雨水
まだまだ寒い中、息白い井野嶽幌は、教室に居た。
「寒いねー」
「そうだな」
教室では、石油ストーブが明々となっており、周りには人だかりができていた。
「とはいっても、今日は雨水だからな。もう三寒四温を繰り返して、暖かくなっていくころだろうさ」
幌はすぐ横で暖まっている雅に言った。
「雨水って?」
「雪も雨に変わるほど暖かくなってきたっていう日のことさ。今年は2月18日だっけな」
雅とストーブを挟んで向かい合って暖まっている宮司に聞く。
「そ。だからそろそろ、雪も見納めかなぁ」
そうは言っても、外は雪がちらついている。
「春が来るのはもう少し先っぽいぞ」
ちょうどそこへ、島永宗谷がやってきた。
「おはよう」
幌が、簡単に島永へ挨拶をした。