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 図書室に入って、オレは本の背を眺めて歩く。読みたい本を探してるって振り。だってオレ、本とか興味無いし。


「あ…きゃっ」


 可愛い悲鳴と共に女の子が降って来た。

 やべ、思わずキャッチしちまった。ここは下敷きにならないとなのに…


「ご、ごめんなさい…」

「"僕は大丈夫。君に怪我はない?"」


 優しげに微笑んで、オレは幸成に叩き込まれた台詞を吐く。

 下敷きにはならなかったけどそこは目を瞑ってもらおう。

 抱えてる状態から女の子を降ろして、オレは床に散らばった本を拾う。


「"あ、この本…君が借りるの?"」

「いえ、私図書委員で、戻していたんです。」

「"なら、僕が借りても良い?"」

「えぇ、どうぞ。」


 オレの前で無表情に受け答えしてる彼女は水瀬(みなせ)しおり。幸成のしおタン。

 制服のスカートは規定の長さ。髪は三つ編みおさげ。"ザ・優等生"って感じの物静かそうな子。

 清楚で可憐系。幸成みたいなのが好きそうな感じだな。


「"梯子、気を付けて。次も僕が下敷きになれたら良いけれど…"」


 くすり笑ってクサイ台詞。

 クサイ。クサイぞ。

 オレは本を手にカウンターに向かって貸出手続き。これで今回の任務は終了だ。


「おつかれ。でもなんで受け止められるのかわからない。」

「反射」

「おかしい…"洋人"は文系でそこまで運動神経よくないんだけど……」

「中身が違うし、仕方ねぇんじゃん?」


 不満そうに幸成は唸ってる。けど、オレに聞かれてもわかんない。オレは普通に生きていただけだ。


「まぁいいや。次は花壇ね!」


 借りた本は興味が無いから幸成に押し付ける。

 今度は中庭の花壇。花壇の水やり係の仕事だって。オレ、その係じゃないんだけどな。

 幸成が水やり係になってたみたいで、ジョウロを押し付けられて適当に水をやる。これ、ひたすら水を掛けてたら良いんだろうか?


「あー!そんなにお水をあげたら根が腐るですぅ!」


 なんか変なのが来た。

 ぴょんぴょん揺れるツインテールに八重歯の下級生。特徴的にこのちび女がターゲットだ。


「聞いているのですかぁ?」


 なんでこいつ、こんな高くて鼻にかかるような声してんだろ。ぞわっとするとか考えてたら、反応が遅れた。


「"君は?"」

「人に名を聞く前に自分が名乗るのが常識なのですぅ。」

「………"ごめんね。僕は城島洋人。"」

「可憐なあたしは新堂花凛ちゃんなのですぅ。」


 どうしよう。心が折れそうだ。

 チラリと隠れてる幸成の方を見やったら、睨まれた。

 やり通せって事みたいだ。


「"新堂さんは、花に詳しいの?"」

「詳しくはないですけど、好きなのですよぅ。」

「"僕は全くわからなくて、教えてくれる?"」

「構わないのですぅ。」


 この子は"洋人"に好意は寄せるけど、水瀬しおりとのキューピッド役になる重要人物らしい。

 今後のイベントに備えて程良く交流しておく必要があるとか……。あいつ、幸成、わかってんのかな?自分が何をやってんのか。

 まぁオレは共犯者だから、指摘せずに付き合ってやろう。

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