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とらいあんぐる おあ へきさごん  作者: 高槻
めまぐるしい はる
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5.ぶいんはにのつぎらしいです

 とうとう、念願の高校に入学ですよ!

 ダークグレーのブレザーに、ネイビーと白のチェックのスカートと赤色のリボンは、ちょっと想定外だったけれど。男は上下同色で、赤色のネクタイ。俺もそっちを着るはずだったんだがな…。

 式典の日は、黒タイツか黒ストッキングを履かなきゃいけないそうで、今日も黒タイツ。

 うまく穿けたよ!


「いっちゃん可愛いー!」


「えっと…、ありがと。琴美もめちゃくちゃ可愛いよ。」


 うむ。さすが美少女、可愛く着こなしておる。


「ありがと! で、さ。スカートを少しだけ短く…」


「しないから。」




 なんと琴美とクラスが一緒でした。しかも遠峯と夏川なので出席番号が前後。つまり席も前後。

 なんという幸運! 一人じゃないのは大変心強い!

 …喜成と離れちゃったのは少し寂しいんだけど。



 ■ ■ ■



 入学式の次の日、俺達新入生は体育館に集められていた。部活動の紹介を行うらしい。

 クラスごとに整列して、ステージ上で発表するのを眺める。体育座りしてるんだけど、スカートの中が見えない様に注意しなきゃならない。何も気にせず座ろうとして、琴美に叩かれた。

 紹介は、最初は運動部、そしてその後に文化部のようだ。

 俺は中学時代は吹奏楽部だったから、ちょっとそれが気になる。琴美は説明を聞く前から、バスケ一筋のようだが。


 順調に説明が進んでいく。米俵のような的を持ってきて射た弓道部や、ラクロス部など、目新しいものにはちょっと興味がある。でも、俺運動神経悪いしな…。肺活量になら自信がありますが。

 ぼんやりそんなことを思っていたら、サッカー部の説明になった。

 サッカーか。喜成は高校でもサッカーするって言ってたなあ…。


「サッカー部です! 第二グラウンドで練習中! 部室は第二グラウンド脇のプレハブです! 興味があったら来てください! それから女子!! マネージャー大募集してますんで来てね!! むしろ男子より来てほしい!!」


 笑顔でそんなこと言うもんだから吃驚した。でも、そこはかとなく必死な様子が窺える…。


「え~、では次にバスケットボール部の説明に移ります。」


 引きつった笑顔でアナウンスするのは、多分放送部の人だろう。うん。俺も引きつると思うよ。だって部員よりもマネージャー募集するって、聞いたこと無い。


 バスケットボール部、と聞いて後ろに座っている琴美のテンションが上がったのが、空気で伝わった。すぐにバシバシ背中を叩かれたし。痛いよ、そんな叩かなくても、俺もちゃんと見てるって。

 ステージに上がったのは、男女六人。男バスも女バスも、一緒に説明してしまうらしい。

 あ、兄ちゃんだ。それに正悟先輩もいる。

 体育館中がさわさわしだした。ついでに小さく黄色い声も聞こえた。

 ああ…、やっぱり人気なんだ…。


 兄ちゃんとその幼馴染の正悟先輩は、小学校のクラブ時代からバスケを始めて今に至る。二人とも強いしコンビネーションが抜群なので、県内のバスケ界隈では有名な人達だった。

 ついでに容姿が良い。女性達にはこちらの方が重要なのかもしれない。

 兄ちゃんは弟の俺から見ても格好良いのだ。父さんに似て切れ長の目は印象強いし、身長だってある。…我ながら、似ていない兄弟であった。だって兄ちゃんモテるけど、俺そんなことないし? 平凡だし? …な、泣いてなんかないんだからなっ!

 それは置いといて、正悟先輩も格好良い。穏やかな瞳と夏の日差しのような笑顔! 試合中は鋭い瞳になるので、ギャップに落ちた女子も少なくはあるまい。


 というわけで、体育館がさわさわするのも無理からぬことであった。



 ■ ■ ■



「いっちゃんはやっぱり吹奏楽部にするの?」


 紹介が終わって教室へ戻る道すがら、琴美が訪ねてきた。


「うーん、実はサッカー部に行ってみようと思って。」


「えっ!? マネージャーってこと!? なんで!?」


 そこまで驚くことだろうか。


「えっとね、楽器は自前って言ってたでしょ? 楽器はお高いから、止めておくよ。」


 そうなのだ。うちの高校は人数が多い。そうなると、一定の人気を誇る吹奏楽部も大所帯となる。一定額の部費で全員分の楽器など賄えないのは当然のこと。だから楽器は自前、なのだ。

 それに人数が多いということは、全体のバランスをとるために、希望する楽器になれない場合が多分にある。例えば、サックスの人数多すぎるからクラリネットやってくれないかな、というように。

 中学で三年間トロンボーンを吹いてきた身としては、少なからぬ愛着がある。他の楽器も愛せるだろうが、やっぱりトロンボーンが好きだ。

 第一、なれようがなれまいが楽器はお安くない。俺のお小遣いじゃ買えないし。


「お高いって、どれくらい?」


「まあ、十万はざらかな?」


「じゅっ!?」


 驚くよねー。でも、払うだけの価値はあるくらい魅力的なものなんだよ、楽器ってのは。


「…吹奏楽を選ばないのはわかった。でもなんでサッカーなの? 女バスなら私がいるし、男バスなら健先輩いるじゃん。おいでよー。」


「うーん、サッカーを選んだのは喜成がいるからかな。琴美とは教室で会えるけど、喜成とはそういかないし。それに女バスは、女の子ばっかりでまだ居心地悪いし…。兄ちゃんと一緒は論外。」


 だってあの人、人気なんですよ。一年生であのさわさわ加減だったら、先輩方がどうなるかわかったもんじゃないですよ。


「…論外なんて言ったら、健先輩泣いちゃうよ~? でもわかった。サッカー部見学して駄目そうだったら女バスに来てね!」


「わかった。マネージャー候補で溢れるようならそっちに行くよ。」


 そう言ったら、「絶対だよ!」と笑顔で念を押された。やっぱり可愛いな!




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