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とらいあんぐる おあ へきさごん  作者: 高槻
にぎにぎしい あき
40/51

30.こわいものいっぱい

 ナンパされてたら、恐怖の大王が降臨した。


「ッ!?」


 訂正、正悟先輩と兄ちゃんだ。けれどその表情は今まで見たことがないくらい怖くて、思わず喜成のシャツをぎゅっと握ってしまった。ああ、シワになっちゃったらごめんね!


「もう一度聞いてあげるけど、うちの可愛い可愛い可愛い妹に、なにか?」

「えっと、その……」


 目が据わってらっしゃる、お兄様。その気迫にナンパ男も気圧されたのか、じり、と少し後退した。

 更に言えば、この二人は人気者だから周りにはいつものごとく女の子が集まっている。その子たちがナンパ男を兄ちゃんたちの敵と見なしたのだろう、すごーく冷たい視線が四方八方から向けられていて、さっきまでのでかい態度はどこへやら、タジタジだ。終いには顔を合わせるとそそくさとその場から逃げ去ってしまった。


「笹木、奴らが学校から出るまで見張ってろ」

「りょうかーい」


 いつものごとく、ひょいっと現れた笹木先輩は、なにやら端末をいじっている。部下の人たちですねわかります……。


「樹ー、無事か?」

「正悟先輩、ありがとうございます。琴美と喜成にも助けてもらったから、私は全然大丈夫」


 です、と言おうとして兄ちゃんに抱きつかれた。


「はあああ、樹が無事で良かったああ! ごめんなあ、もっと早くに来てればぐほッ!!」


 どてっ腹に右ストレート☆

 崩れ落ちる兄ちゃんを確認して、喜成と琴美を振り返る。


「二人ともありがとう~! ごめんね、私も一人で対処できるようになるね! 今度は琴美を守るからね!」

「いいのいいの! ああいうのは慣れてるし、いっちゃんを守れるならなんだってしちゃうよ!」

「結局、助けたのは先輩たちだしな」


 うう、謙虚な奴らめ……。思い返せば、小さい頃から二人に助けられてばかりだ。どうしたら私もうまく立ち回れるようになるだろうか。ナンパなんて、琴美と違って経験ないしな……。


「ひどいよ、樹……」


 のろのろと立ち上がって私の肩に縋り付いてきた兄ちゃんに吃驚する。


「わっ、兄ちゃんもう回復したの」

「ひどい、ひどすぎる!」

「冗談だよ……。兄ちゃんも、ありがとね」

「! い、いつきッ! ぐふっ」


 またもや抱きついてきたので、今度は手刀をお見舞いしたよ☆




 結局その後、私たちは五人で校内を回ることになった。喜成の店番は午後一で、兄ちゃんたちは屋台にいるとファンの人だかりで商売にならないからと追い出されたそうだ。宣伝を言付かったようで、背中には広告の紙がテープで貼られていた。ちょっと面白い。


「ゲーム面白そうじゃん」


 正悟先輩の一声で、私たちは一年教室へと向かう。一年教室がある階には特別教室を合わせて六つの教室があり、教室棟で唯一一般来校者に公開されている部分だ。何があるのかなー、とのぞきながら歩いていくと、一番端の教室の前に小国先輩がいた。


「あ、小国先輩」

「いっ、樹ちゃん!?」


 どうやら先輩は受付らしく、あと二人の生徒と教室前に出してある椅子に座っていた。目の前の机の上には「入場料百円」とおどろおどろしい赤い文字で書いてある。これはもしや、と締め切ってある教室の戸を見ると「お化け屋敷」と見るも素晴らしい達筆で書かれていた。


「ひぃっ」


 ちょっとびびって琴美に縋り付いたのは是非とも内緒にしていただきたい。


「おー、海斗のクラスはお化け屋敷だったっけ」

「連日かなり熱心に準備をしていたな」


 そんな興味津々に食いつかないでよ……。


「おう、春からみんなで構想を練ってた力作だ」


 腕を組んで胸を張る小国先輩。そして教室の中から聞こえてくる絹を裂くような悲鳴……。怖い!


「あ、あの、樹ちゃん。良かったら俺とお化け屋敷に―――」

「なんだってぇ!? 海斗入場料いらないって? 太っ腹だなあ!」

「よし、俺と正悟と海斗の三人で行こう」

「えっ、ちょっ、待っ、」


 怖くて小国先輩が何を言っていたかよくわからなかったが、どうやら兄ちゃんたち三人でお化け屋敷に入るらしい。兄ちゃんと正悟先輩は、小国先輩の腕を引っ張って真っ暗なお化け屋敷の中へと消えていった。入場料を払わなくて本当にいいのかな? 後でちゃんと払うように言っておこう。


「どうしよう、兄ちゃんたち待つ?」

「うーん、私ちょっと先輩がバンドするっていうから、女バスのみんなでそれ見に行くんだ。よしくんと二人でお化け屋敷に入っちゃいなよ」

「えっ」


 喜成と行動するのは良い。でもなぜお化け屋敷なんだ。


「ほら、よしくんも怖いの結構好きじゃない? こういうのは一人で入ってもつまんないし、さっきのお礼と思って一緒に入ってやりなよ」


 こそっと耳打ちされた言葉に、うっと詰まる。確かに、なにげに喜成の目が好奇心に光っているのは気づいていた。一緒にいるのに一人で送り出すのは忍びないしな……。


「じゃあよしくん、今日だけだからね!」


 私が悩んでいる間に、琴美は喜成にもなにか告げると、手を振って体育館へと走って行ってしまった。今日だけって、何が?




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