表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とらいあんぐる おあ へきさごん  作者: 高槻
めまぐるしい はる
7/51

6.これはふらぐです

 放課後になってすぐに更衣室へかけこみ、ジャージに着替える。

 ふう、まだ人が少ない時じゃないと着替えられない俺は小心者。


 荷物を持って第二グラウンドへ向かうと、ちょうど数メートル先に見慣れた後頭部があったので、小走りで追いかけて体当たりする。


「うおっ! …って樹か。驚かせんなよ…。」


「えへへ、ごめん。」


 呆れながらも、その顔は微笑んでいるので、俺も笑って謝った。ちょっと喜成と距離ができそうな気がしてたけど、やっぱり杞憂だったみたい。


「あれ、樹どうしてここにいるんだ? 吹奏楽部だろ? 俺になんか用事?」


「楽器がお高いから吹奏楽部はやめた! サッカー部のマネージャー、私にもできるかなって思ってさ。喜成もいるし。」


「えっ。そりゃ、俺は嬉しいが。マネージャーなら女バスも男バスもあっただろ?」


「あはは、琴美と同じこと言ってる! サッカー部にマネージャー希望者が殺到してたら、女バスに行くよ。」




 第二グラウンドに着くと、生徒がまばらにいた。ステージに上がっていた人もいるから、先輩方だろう。その一人に近づいて、喜成が声を掛ける。


「ちわす。見学にきました。」


「おー、一年か! 荷物は適当にその辺置いて。俺、小国海斗。部長やってる三年ね。」


「和田喜成です。中学で三年間やってました。宜しくお願いします。」


「そっかそっか。今日は他に来るであろう一年も混ぜて、軽くランニングとミニゲームすっから。気軽にしてて大丈夫だぞ~。って、あれ、そっちの子は…?」


 にこやかに喜成に話しかけていた小国先輩は、喜成の陰に隠れていた俺に気付いて視線を投げかけてきた。あ、自己紹介しなきゃ。


「遠峯樹と申します! えっと、マネージャー志望で来ました。」


「マネー、ジャー…だと?」


 先輩、そこで区切ると違う単語になってしまいます。


「おおおおお!! お前ら! 女子だ! 女子が来たぞおおおおおっ!!!」


「「なにいいいいいいいっっっ!!?」」


 大声に心臓が止まるかと思った直後、小国先輩の言葉に反応して、遊んでいた先輩方が終結した。何これ。ちょっと怖い。


「ほんとだ、ほんとに女の子がいる!」


「君、ここが何部だかわかってる? 間違ってない?」


「え…、サッカー部ですよね?」


「間違ってない! 奇跡だ!」


「ううううううちに、ママママママネージャーがッ」


「落ちつけ馬鹿者」


 え、なにこれ。ちょっとどころでなく怖い。どんだけマネージャーを待ち望んでいたの?

 そこであることに気付いた。女子の姿が見当たらない。


「あのー、マネージャーの先輩ってまだいらしてないんですか?」


「ああ…、来てないんじゃなくていないんだよ。」 


「えっ」


 どんよりとした表情で言われたことに、言葉もない。そりゃ、たしかに思いっきり募集するのも仕方なかったかもしれない。


「女子は、マネージャーするなら男バスに行くって言ってな…。うう…、今まで雑務も全て部員でやりくりしてたんだ…。」


 おお…、それは可哀想だ…。って、男バスってもしかして…。


(にっく)き健と正悟め! いつまでも奴らの天下と思うなよ!!」


 …やっぱり。兄ちゃん、怨まれてるよ。


「樹ちゃん! 是非とも我が部に入ってくれ! て言うか入るよね? 入って下さいお願いします!」


「あ、はい。不慣れですが宜しくお願いします。」


 小国先輩に祈る様に言われて、断る理由も無いので入部することにする。頭を下げたら拍手が起こった。


「かわいい!」


「女の子がいるだけで良いよ!」


 うっ、すみません…。可愛くもなければ、最近まで男でした。

 後からやってきた一年男子がきょとんとこっちを見ていて、少し恥ずかしかった。


 ■ ■ ■


 家に帰ると丁度夕飯が出来あがったところだったので、食卓に並べるのを手伝う。すぐに父さんと兄ちゃんが帰って来たので、なにかセンサーでもついているのではないかと疑ってしまう。



「わたし、サッカー部のマネージャーすることにした。」


「えっ」


 ご飯を食べながらそう宣言すると、兄ちゃんが持っていた茶碗をガチャンと置いて立ち上った。


「健、行儀悪いぞ。」


「なんでサッカー部!? 吹奏楽部は!? ていうか、マネやるならうち来いよ!」


 うん、父さんの注意をちゃんと聞こうね。


「吹部は楽器なりたいのになれるかわかんなかったから却下。男バスはマネやりたい子いっぱいいたんでしょ? 先輩が悔しんでたよ。」


「そこはほら、俺の権力で。」


「やめてよ…。それにサッカー部には喜成がいるしさ。」


「だったら心配ないわねぇ。喜成くんはしっかりしてるし。しっかり頑張んなさいよ。」


「うん!」


 母さんがにこにこと応援してくれたので、それに応えて頑張ろうと思う。

 ただ、他のマネージャーがいないのがちょっと心配かも…。

 もう一人くらい、来てくれないかなぁ…。



ものは試しに拍手設置しました。


ところで、この話のジャンルを「学園」にしているんですけど、「恋愛」に変えた方が良いのかしら。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ