表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とらいあんぐる おあ へきさごん  作者: 高槻
めまぐるしい はる
9/51

8.こまりました

 昼休み。お弁当バッグを開くと、そこには兄ちゃんの弁当が入っていました…。

 なんか重い気はしてたんだよな…。


 女になってからというもの、食事の量が減った。多分小食という程ではないのだが、成長期の男子と比べれば、少ない。よって弁当箱は母さんが買ってきた、可愛らしい女の子向けの小さいものになった。

 つまり、ここに兄ちゃんのでかい弁当があるということは、兄ちゃんの手元にあの可愛らしい弁当があるというわけで。なにそれ笑える。


「琴美、兄ちゃんの弁当が間違って入ってたから、ちょっと交換してくるね。」


「一緒行こうか?」


「大丈夫ー。先食べててー。」



 と、断ったものの。三年の教室階に行くと、やっぱり居心地が悪い。さっさと交換して、さっさと戻ろう。

 ひとり肯いて、兄ちゃんのクラスを覗いた。ちょうど近くにいた女の先輩に声をかける。


「すみません、遠峯健を呼んでほしいんですけど…。」


 そう言ったら、優しげな表情が一気に怖いものへと変わった。ええ!? なにごと!?


「あんた一年でしょ? 先輩くらいつけなさいよ。」


 えー…、身内には付けないでしょう。

 妹です、と名乗ろうとしたら、そんな隙もなくその人が口を開く。


「それお弁当? 健くんはファンの子が何持ってきても食べないから。 さっさと戻んなさいね。」


 フン、と背を向けられて泣きそうになる。

 何これ、女子って怖い。

 兄ちゃんの馬鹿。かっこいいから悪いんだ。俺みたいに平凡だったらこんなこと無かったのに。


 どうしようかと思って少し入り口から離れると、肩を叩かれた。


「うひゃっ!」


「わっ、ごめんごめん、驚かせちゃった?」


 覚えのある声に振り向くと、そこには小国先輩が。


「小国先輩…。びっくりしましたよー…。」


「ごめんて。でもどうしたん、こんな所で。それ弁当? はっ! もしかして俺に!!?」


「え、違いますよー。あっそうだ! 先輩助けてください!」


 違うと言ったら少ししょげた先輩だったが、助けてとお願いするとあからさまに機嫌が上昇した。


「なんだい? 樹ちゃんのお願いとあらば、なんだってしてあげよう!」


「ありがとうございます。 あのですね、遠峯健を呼んで欲しいんですけど…。」


 ピシリ。

 そんな擬音がふさわしいほどに、先輩が固まった。ぎぎぎ、と首をこちらに向ける。


「健、だと…? もしや、その弁当は、あいつの…?」


「そうなんですよ~。さっき呼んでくれるよう頼んだ人は、なんか勘違いして呼んでもらえなくて…。先輩お願いします!」


 どんよりと何故か落ち込んだ先輩は、「ははは…、任せておきな…。」と言って兄ちゃんのクラスの入り口へと向かってくれた。


「健ー!! このやろー!! 出てきやがれえええ!!」


 …先輩、何もそんなに叫ばなくても良いと思うのですが。


「びっくりしたー。なんだ海斗か。どうしたんだよ。」


「呼び出しだ。本当は呼び出したくないんだが、可愛い後輩の頼みとあらばな。涙をのむさ。」


 先輩すみません、嫌いな奴を呼びに行かせてしまって…。


「後輩~? って樹じゃねーか! お前遅いよ! お陰で早弁出来なかったんだからな!」


「気づいてたなら取りに来てよ!」


「俺が一年のとこに行ったら浮くだろ?」


 そうですね。有名人だしね。でも今は俺が浮いてることに気づいて欲しい。


「大好きって言ってくれたら許すけど。」


「なんでわたしが許されなきゃならないの!」


「た~け~る~」


「「うわっ」」


 言い合っていたら、ぬっと小国先輩が割り込んで来た。心臓に悪い!


「樹ちゃんを呼び捨てとはどういうことだあ? というかやけに親密… しかも大好きって… もしや付き合ってたり…!?」


 あれ、先輩って俺の苗字知ってる筈なのにな…。やっぱり勘違いしてる。訂正しようと口を開きかけたら、ニヤ、と笑った兄ちゃんに制止された。


「そーいや、お前サッカー部だったな。俺の樹に手ぇ出すんじゃねえぞ?」


 ぐい、と引き寄せられてそんなこと言われたものだから、一瞬なにがなんだかわからなかった。

 でもすぐに「キャーッ」とか「イヤーッ」とか聞こえて、随分と見られていたことに気付き、そういや兄ちゃんは人気者でしかも先輩にはなんか勘違いされていて、その上兄ちゃんのさっきの発言を反芻し。


「ちょっと! 変なこと言わないでよ!!」


 手を突っぱねて離れようと試みるも、大きい手と半端ない腕力に遮られ離れられない。目の前では小国先輩が唖然としている。あー、これ完璧に勘違いされたよ。


「あの、先輩、これは違ってですね…」


「なんか騒がしいと思ったら、健と海斗じゃーん。なに、女の子の取り合い? ってあれ?」


 兄妹なんです、と言おうとしたら第三勢力のご登場。


「あ、正悟先輩。お久しぶりです。」


 そう言って会釈したら、正悟先輩は口を開けたり閉じたりしながら、俺と兄ちゃんを交互に指さした。


「えっ、ちょっ、えっ!? 樹!? なんで!?」


 あー…、この反応はもしかして。


「ねえ、正悟先輩に説明してなかったの?」


「悪い、忘れてた。」


「どういうことーーーー!!?」



 廊下に響く正悟先輩の叫び声。

 誰かこの場を収集してください。


 そしてお弁当…。



以降はのんびりお待ちくださいませ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ