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幻想のメシア  作者: からから
第一章
2/28

0.初任務形式のプロローグ

 ──G558421


「な!? でかいぞ、こいつ!!?」「どうしてこんな化け物がここにいるんだ!?」


 さて、今置かれている状況を考えようか、冷静にだ。

 ひょうんなことから、俺は元いた世界とは別な世界にいる。異世界とかいうやつだ。

 なんたってこんな普通(?)な生活を送っていた俺が異世界にいるかは、まあ、なんだ……これは置いておこうか。


「盗賊の野郎ども、こんなやつを飼っていたのか!?」「……いや、こいつは多分俺たちの騒ぎを聞いてこっちにきったってやつじゃないのか?」「ああ、多分そう……だろう。洞穴でこんだけ暴れたんだ。土の中にいるこいつはすぐわかるだろうぜ」


 気を取り直して、なんたって俺が盗賊団壊滅のメンバーに加わっているかだが、これは百万歩譲って納得できなくもない。

 盗賊団どもに道中で喧嘩を売られたのは俺達だし、言い値の3倍増しで買い取ったのも俺達で、ボロ雑巾になるまで叩きのめしたのも俺達だ。

 盗難品をギルドに提出すると、なんだか他の冒険者たちが俺たちの周りに人が集まってきたのも、まあわかる。

 この国ではかなり実力派の盗賊団だったみたいで、討伐に向かった実力者たちも何人か犠牲になっているらしいし、そんな中たった4人で盗賊団十数名を撃破した俺たちはまさに軽い英雄状態だった。なりたくないけど。

 そこで、今度こそ念願の盗賊団壊滅の兆しを見たのか、ギルドは俺たちに壊滅のメンバーに加わってくれないかと頼まれた。報酬も弾んでくれるそうでひょっとしたらこの国の王直々に褒美をくださるとかなんとか。

 でも、俺達10日間しかこの世界にいられないし、おまけにリミットまであと4日。

 本気で関わりたくなかったので逃亡を企てようとしたのだが、仲間の3人がすでに前払いという名目の喰い物の山に突貫していた。

 幸せそうに頬張っていたこのアホどもを殴ってやりたかったが、もはや後の祭り。報酬の一部を受け取ってしまった段階で、俺達は壊滅部隊に組み込まれることを余儀なくされた。


「ここは……逃げるしか……」「ダメだ!! まだ外には捕まっていた人たちが移動している!! ここで食い止めなければこいつに食い殺されるぞ!!!」


 そしてリミットの4日目少しでも早く終わらせて褒美とやらを食い散らかそうと決意した俺はなんとか盗賊団の根城を捕捉し、一網打尽に駆逐した。

 人質や奴隷に売り飛ばされる予定だった人々を解放し、 盗賊団を一人残らず戦闘不能、生命活動不可能の状況に追いやった……その矢先、この様だよ!!!!


「今こそ我らの力を奮う時だ! 案ずるな、あの盗賊団を壊滅させた我らに敵わないなどという道理は存在しない!!」


 壊滅部隊のリーダーは日和気味の総員に喝を入れる。


「この旅人様方だっているのだ! これだけの好条件の中死んでみろ! 後世まで残る恥と知るがいい!!」


 壊滅部隊の仲間たちが一斉にこちらに視線を向ける。

 おい、こっちみんなって頼むから。


「総員、奮起せよ!!! エンジェ・アラクネを討伐するのだ!!!」


 ……さて、この巨大土蜘蛛が出てきた瞬間、もはや宴までの時間は俺たちに残されていないと確定した。

 おまけに突然消えたりしないように配慮するため、なるべく短時間での討伐が必須条件。

 逃げるように頑張った挙句、ただ働きだ。

 ──これを、不幸と呼ばずになんという?


「……う、ふふふふふ、あははははは……」


 もう、いいや。

 早く帰って寝よう。

 ……泣いてなんか、いない……よ?


「うおおおおおあああ!!」


 覚悟しろよ!? このクソ蜘蛛が!!

 そのがっちがちの鎧全部砕いて、五臓六腑まで切り裂いてやるからな!!?




 §--------------------§




 ──D489520


「くそったれめ……」


 案の定巨大蜘蛛を倒した後の俺たちは逃げるようにその場を後にし、『ノア』の光に身を任せて元の世界に戻った。

 今回俺達3人は初めての異世界渡航という事で、比較的危険度の少ないすでに調査済みの世界軸への定期確認というのが任務内容だったんだが、いつの間にかおもくそ戦闘している様だ。

 あの野郎に文句を言いに、且つじゃんけんで負けたせいで提出する羽目になったレポートを叩きつけるため、"作戦局長"の部屋の扉を蹴破る。

 じゃんけんに勝った3人は食堂でパフェを食べるらしい。くたばれ。


「ただいまけーりましたー」


「……随分とやさぐれているようだが、何はともかく初任務お疲れ様。楽しかったかい?」


「それはそれはまー、局長様のご厚情によりとーっても安全な世界軸にしていただけましたので存分に満喫できましたとも」


 安心してくれ、自分でも言葉に棘があるくらい理解してるぜ? べいびー。


「どうぞ、レポートです。お納めくださいませー」


「んー、そこに置いといて。今溜まってるから」


「そう言わないでさー。とっとと見ろよ巻き毛」


 机の上にあった書類の山をバサーっと払いのける。


「なんだいそんな乱暴に。構ってほしいのかい? そういうお年頃なの?」


「寝言言ってんじゃねーぞ。助手さん呼ぶぞおい。いいから見ろよほら」


「はーなになに……」


 数刻ほどレポートを見た巻き毛ははぁ……っと息を吐いて額に手を当てる。


「……君、やっぱ呪われてたりするんじゃないの?」


「自分の失敗を他人の運のせいにする気か? 上司が聞いてあきれるな?」


「言っておくけど、このG558421は100年ほど前に初めて調査したときに起こった大暴動以来大きな争いも起こってない安全な世界軸なんだよ?」


「調査員っていうより狂戦士だったからね俺。4日間戦い続けたからね俺」


 バンっと机に両の掌を叩きつける。


「現に大魔物も出てんだろうが。いや、それ無しにしてもこの盗賊団ってのもないぞ? あの国の騎士団のレベル余裕で超えて……」


「信用できないなら書庫に言って過去のレポートを確認してみるといいさ。G558421はちょくちょく渡航しているしレポートもかなりの量があるはずだが、戦闘という戦闘もなかったって最初以外のレポートにはそう書かれているはずだよ」


「ぬぐぅ……」


 俺の言葉を遮って巻き毛は反論する。

 実際ここまで言っているんだ。書庫なんぞいかなくても巻き毛の主張が事実であることぐらいわかる。


「君の運が悪かったってだけさ、仕方ないよ」


「異世界にいっても俺の運が何もかも邪魔するのか……」


 どうなってんのホント?

 どんだけ俺のことに憎いの神様?


「それよりも初任務でここまで大きな戦闘したのに、大きな怪我もなかったってことに喜ばなきゃ。悪運強しってね」


「それ褒めてないからな? 喧嘩売ってるからな?」


 ……はあ。

 もう、いいや。早く帰って寝よ。


「あれから今どんぐらい経った?」


「3日だね」


「明日月曜かよ!? あーマジツイてねー……」


 明日HR出ないと……

 鍋さんに殴られる。

 俺はとぼとぼと歩いて部屋から出ることにした。


「まあまあ、がんばってよ。学生さん」


「やかましい」




 §--------------------§




 とまあ、こんな感じに俺の素敵な非日常が過ぎていったわけだが、こんな異世界まできて蜘蛛退治する羽目になったのには原因がある。

 多少時間を超越してるが、別に因果が崩れているわけでもない。

 俺の頭の中の常識が崩れていったわけで。


 そんなことを話そうと思う。

 さて、どこから切り出そうか。

 自己紹介もかねて、少し前の時系列から語っていこう。

 あの人生180度転換というより方位磁針そのものを叩き壊してしまったかのような、悪夢の2日間の……ほんの少し前からだ。



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