから。手を取って握ったら、握り返された。素直じゃないくせに素直なんだよな。
あぁ、抱き締めたい。キスしたい。でもここでやったら殴られるから、家まで我慢。