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とらいあんぐる おあ へきさごん  作者: 高槻
めまぐるしい はる
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7.おれのまわりのびけいりつ

「いっちゃん、よしくん! 昨日すっごかったんだよ!」


「何が?」


 もう部活を決めた俺達―――琴美と喜成と俺―――は、朝練に参加するために早く家を出たのだが、顔を合わせるなり琴美はテンションが高く、とても早起きしたようには見えない。一方俺はまだ眠い。


「男子バスケ部が! マネージャー志望の子が押し寄せちゃって、壮絶なるジャンケン大会が開催されたんだよ!」


「「まじかよ…。」」


 あ、喜成とハモってしまった。

 唖然とする俺達を見て琴美は満足したのだろう。満面の笑みで大きく肯いた。


「兄ちゃん、そんなこと言って無かったなぁ…。」


 むしろ俺に来いって言ってたし。


「あー、健先輩も正悟先輩もうんざりした顔してたもん。それに女バスの先輩に聞いたんだけど、去年も一昨年もそうやって決めたんだって~。」


 わお、恒例行事ですか。


「サッカー部なんて、樹一人なのにな。」


「ねー。」


「えっ、いっちゃん一人なの!? 先輩にセクハラされなかった? 大丈夫?」


「ちょっと琴美…、男をなんだと思ってるの…。大丈夫だよ。」


「そう? よしくん、ちゃんと守ってあげてよ? いっちゃん、自覚足りないんだから。」


「わかってる。」


 なんの自覚だろう…? 女としての自覚かな。確かにそれは足りてないや。



 ■ ■ ■



 朝練はランニング。朝から走るなんて、大変だなぁと思う。

 俺はスタート地点に立って、あと何周、と声をかけたり、メンバーのタイムを記録したりする。

 ストップウォッチを見つめて、大きな声で宣告する。大体みんな固まってゴールするから、見ながら書くことができない。仕方ないので、各自タイムを覚えていてもらって、あとから記入することにした。

 皆の顔と名前を覚えるには良いけど、もう一人マネージャーがいてくれたら、分担して計測と記録ができるのにな。



 と思っていたら。


 女子が来たあああああっ!


 あ、やばいやばい、先輩と同じ反応しちゃった。

 放課後に部室を訪れたのは、まあなんというか…、ギャルでした。

 派手なメイクしてるわけじゃないんだけど、オーラ? がギャル。ちょっと気の強そうなめっちゃ可愛い子。


「島根梨佳です。よろしくおねがいしまーす。」


 うおおおおおおっ


 昨日と同じようにハイテンションな先輩方。ちょっとやめてください、折角来た子が逃げるじゃないですか。ほらちょっと引いてるし。


「梨佳ちゃん、こっちの子は昨日来た樹ちゃん。仕事内容は樹ちゃんに伝えてあるけど、分からないことがあったらどんどん聞いてくれて構わないから。」


 一通り喜びの舞いを躍った先輩方は、それだけ言うと男子を引きつれてストレッチを開始してしまった。


「えっと、物置はこっちだよ。」


 とりあえず、梨佳さんにやることを教えるため物置へと案内する。


「ボールとかその他備品とか、ここに入れてあるんだって。マネージャーの仕事は、朝練のランニングのタイム記録、備品の整理、ドリンクの準備などなどで、わたしもそれくらいしか聞いてないんだけど、追々説明して下さるそうです。」


「ねえ、あんた、いつき…だっけ?」


 緊張しながら説明していたら、突然梨佳さんが口を開いた。


「あっ、そういえば自己紹介してなかったね。遠峯樹です。よろしく」


「遠峯!!?」


「うわっ!?」


 名乗ったら、ガシッと肩を掴まれた。めっちゃ吃驚した!!


「遠峯って、あの健先輩と親戚か何か!?」


 なんだか目の色が違います。怖いよう!


「え、えと、兄弟、です。」


「兄妹~? 似てないね。」


 知ってますよ…。だけどそこまでザックリスッパリ言われるとちょっと傷つく…。


「兄は父似で、私は母似で…。っていうか、兄のこと知ってるんですか。」


「当たり前でしょ~? あたし先輩に憧れてて、男バスのマネージャーになろうと思ったんだけど、ジャンケンで負けてなれなかったの! 有り得無くな~い?」


 ええ、ジャンケン大会を催すほど人数が集まることからして有り得ないです。


「で、まあ仕方ないし出会いがあるかもって思ってサッカー部に来たんだけど~。」


 わお、不純!!


「でも健先輩には霞むってもんよね! ねえ、健先輩に紹介してくんない?」


「ごめんね、兄ちゃんそういうの嫌いだから…。」


 こういうのは困った笑顔で断るのがベストです。中学時代に散々やってきました。


「残念。あーあ、チャンスだと思ったのになぁ~。」


 しょげちゃった。無理難題言ってくるような人じゃなくて良かった…。


「でも、サッカー部に来てくれて良かったよ。わたし一人じゃきっと駄目だったろうし。良ければこのまま一緒にサッカー部のマネージャーしようよ。」


「どうしよっかな~」


「ええ!? やろうよ!」


「だって、さっきなんか怖かったし…。」


 先輩のせいか!

 あとでもうやらないように言っておこう。


「樹ー、ミニゲームするからボールくれ。」


「あ、喜成。はいよー。」


 物置からボールを取り出して投げて渡すと、喜成は「サンキュ」と言って走って行った。


「ゲーム始まるんだったら得点板出さなきゃね、ってうわっ! 何!?」


 またもガシッと肩を掴まれて、心臓が飛び出るかと思った。


「今の人誰!?」


「え? 今のは和田喜成。同じ一年だよ。」


「和田、喜成…。あんたと和田くんの関係は!?」


「えっと、幼馴染だけど…。」


「和田君に彼女いる!?」


「ええ? いないと思うよ。」


 好きな子はいるらしいけど。

 というかなんだ。このパターンはあれか、モテモテ喜成くんか。


「そっかそっか~。決めた! あたしサッカー部のマネージャーするわ!」


「本当!? やったー!」


 喜成を餌にして、マネージャーげっとしました!!

 不純な理由でも良いです! マネージャー増員は必須です!



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